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ドリームブレーカーとヤギどらごん  作者: ヤギどらごん応援隊員
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64話 ウミナミトシヤとヤギどらごん

よろしくお願いいたします。

無理な登山を助長する意図はありません。



 九死に一生を得た話。


 大学3年の時、10月のおわりに山に登った。

もともと登山目的ではなく、ゼミの合宿発表会があって、その会の解散後に仲良い4人で近くの山に弾丸登山したのだ。


発表会が終了して浮かれていた。遠方の合宿というところも判断能力が落ちていた要因だったかもしれない。


 その日は、昼から登山していたが天候が崩れて雪が降り始めた。雪化粧されていく木々がとても綺麗で4人ともテンションが上がっていた。まったくもって僕たちは愚かである。


強くなる降雪。

知識も登山用具もない大学生が積雪によってルートを見失った。下ることはできなかった。登った道をそのまま最短で降りられる自信もなければ、道中に休憩小屋を見ていなかった。僕たちは登って、登山者に合流するもしくは休憩する小屋を見つけなければならなかった。


 寒さに体力が奪われていく。

進む歩幅は小さくなっていく。4人は一匹の芋虫のようにのろのろと慎重に暗闇を進んだ。誰も口にはしなかったが「死」という言葉は全員の頭によぎっていただろうなと思う。


体の芯まで冷え切った時に

一番前を歩くサトシが叫んだ。灯りを見つけたんだ。「小屋がある」って。


 僕らは中に入って、暗い小屋を探索した。簡素な造りで何もなかった。外に燃える松明が地面に刺さっているのに、毛布も、予備の燃す物も小屋の中には何もない。もちろん食料も電気もない。


小屋の中で風は防げるとはいえ、

雪が止むまで起き続け、朝になったら下山しなければ命がないことはわかっていた。


小屋の四隅に4人それぞれが座って、時計回りに隅から隅へ移動して肩をタッチしていく。タッチされた人がまた時計回りに移動して隅にいる人の肩をタッチする。これを繰り返して眠らないようにする。


サトシから始める。

サトシ、ジュン、コウスケ、僕の順で回っていく。

それほど早いペースでもなく、腰をおろして少し息をついて、肩をタッチされ、また自分が動く番。これなら眠らずに済む。


繰り返すうちに体が温まってきて皆は元気を取り戻しつつあった。


皆、下山したら何を食べたいかなんて話しながら四隅を移動していった。


気付いたのはたまたまだった。僕の先にいるサトシが静かだった。こういう時こそよく喋るような奴だったからタッチすると同時に、僕はつい言葉にした。

「サトシ、死ぬかもってビビってるの?」


「あ、ビビってるわけないじゃん」

その声は僕の目の前からではなく、1つ先の隅から聞こえた。気づいてしまった。

そうだ、これをやるには常に四隅にいる人が必要、それに追加して動く人がいないとできない。これは5人いないとできない。


僕ら4人の他に、この小屋には誰かがいる。


扉が近かったのもあり僕は外へ出て、燃え盛る松明を手にして小屋に戻る。

小屋の中が明るくなり5人目の正体がわかった。

僕とサトシの間にいたのは「ヤギどらごん」だった。


えーっと、その後は、、、

松明を室内に入れたことを僕は怒られて外に戻して、僕とサトシだけヤギどらごんに触れていたことがズルいってなって、


4人と一匹が部屋の真ん中で押しくら饅頭状態になる。真っ暗で全然見えなかったけど皆の顔に笑顔が戻ったのはわかった。



 窓から光が射し込む。

ヤギどらごんの顔は初めて見たんだけど、それはしかめっ面だった。

急に外へ出てヤギどらごんは松明を持って部屋の中に戻って来た。


「触りすぎたよ、ごめん」

「ごめんね、ありがとう」

「またどこかで会えますように」

「ありがとう、じゃあねヤギどらごん」


4人の言葉には反応せず、ヤギどらごんの額には血管らしきものがありありと浮かんでいた。


外は快晴。

元気もある。

体力は若さでなんとかなる。


僕らはヤギどらごんに感謝の言葉を伝え、逃げるように下山した。



皆さん、必ず準備をして山に登りましょう。

ヤギどらごんのおかげで僕たちは今生きているんだ。




ありがとうございました。

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