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12話 カトウヒサタとヤギどらごん
よろしくお願いいたします。
部屋の隅に置いてあるヤギどらごんぬいぐるみが俺を見ている。誰から貰ったものかもう覚えていない。
休日はまとめて睡眠を取ることだけを喜びとしていた。
喜びではなく生存本能かもしれないけど。
カトウヒサタは16時間寝たあと、新鮮な空気を吸うために外へ出た。
夕暮れ空が「お前はほとんど死んだようなもんだな」って言っている。俺はそろそろ限界かもしれない。
部屋に戻って食べ物を探す。カップラーメンどこに置いたっけ。
部屋を掃除してまで探す気は起こらず、食事はすぐに諦めた。
頭が働けばどこに置いたかなんてすぐに思い出せるのに。
カトウヒサタは布団の上に横になった。
「あっ」小さな声が出た。
ヤギどらごんぬいぐるみなんて誰からも貰っていない。自分で買ってもいない。ずっと前からいて、ジッと目が合うそれは妖精だったのだ。いつからそこにいたのか。妖精ならウインクくらいしてくれればいいのに。
何も考えはなかったがカトウヒサタは、ヤギどらごんを抱えてしばらく外に出ることにした。
ありがとうございました。