23話 ヤマダコウヤとヤギどらごん
よろしくお願いします。
ヤマダコウヤは懐かしい気分になった。
小学生の時に通っていた水泳スクール以来、15年ぶりの室内プールだった。体に伝わるのは生暖かい水温。ダイエットのために入会したプール付きジムであり、今日が利用初日だった。
ヤマダコウヤはゴーグルをかけて集中する。
まずは平泳ぎ200メートルで体を慣らす。
次はクロールで300メートル。
速さではなく、リラックスして長く泳ぐことを目標にした。
一通り泳いだあとは息を整えるため、レーンを移動して歩行した。
気持ちが良かった。周りの人たちも黙々と泳いでいるのが好印象であり、それはジム入会の決め手でもあった。ヤマダコウヤは歩行しつつ息を整える。
すると不意にプールサイドに目がついた。
プールサイドには妖精がいた。
聞いたことのある見た目とそれは違った。
それは水泳キャップとゴーグルをつけ、水泳パンツも履いている。1匹ではなく、5匹いた。
妖精はプールサイドを歩いてぐるぐる周っていた。
顔は無表情。真剣な表情と言っていいのかもしれない。
人間が真剣に泳いでいるからヤギどらごんが真剣なのか。
ヤギどらごんが真剣にプールサイドを歩いているから人間が真剣なのか。
考えようとしたところでやめた。
息が整ったことを確認し、ヤマダコウヤは再度真剣に泳ぐことにした。
ありがとうございました。