33話 サガキヨトとヤギどらごん
よろしくお願いします。本日コミティア147にサークル参加します。
地元に大きな公園がある。
古墳の跡地ということで多少なり有名な場所。地元民としては納涼祭などのイベントに使われる大きな広場というくらいの認識。
その公園は竹林に繋がっていて、中学生だった僕たちは好奇心に任せて公園のフェンスを越えて竹林の中へ進んでいった。
人が1人通れる幅の獣道を見つけ、それを辿るように列になって僕たちは進んだ。蜘蛛の巣に絡まったり、伸び始めの笹が体を撫でる。半袖ワイシャツだった僕は鋭利な葉で腕に切り傷ができる。探検に危険は付きものである。先にある風景を楽しみに、怪我に気をつけながら道を進んだ。「足元気をつけろよ」「そこ虫いるぞ」なんて会話をしながら探検気分で先へ進んでいく。
10分ほど歩いた後、開けた場所に出る。そこは円形に開けた場所。半径4メートルはないくらいの広さだったと思う。4人はそこで同じものを見た。光が指す開けた場所の中心に赤く動くものを見た。ヤギどらごんが6、7体で円になっていた。顔を見合わせる形になっていて、僕たちから見えるのはパタパタと揺れる赤色の羽と後ろ姿だった。
揺れる羽に合わせて竹が大きく揺れる。竹と竹がぶつかる音が響く。第六感か、これ以上近づいてはいけないと思った。気づかれてはいけない。皆も何か危険を察知したのか、誰が言うでもなく、来た道へ戻ろうと物音立てないように動く。その瞬間誰かのスマホの通知音が鳴る。
「「「「うわぁーーーー」」」」全員一斉に走り出す。体内の血液が一気に沸騰するような感覚。
後ろは振り向けない。
竹が強く揺れていて、大きく不快な音が頭に響く。手足に痛みが走る。切り傷なんて気にしてられない。後ろから感じる圧力から早く逃げたかった。
そこからの記憶は曖昧だが、無事に全員家に帰れた。この出来事以降、仲良かった4人はあまり遊ばなくなった。どことなく気まずいうちに、夏が終わり、受験勉強が忙しくなり、関係も希薄になった。
僕はというと、某有名ドーナツ店の看板商品が食べられなくなった。目にも入れたくない。ヤギどらごんは今でも好きなんだけどなぁ。
僕たちが竹林で見たあれは一体なんだったんだろう。ヤギどらごんは何を囲んで何をしていたのだろうか。
ありがとうございました。