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永遠の放浪者②


 一体どれほど潜れば良いのか。永遠に近い果てしない距離を下って来たような気がした。一体どれほど迷っただろうか、無限に来たる困難に挫けそうにもなった。しかし世界樹の木版は反応を強めるばかりで、その期待値は限りなく高かった。


『――フォーム・タイタンッ!!』


 エルノアがそう詠唱し、キャラバンが形作った拳を壁にぶつけて穴を開けた。


『――チッ……、フォーム・シーカー。』


……また崖か。


「まぁ、そうかっかするなよエルノア。」


 現在第17~18層。灼熱の大地を抜け、輝く鉱石の森へと迷い込んだ俺たちは、寛大な心の余裕というものを要求されていた。


「暗くて全く見えない。このまま放浪者ワンダラーとすれ違ったらどうする……。ここまでの努力が水の泡だ。」


「ずっとそんなトライ&エラーだったろ。何を今更。」


 俺は苛立ちを隠しきれないエルノアの後ろで、悠長にもキーマカレーを作っていた。


「エラーばかりではダメなんだッ。それでは何も前に進まない。……君の料理の腕前が上がるだけの旅など、なんら意味が無い。君がキャラバンでキッチンカーを始めるというのであれば、話は別だがね。」


「そうだな。お前はパスタしか作れないし。」


「――なんだッ……と。。。。。」


 エルノアは声を萎めながらそう言った。


「おいおい、間に受けんなって。」


 俺はスパイスを焦がさないように混ぜながらフォローするが、エルノアは言葉を失ったまま、突っ立っていた。


「ん、大丈夫か?もしかして怒らせた……?」


 そう言って振り向く、エルノアは呆然と外を眺めていた。


「……違うよ、ナナシ。これを見るんだ。」


 俺は火を止め、エルノアの後ろまで歩いていく。眼前の景色、そこに広がっていたのは、果てしない星空の美しさだった。


{第19層・地中の星空『星天境』}


 俺たちはその絶景を暫くの間、眺めていた。語り合ったのは旅の良さだろうか、この層の仕組みについてだろうか、煌めく星の配置も、明度も地上では見られない神秘だ。俺たちはきっと語り合っただろう、地中の星々についての神話を、そしてこの旅の結末を。


 しかし、三年という月日は余りにも長すぎたのだ。その間にも、俺たちが野放しにしていた{災厄の苗床}その力を蓄え、芽を生やしていた。これは、そんな強大な絶対性を目の当たりにする前の、ほんの少しの暇であった。神々の迷宮エル・ザ・ダンジョン、辿り着いた地は第19層・地中の星空。広がるは絶景と、絶望の最終決戦地である。





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