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07 (現金輸送車 警備任務)

 とある甲信越(こうしんえつ)地方…。

「ふぁあ…。」

 中型トラックの助手席にいるグローリー()欠伸(あくび)をする。

 僕 達のトラックの前方には、現金輸送車…更に前には 銃を持てない警棒装備の民間 警備会社の車両が高速道路を走っている。

 埼玉の会社から、泊まりで 中部地方の中をあちこちに行き、現在6回目の現金輸送車の護衛…これが終われば、会社に帰れる。

「ほら、最後だからって気を抜かない…。」

 ハンドルを握っているユキナが言う。

 ユキナは 元自衛官で、レンジャー訓練を受ける為の採用試験に合格する程の実力がある。

 見た目は 顔も整っていて胸も豊かな 美人なのだが、肩幅が広く 筋肉質で、風呂場で裸を見た時には 見事なシックスパックが出来上がっていた。

 今は 僕とユキナは 仕事着のツナギの上からレベル3の防弾ベストを着て(スリング)を付けた銃を肩から下げている。

 頭には レベル3の防弾ヘルメットで、頭の上には 警察に証拠として提出する映像データを記録する為のカメラとマイクが取り付けられている。

「って言っても、ヤバイって話だったのに…今まで何も無しっすよ…。

 何か拍子抜(ひょうしぬ)け…。」

 僕が暇になって軽口を叩く。

「アタシ だったら敵が 気を抜けた所で 現金輸送車を襲う。

 ちゃんと会社から金を貰っているんだから仕事をしな…。」

「はいはい…(あね)さんは 真面目だね~。

 時速 100kmで高速を走っている車両を地上からの狙撃で止めるのは無理、料金所までは 取りあえず 大丈夫…。

 治安が悪くなるのも 高速を降りてから…。」

 僕は タブレット端末で マップを見ながら言う。

「車を横付けして相対速度を合わせれば、風で狙いにくくなるけど 十分 行ける。」

「なら、並走して来る 車両に 気を付ければ 良いのか~了解…。」

 そう言って僕は 警戒するが、予想通り…料金所を通過…。


 高速を降りて 一般道に入り、グローリー()達は一気に緊張が高まる。

 見た目は普通の市街地だが、この地にいる 中国、ロシアン マフィアが 登録されていない幽霊銃(ゴーストガン)を民間に売りさばいている事もあり、この地域での発砲事件の数は 年々上昇…。

 しかも、犯罪者側がアサルトライフル、ショットガンを標準装備している状態で、それに対処(たいしょ)する 警察側は 5発しか撃てないサクラリボルバーを使っているので、返り打ちに会うのが目に見え 下手に手が出せず、法執行機関の仕事である 治安の維持が出来ていない。

 で、更に厄介(やっかい)なのは、警察が機能しないので 一般の民間人も マフィアからゴーストガンを買い、銃の不法所持をしてまで 自分を自衛するしかない状態だ。

 そして、マフィアが儲かる事により、更に治安が悪化し、民間の銃所持率が増加…それにより マフィアが儲かりの 無限連鎖を繰り返している。

 だからと言って 警察側が 銃の不法所持で 民間人を 一斉検挙したらパワーバランスが崩れ、民間人に大量の死者が出るので、互いに武装して 銃で脅し合っている 今の状態が一番平和だと この地域の警察は判断した。

 こう言った地域が 今の日本には 大量にあり、北は 中国とロシア、南は 韓国に実質 侵略されている状態になっている。

 ちなみに 実質の他国からの侵略状態ではあるが、マフィアは 軍では無く、民間人なので 自衛隊が派遣出来ず、機動隊の役割になる。

 これがテロリストと認識されれば 自衛隊を派遣出来るんだが、自衛隊を指揮する幕僚長(ばくりょうちょう)が日本国籍を持つ 中国人の子供になっている為、元母国に忖度(そんたく)して動かない。

 こうして、対処出来る武力を持つ自衛隊は 政治で動けず、機動隊は あちこちに派遣されて消耗(そんもう)する為、僕ら見たいな 民間の武装警備員を雇うと言う仕事が 成立している。


 市街地…。

 ババババ…先頭の警備車両のタイヤに何度も撃たれ、バースト…。

 車両がスリップを始め、ドライバーがブレーキを踏み、道路を横付けする形で止まり、現金輸送車が接触事故を起こす。

 あ~…ランフラットタイヤじゃ無くて 一般タイヤを使ったのか…。

 確かに 銃を使わず 刃物で襲い掛かって来る平和な時代なら それでも十分だったのだろうが…。

「来たわね…。

 1番車両のドライバーは 車内で姿勢を低くして警察に連絡。

 2番車両は 戸締りをして待機…いつでも車を動かせるようにして…。

 3番車両のアタシ達は 敵に対処(たいしょ)する。」

 グローリー()達が 乗る車両が、現金輸送車の後部扉を(ふさ)ぐ形で 止まり、ユキナが前方に無線で連絡…こちらの車両は レベル3の防弾仕様でライフル弾まで対応出来る。

 タイヤもパンクしても100kmは走れる軍用のランフラットタイヤで、タイヤ自体も外から装甲板で(おおわ)われている徹底ぶりだ。

「交戦規定は?」

 僕がユキナに手早く聞く。

「銃を構える前でも 撃って良し…基本は ゴム弾で対処(たいしょ)…。

 緊急時のみ 通常弾での殺傷を許可…。」

「いつも通りですね…了解。

 UI(ユイ)行くよ…いつも通り、ユイは スナイパーの排除。」

「く( ̄口 ̄)了解です。」

 後ろの荷台にいるドラム…ユイが言う。

 こちらの車に弾が通じないと分かったのか、弾幕が止み 敵が接近して来る。

 前の現金輸送車は 敵に囲まれ、ドアをガチャガチャと開けようとしたり、銃で鍵を撃ち抜こうとするが、跳弾した弾が 別の敵の足を撃ち抜き、装甲も(へこ)むが 大した効果が無い…。

 練度が低い…大した訓練は受けていないな。

 現金輸送車側は 反撃も出来ないが、強靭(きょうじん)な装甲に守られている為、あのままでも数分は持つだろう。

「オイ…車、どけろ!!」

 現金輸送車の後部扉を(ふさ)いでいる為、敵が怒鳴りつけて こちらの車両を下がらせようとする。

 もう少し、もう少し…敵がドアまで近づく。

「いい加減に…」

 ドン!!

「ぐふぇ…。」

 勢いよくドアを開けて 敵が倒れ、素早くオレ達3人は左右のドアと荷台から降り、敵に対処(たいしょ)する。

 ダダ…ダダ…。

 オレの銃 MP7から放たれた 4.6x30mmゴム弾が敵に腹に命中…次々と倒れて行く。

 ゴム弾は 皮膚を貫いて体内に侵入しないが、プロボクサーのパンチ位の衝撃が皮膚に広がり 大アザが出来る程に痛く、腹部の横隔膜(おうかくまく)に当たった場合、呼吸が困難になり、当たり場所によっては 死ぬこともある。

 非殺傷兵器と呼べる代物ではないが、実弾をぶっ放すよりかは(はる)かに安全だ。

 向こうは AKの5.56mm NATO弾 仕様で統一(とういつ)されている…仕入れ元は ロシアン マフィアか…。

 良し、まずは 6人…無力化…。

 僕は車の後部に走り、ユイと合流…10㎏に近い防弾(バリスティック)(シールド)を左手が軽々と構えるユイの(かげ)に入り、現金輸送車付近にいる敵に対して撃って行く…。

 敵の何人かに当たり、すぐに隠れ 撃ち返されるが、防弾(バリスティック)(シールド)とユイの装甲で防がれてオレを殺せない。

 こちらに注意を向けた所で、敵の真横からユキナが構えている銃…M3グリース改から放たれる45口径ゴム弾で 次々と倒されて行き、こちらへの銃弾の雨が止む。

「スナイパーを発見しました…。

 距離200…1名…殺傷許可を( ;゜-^)□G口=」

 僕はユイを盾にしつつ車の(かげ)に移り、周囲の敵を確認し安全を確保…。

「よし…許可する 殺せ。」

「了解…ば~ん( ;゜-^)□G口=★……」

 ユイが防弾(バリスティック)(シールド)をスナイパーの方向に構えながら右手に構えるP-90を相手に向ける。

 P-90の有効射程は約200m…割とギリギリの距離だが、それは人が撃った場合の話で、ユイは P-90で600mまでだったら、顔にピンショット出来る。

 ユイは P90を片手で 5.7x28mm弾を1発 発砲…2発目…。

「対象の頭部に2発 着弾…死亡と判断。

 他のスナイパーは無し…観測を続けます。」

「よくやった。」

 そう言うと僕は ユキナの射線と十字になる様に移動し、敵を横から狩る。

 しばらくして、戦闘が終了…30人近い相手を片付け、武器を取り上げて手を背中で拘束(こうそく)して行く。

 戦闘が終わり、こちらが拘束が終わったタイミングで、タイミング良くパトカーのサイレンが聞こえ、3台のパトカーが やって来る。

「警察だ!!武器を捨てて 両手を上げろ!!」

 警官がパトカーの中からスピーカーを通して言う。

「アタシが ミハル警備の現場責任者…ユキナです。

 仕事中の為 武装解除は 出来ませんが、事件前後の映像を記録しています…グローリー…。」

「ちょっと待って…ユイ…記録は?」

 僕達のカメラの記録は 一番生存率が高い ユイのメモリに送信される仕組みになっている。

 今、ユイは 僕がユイに差したUSBメモリに 事件の解決に必要な細かなデータと、映像データを書き込んでいる。

「完了しました…どーぞ。」

 僕がUSBメモリを引き抜き、ユキナに渡す。

「こちらに 証拠のデータが入っています。

 確認の上、何かありましたら ここに連絡を…担当官を付けて可能な限りの捜査協力をするつもりです。」

 ユキナが 会社の名刺と一緒にUSBメモリを渡す。

「それでは…まだ護衛の仕事がありますので ここで…。」

 ユキナが 陸自の敬礼をし、思わず警官も敬礼をした。

「1号車は 路肩に止めてレッカー待ち…乗員は3号車の荷台に…。

 後 警備会社に『ランフラットタイヤに履き替えろ』って言っておけ、あのタイヤだったらバーストしても そのまま行けた。

 2号車は先頭…その後ろに3号車が付く。

 気を抜くなよ…第2波がある想定で動け!! 」

 ユキナが テキパキと指示をして行く。

 車が弾で(へこ)んだりしているが、負傷者は0…ユイが 撃たれたが、弾は装甲内に達していない…帰ったら装甲の張り替えは必要かな…。

 各員が車に乗り込み、移動を再開…。


 コンビニ…駅などのATMの機械を開き、現金輸送車に乗っていた作業員が不足した現金を追加して行き、それを守る様に配置されているのが、警棒をもった警備員…。

 ユキナ(アタシ)らは 現金輸送車を囲むようにしながら 周りに威圧感を与える。

 こうする事で 現金輸送車を襲う事が割に合わないと相手に思わせるが出来、突発的な犯罪の大部分を防げる。

「その内、キャッシュレス決済が主流になるのかな…。」

 アタシがボソリと言う。

 まっ世の中には クレジットカードや銀行口座を持てない様な暴力団()が大量にいるからな…現金自体は無くならないんだろうけど…。

 そう言った事を思いつつ、アタシ達の仕事が終了…。

 1号車の警備員を近くの最寄り駅に送り届けて、高速道路に乗って 埼玉を目指す…弾痕(だんこん)だらけの車両でドライバーの目を引き、草加インターチェンジ(IC)を降りた あたりで警察に職質を食らったが、問題無く会社に戻る事が出来た。

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