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15話 カワハタミサとヤギどらごん
よろしくお願いいたします。
他人から幸福を奪うことで私は幸福でいられた。
なんの理屈にもなっていないのはわかる。
けどそれで上手くやっていたんだよ。
私は確かに幸福だった。
多数派が常に正しいとは限らない。
今世界に認められる価値なんて永遠に続く保証はない。
カワハタミサは自分の行為に特別に意味を持たせたかった。空っぽだった自分が興味を持てた行為。誰にも悟られず、幸せそうな人間に陰湿な嫌がらせをすることは、確かに私に幸福を享受した。
下り途中に踏み外した階段。
右足は上手く踏み込めず、止まれなかった。さらに前傾姿勢となった目の前に階段が広がる。迫り来る角はまるで凶刃。死後の世界があるなら私は地獄行きなんだろうな。
私の意識はそこで途切れた。
少女は病院で目を覚ます。
自身の体を見て、これからどう生きていくのか。
それは少女にしかわからない。
☆☆☆
現場に居合わせた男子生徒の証言
「その女子生徒は背中に羽根が生えたようにゆっくりと綺麗に階段下に着地していました」
ありがとうございました。