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31話 ナツオミツヤとヤギどらごん
よろしくお願いします。
木曜日の午後10時30分。
塾からの帰り道の時間。
田舎町の道路は車1台も通らない。
だから車道の中央線上を僕は自転車で走る。帰り道のうち4kmは中央線を走るのだから、まったくクソガキ中学生である。
下りの坂道では中央線で両手を大きく広げて、手放し運転。寝静まる田舎の夜に、冷たい風を切る感覚が最高だ。
受験勉強に力を入れないといけない時期、この爽快感を味わえるなら夜の塾も何のそのである。
ママチャリのかごには、通学バッグとヤギどらごん。ヤギどらごんも刺激がほしいのか、気がつくとよく自転車かごの中にいる。
受験当日までのあと数ヶ月、
僕はヤギどらごんと笑いながらこの道を通るのだろう。
ベルを鳴らすとよく響く。
まったく冬の夜は静かなものだ。
☆☆☆
ナツオミツヤは志望校へ無事合格した。首席の成績での合格だった。
ありがとうございました。