08 (入社初日)
2016年4月1日…。
ピピピピピピ…。
「はい…起きた。」
スマホのアラームを止め、6時に起床…。
昨日来ていたジャージを洗濯機に放り込み、新しいジャージを着る。
下着の交換は 夜のシャワーの後、ジャージはそのまま 変えずに着て眠り、朝に着替える。
部屋を出る前に簡易キッチンで顔を洗い、歯垢染め出し液で歯を赤く染めて、赤色が消えるまで丁寧に歯磨きをして行く。
正面に付いてる鏡で自分の髪型を見て、手櫛で軽く梳かし、後ろに垂れている髪をヘヤゴムで結ぶ…この間 10分…これで、準備完了だ。
オレは マジックテープ式の安全靴を履き、部屋を出る。
それと ほぼ 同時にドアを開けたのは、肩幅がある屈強な女性…とミハル。
「「おはよう」」
3人が挨拶をする。
出て来た部屋からして この人がユキナか…。
「ユキナか?今日から入社の新人のナオです。
よろしくお願いします。」
「よろしく…アタシは キミの上官になるユキナだ。」
オレとユキナは握手をする。
「さて…私は 朝食を作るよ~」
ミハルは食堂に行く、朝食の時間は 6:30分位だ。
「私は掃除かな…」
ユキナは 掃除機を鳴らし、廊下を掃除し始める。
ツナギ姿にマガジンを入れた 防弾チョッキを着ていて、肩にスリングを付けてぶら下げているのは 今では懐かしい M3グリースサブマシンガン。
頭にはヘルメットがあり、カメラが付いている。
つまり、フル装備だ。
本人の屈強さも含めて…それは まるで…。
「少佐?」
「いや…アタシは 三尉だが?」
「あ~いや、そうじゃ無くて…」
「おはよ~…ユキナ、何でぇフル装備なん?」
掃除機の音で起きて来たジーパンに Tシャツ姿のマトイが ユキナを見て言う。
「ここに着いたのが夜中で 銃砲店の営業時間が とっくに過ぎていたからだよ…。
だから 武器の返却が出来なくって、自分の部屋で管理していたと言う訳さ…」
「そかぁ…盗まれたら ことやけんねぇ…グローリーは?」
「まだ起きてない…。
任務明けで 疲れているだろうけど 朝食までに 起きなかったらスマホを鳴らす。」
「分かったぁ…はぁ…。」
マトイは 欠伸をしつつ、食堂に向かう。
「ミハル~特濃茶~」
「出来てるよ…。」
「あんがと…。」
マトイは 濃い緑茶を飲まないと完全に目が覚めない。
「それじゃあ…オレも行くよ…。」
「ああ…」
「料理出すよ…」
「丁度良かった…はい…頼む。」
ミハルが朝食をテキパキと作っている。
今日のメニューは 焼き鮭に味噌汁、ご飯、目玉焼き、たくあんにサラダと言った普通の朝食だ。
だが…。
「1人だけ やけに多くないか?」
ご飯の量は 500g程度、目玉焼きは1個追加、たくあんもサラダも ナオらの2倍近い…それに納豆が2パック付いて来ている。
「あ~…それは ユキナの…アイツは 私達の2倍は食べるからな…。
とは言え、元自衛官だったら この位の量でも普通…仕事で良く動くからな。」
「とは言ってもぉ…男基準でぇやけどなぁ…。」
ミハルの言葉にマトイが言う。
マトイはテーブル席に座り、ミハルが出した特濃茶を飲んでいる。
「まぁ あの身体を維持するなら その位食べないとダメなのか…。」
「アイツ 毎日 4000キロカロリー近く 食べているのに全然 太らないからな…。
全部エネルギーとして、使ってるんだろう…。」
「おはよ~。
てか何で、仕事明けで 装備 着ないと行けないんだ~よ」
ツナギ姿でフル装備のグローリーと掃除を終えたユキナが やって来る。
「はい、おはよぉ…。
ウチの手ぇ離れた 銃の管理はぁ射手の責任やからなぁ…。」
「とはいってもよ~。
銃ぶら下げていても コンビニとかは 入れるけど、寝に健康ランドにも行けないのよ…銃持ち込めないから。
車内に置くのは ダメだってユキナが言うし…。」
「誰かが銃を持って行ったら どうするの…。
流石に 3000度を出せる ガスバーナーとか使われたら、鍵が溶かされて開けられるからね…。」
「あ~その想定って如何なの?
過剰じゃない?」
「うーん…業務時間外も 実質、車に拘束されているってのも問題だよな…。
車に銃を入れておける金庫でも作るか?」
ミハルが言う。
「車にぃ直付けされているなぁら、とりあえず OK…。
まぁた荷台を改造かなぁ…。」
「もう、トイレやキッチンが無いけど キャンピングカーぽくなっているしな…。
待機中にストレスが無いように造ったんだけど…。」
そんな事を言いつつ、テーブルには料理が並び、ミハルの『頂きます』の号令で食事が始まる。
「今日の業務は?」
グローリーが食べながらミハルに聞く。
「連勤明けだし、銃を返したら今日は ゆっくり休んで良い。
一応、確認しておくけど、頭打ったり、ケガは ないよな…。
絆創膏サイズの怪我でも経費で落とせるからな…。」
ミハルは、相変わらず 食事のパントマイム…流石にもう慣れて来た。
「僕達は 大丈夫…。
ただ、ユイが撃たれたから装甲の取り換えが必要かな…。」
「ユイ?」
警備中に撃たれたのか…装甲?
「あ~グローリー専用のドラムだよ…。
人が撃たれた訳じゃない。
ちゃんと修理すし大丈夫…。」
「そっか…。
人じゃなくて 良かった。」
「で、ミハルはぁ?」
「私は 高速で撮影された弾痕トラックが SNSで話題になって、もう会社まで特定されているから、ホームページに乗せる公式文章の作成と、向こうの警察に連絡。
ナオは マトイと銃の調整…本体代込みで50万以内で…」
「わかったぁ…実質の制限無しかぁ…。
今後のメンテ代含めてぇも かなりぃの事が出来るなぁ…。」
「そんなに金掛けて良いのか?」
「まぁハンドガンのフルカスタムだと確かに高いが、アサルトライフルなら この位は 普通に吹っ飛ぶしな。
それに 死なれちゃ困るからな…。
札束で従業員の命を救えるなら それで良い。」
モグモグ…。
ユキナは 何も会話が無く、ひたすら料理を口に運び続けていた。
あんな量があったのにユキナとナオ達の食事が ほぼ同時に終わり、オレが食器を回収して ミハルが食器を食器乾燥機に入れた所で マトイが立ちあがる。
「グローリー…これから寝るんやろ…。
ユキナも 店、時間外で開けるからきぃ…ナオは9時に来や…。」
「分かった。」
オレが そう答えると3人は寮を出て作業塔へ向かった。