46話 タヨシカルナギとヤギどらごん
よろしくお願いします。
社会人生活は非情である。
日々精神を擦り減らして僕たちは生きていく。趣味からは手を離してしまい、どうして熱中していたか、何が好きだったか今では思い出せない。
今日は友達と朝から映画を見る約束をした。始発から終電まで仕事をしているのだから、映画館で数時間座り続けるなんて社会人には楽勝なのだ。
暴飲暴食のように、体に過剰摂取することで生きている実感を得る。社会人とはそういう生き物である。
待ち合わせの映画館の前には、早朝でありながら同じように疲れている友がいる。軽く挨拶を交わし、まとめて当日チケットを購入する。稼いだ一万円は映画鑑賞5回へと変わる。観るものはその瞬間の気分で即決する。休日の決断で脳を疲労させたくないのだ。
8:55
【シルドラファミリー 友達は宇宙から!?】
子どもから大人まで愛される人気のマスコット人形がアニメ映画館化。声を当てていたのが、ミュージシャンばかりであった。客層もファミリー感なくパンクロックな客層だった。朝早くからご苦労さまです。
☆3つ
10:45
【謎の誕生・醜悪祭】
国民的ホラーアニメの劇場版。世代が違う&予習はしない派なので、予想できない話の暗さと完成度の高さに圧倒された。日本の宝と友は発言していた。後日談だが僕は追加で3回見た。
☆4つ
13:20〜14:00
昼食はフードコートで済ませる。
僕は醤油ラーメン、友達はフレッシュハンバーガーセット。
☆3つ
14:10
【大怪獣、戦後に現れた災害】
4DX、さらに映像美による迫力の怪獣劇。人も怪獣も攻撃を喰らう度に席が揺れて風が顔にかかる。人目線か怪獣目線かどちらの気分で見ればいいかわからないくらい席を揺らされた。しかし僕は寝た。ラスト30分は起きていたけれど。そうです、社会人たるもの、どんな環境でも寝られないと厳しい世界は生き残れないのです。
☆3つ
16:40
【百獣レストラン】
動物が働くレストラン。実写映画なのがとても良かった。CGも安っぽくなく見ていて飽きない。ウェイトレスのカモシカが肉食の客に食べられそうになったり、上司から怒られたり、クレーム対応するところなどが、心に効いた。なぜこんなに苦しいのか。聞いたことのある文言は記憶を呼び覚まし心臓の鼓動を早くする。とてもハラハラする映画だった。
☆2つ
20:20
【ディア.チーバ】
千葉県の魅力についてご当地キャラクターが紹介するドキュメンタリー映画。本日最後の上映には僕と友達しか観客がいなかった。席を見回すと不思議なことに気づく。人はいないのだが、席は埋まっている。ぬいぐるみが置いてある。
ヤギどらごんぬいぐるみが全席に置いてある。当然僕の右隣、友達の左隣にもいる。120全席にヤギどらごんがいるようだ。僕たちは朝から館内でハイボールを飲み続けていた。酔いが回っている。ヤギどらごんに囲まれている。見えている光景は本物かわからない。映画と館内のヤギどらごんを見ながら僕たちは笑っていたと思う。
この空間だけを残して世界全部が壊れてほしいと僕は思った。
☆5つ
ありがとうございました。
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