80話 タタラキヨシとヤギどらごん
よろしくお願いいたします
少し前の話です。
ある噂が流行りました。ヤギどらごんぬいぐるみを屋外に隠すと次の日になくなってしまうというもの。SNSには世界中で検証された何百もの動画があり、この事象について証明されたようなものだった。カメラで撮影している間はヤギどらごんはなくならず、カメラ等を使わず1日経過すると綺麗になくなるというもの。ヤギどらごんぬいぐるみは金属反応しないし、特別な加工をしたヤギどらごんぬいぐるみがなくなることは決してなかった。
僕は好奇心に従い、金曜日の放課後にヤギどらごんぬいぐるみを隠した。近所の雑木林にぬいぐるみをぶら下げる。獣道から30メートルくらい逸れた離れたところ。意識すれば目に映るところにぬいぐるみを吊るすことにした。
土曜日は朝早くに目が覚めた。
午前5時前。何もすることがなく、僕は寝間着のまま雑木林に行ってぬいぐるみを確認することにした。隠してから24時間経っていなかったが、噂通りぬいぐるみは消えていた。
帰り道にふと空を見上げると、ヤギどらごんが赤い羽をパタパタさせて飛び、小さな腕にぬいぐるみを抱いていた。
初めて妖精を見た。それよりどうしようもない不安感に襲われて僕は思わず口にした。
「ごめんなさい。ぬいぐるみ、やっぱり返してほしい」
ヤギどらごんは旋回して僕の頭上でぬいぐるみから手を離した。ゆっくり軽く落下するぬいぐるみは僕の手のひらに収まる。
次に空を見たときは妖精はもういなかった。
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