30話 サナダタツロウとヤギどらごん?
よろしくお願いします。
骨を折られた両腕は、頭の後ろで強く結ばれている。
大腿骨は折れていないと思うが、それより下はわからない。膝から下は感覚がない。腹這いの状態で、身体は少しも動かせない。神様はいねぇんだな、と恨み節を思考する。
気味の悪い女が俺を仰向けにして、恍惚とした表情で体に浮く肋骨を撫でる。そしてこの女は肋骨の上の薄い皮膚を舐める。女の舌の感触と、唾液が肌をつたう嫌な感覚。
服も通信機器も全て処分された。俺の体が排泄物でグチャグチャになっても女は構わないようだった。
室内にある檻の中。
女の手にはアイスピックがあり、女は感情的になると男の体にそれを刺す。男の口はテープで塞がれており、悲鳴も出せない。意識を手離したら楽になるのかを考え、その後はいつも、どう復讐しようか怒りで意識を保つことにする。監禁されてから食事はとっていない。脱水症状に近い状態なのは自分でも理解していた。日ごとに、体の傷が増えていく。
自分の排泄のペース、女が現れるタイミング、女の発する「今日は」という言葉から監禁されて4日は経過していると推測。
体力の限界がすぐ側に来ていることを悟る。
抵抗する力がまるでないようにうずくまる。女のアイスピックによる癇癪に耐えて、女が顔を近づけたところで頭突きによる反撃を実行。男はなりふり構わず暴れた。男は女を頭突きで殺して、安堵と同時に意識を失った。
目が覚めると俺は病院にいた。周りには大勢の人がいた。周りの誰もが知らない人間だった。何日意識を失っていたかわからないが体がすごく軽かった。手足は切断されずについていることを確認。なぜか腕が異常に細く見える。まるで女のような身体つき。……俺は叫んだ。それは甲高い金切り声だった。
☆☆☆
意識を再度失って目が覚めると、見慣れた自室の天井が視界に映る。ぷかぷかと妖精が部屋に浮いている。その妖精は羽も足も黒色だった。悪夢には十分過ぎる夢ほどのだった。
ありがとうございました。