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箱船の咎人③
・・・三年が経った。
カミサキ・サテラの付き人は、多忙を極めたというか、雑に扱われたというか、とても苦しい三年間で有ったが。ボクはただの檻となったキャラバンの扱い方を覚え、色々な魔法を覚え、自由の身となった。サテラとの別れもまた雑多なものであったが、ボクの目の前にはまた、あの学徒の姿があった。どうやら今度は、一人では無いらしい。
{ウェスティリア魔術学院・大食堂}
「終わった……。」
「どうしよか………。」
「――終わりだよアルク。俺たちはもう終わりだ。諦めて一緒にパン屋でもやろう……。」
学徒は机の上にクシャクシャな地図を広げ、力無く突っ伏していた。図らずもあの日のように。
「――諦めるのか?」
ボクはタァンと軽やかに机の上へ飛び乗って、サテラから受け取った手紙を地図の上へ落とし、気高きこの髭を靡かせて。悠々と誇り高くそう言ってやった。学徒は目を見合わせて声を漏らす。
「………猫が、……喋った。」
それが僕らの、本当の旅の、始まりだった。




