16話 ヤキシタヒロとヤギどらごん
よろしくお願いいたします。
トイレパニック。
僕がそう名付けた事件について語ろうと思う。
僕は一人暮らしのちょっぴり寂しいサラリーマン。自宅アパートではいつも全裸で過ごしている。誰も僕のアパートになんて来ないからね。そんな26歳の男さ。
とても冷えていた冬の朝のこと。いつものように全裸でトイレに入ったんだ。用を足して、トイレットペーパーを手にしようと腰を捻ったとき、体に衝撃が走った。
体に電撃が走るという比喩をはじめて理解した。
本当に体が硬直した。
腰が終わり、僕は絶望した。もう一生ジャンプはできないとすぐ直感した。少し体を動かすだけで腰がピシピシと痛む。便座から立ち上がれる気がまったくしなかった。
それから神様に祈ったよ。
腰を治してください。
細心の注意で腰を安静にして、トイレの中で何度も祈った。
そのうち布団の中のスマホのアラームが鳴り出したりしてさ。アラームを消しには行けなかったから、アパートの住人には本当に申し訳なかった。
僕のスマホのアラームは6時48分に鳴るから、出社を考えると、トイレにいられるのは大体残り20分。
再度神様にお祈りをした時、トントンと、トイレのドアをノックされた。恐怖の感情はなかった。実際、腰がピシピシ言うほど怖いものはないからね。
ドアを開けたら、ヤギどらごんさんがいたんだ。見た目は聞いていた通りの、まん丸の目をした最高にキュートな妖精だった。大きさは40〜50センチほどだったかな。
ヤギどらごんさんは僕を見るやいなや、両手を顔の前で合わせて僕に祈ってくれたんだ。
そんな、僕を思ってくれるヤギどらごんさんを見たら、少しばかり腰の痛みが和らいだ。痛みに耐えながら僕は気合でケツを拭いて、そして気合で便座からゆっくり立ち上がることができた。
遅刻せずになんとか出社もできた。
その日から僕は、自宅トイレに入るとドアがノックされ、ドアを開けるとヤギどらごんさんがいる。
ヤギどらごんさんは僕のトイレのたびに現れ、祈ってくれる。そんな日々を送った。
ヤギどらごんさんのお祈りの姿は、僕に元気と心身の癒やしをくれた。
そんな僕も腰が終わった日から4日で自然完治した。本当に良かった。ヤギどらごんさんありがとう。
みんな腰には気をつけろ!
みんな、ヤキどらごんさんぬいぐるみは5個は買え(^o^)
トイレパニック【終】
ありがとうございました。