10話 ウメハラヨウジとヤギどらごん
よろしくお願いいたします。
◯年◯月◯日 正午
御社施設を爆破します。本社と支店と工場の全てです。敷地の半径100メートルに人を近づかせないようにしてください。
この文面が上記該当の会社と、控えがテレビ局に送られた。
その会社はぬいぐるみを取り扱う専門商社。しかし裏の顔は有名キャラクターの海賊版グッズをECサイトで販売している元締だった。これは告発を兼ねての爆破予告。
会社から出た発表は、爆破される前日より工場を止め、従業員は全員自宅待機。その発表をした翌日、会社の代表と役員、幹部含む35名が行方不明となった。責任逃れの逃亡なのだろうか。爆破予告当日を迎えるまでにこの件は何度もニュースに取り上げられた。
これは本当に爆破される。
ジャーナリストのウメハラヨウジの長年の勘がそう言っていた。
現代日本でどんな光景を見ることができるのか緊張した。
爆破予告の当日、件の本社の近くで張っていたが、
12時08分、ウメハラヨウジは早々にその場を後にした。
吐き気が止まらなかった。
他の施設の状況なんて調べるまでもない。地獄になっている。許してほしかった。自分は生きていたい。家族と一緒にいたい。涙が溢れて落ちていく。
◯年◯月◯日 正午
会社前のバリケードを壊し、人が雪崩のように施設に侵入していく。その後に響く炸裂音は何十発と数え切れない。
野次馬に紛れて周囲に大量の写真がバラ撒かれた。拾ったその写真には、血に染まった肉塊が映っていた。悲鳴が金切声が止まらない。現場はパニックを起こして最悪の状況。こんなところ来るんじゃなかったと俺は後悔した。身動きが取れないところに、自分の方へ誰かの手が伸びた。その手はジャケットの胸ポケットに何かを入れた。
パニックの人混みを抜けて、ウメハラヨウジは胸ポケットを確認する。
中には紙が1枚、そこには
「記事を書け。☓☓☓-☓☓☓☓-☓☓☓☓に電話しろ」
自分にこの記事を書けるわけがない。
爆破されるのを見ながら野次馬の半数はぬいぐるみを抱きかかえて笑っていた。
記事を書かないと自分は消される。
自分のことなんか全て調べがついてるに違いなかった。
数日後、ウメハラヨウジは死亡した。
自宅に届いた3個のぬいぐるみが爆発したのだった。
それは退職日当日のことだった。
☆☆☆
とある配信の広告
「ヤギどらごんはいつでもどこでも15センチぬいぐるみ3,000円での販売です」
ありがとうございました。