2話 ヤマシマサヤとヤギどらごん
よろしくお願いします
気が付いたのはたまたまだった。
休み時間のたびに女子で固まって楽しそうに会話するヤマシマサヤが、その日は誰とも話さず、一人で机に向かっていた。
ノートに黙々と何かを書いている。
テストが近い訳でもないし、課題がある訳でもない。
塾に行っているのだとしたら、学校とは別に課題があるのかもしれない。
何となく、彼女を見ていた。時より女子が寄って行っては、申し訳無さそうに手が離せないことをその度に伝えているようだった。
教室移動のときに友達と歩きながら、ちらっと彼女の机を見た。彼女は絵を描いていた。おいしそうなアイスの絵、色を塗る余白を残したであろうそれはシャープペンシルで描かれていた。トレーディングカードのイラストを参考にしているのか、食べ物が描かれたカードが何枚も彼女の机に広がっていた。
俺は帰りにコンビニに寄り店頭にあるアイスをまじまじと見た。それは友達から気持ち悪がられるくらいに。彼女は美術部に所属している。放課後もあの絵を完成させようとしているのだろうか。
週刊少年誌をレジへ運び、大きなPOPがあることに気付いた。それは彼女が持っていたトレーディングカードの宣伝だった。有名アイスチェーン店とコラボして、絵柄にアイスが多く採用されているらしい。
俺はその店に残っていた5パックを買って外へ出た。
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