しっぽのある鉄塔
掲載日:2009/10/26
ひどく目立たない黄色のレンガ道を行くと
夏休みの少し手前に古い送電鉄塔が見える
陽炎虫が大発生した年の真夏のある日
一人の男の子がその鉄塔の下で感電死した
鉄塔からぶら下がっている電線に触れたんだ
鉄塔は人間が大好きで電線のしっぽを振ってしまう
会社の人が来て電線を切断しようしたけれど
近づくとギュランギャランしっぽを振るので
とっても危なくて無理な話だったよ
それどころか鉄塔がだんだん帯電してきたのさ
夜になると月もないのにぬもーっと光って
魔法のようにきれいだという噂が広まり
毎晩何百人もの人が集まるようになった
今度は酔っぱらいが感電して死んだんだ
半径50メートルが立ち入り禁止になり
送電がストップされることになった
取り壊して別の安全な鉄塔を作るんだって
送電鉄塔はだんだん光を弱めていった
見物しにくる人も少なくなっていった
会社の人は毎日帯電容量をはかりに来た
そのたびに鉄塔はしっぽを振ったけれど
それも日に日に弱々しくなっていった
台風が近づいていたある日とうとう
会社の人がいっぱい鉄塔の下にやってきた
ちょうど夏休みの最後の日だったな
電線を切断する準備がはじまると
そのとき少しだけきゅるるむと
しっぽが揺れたんだけどそれは
たぶん風のせい




