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06 (引っ越し)

 門を開けて側面に『ミハル運輸』と書かれた中型トラックが寮の前に止まる…。

 トラックを運転をしているのは ミハルで、トラックのコンテナの扉を開けると、中から6体のドラムが降りて、荷物を運んでくれる。

 習志野 家からナオ(オレ)の部屋の荷物を積んで運んで来た 引っ越し業者だ。

「いや…ナオって本当に 私物少ないな~。

 ドラムを入れているってのに まだスペースが余る。」

「本当に何でも自動化しちまうんだな…。」

 大きいのは 気泡緩衝材(きほうかんしょうざい)で補強された折り畳みベッドにベッドテーブル…マットレスや布団…。

 後は 高性能 PCやディスプレイになる。

 習志野には漫画が ギッシリ詰まった本棚があったが、この機会に電子書籍に変更した。

 オレは PC一式を担当し、ドラムが 持っている折りたたみコンテナ(折りコン)には オレの私物が入っている…中身は主に衣類だ。

 乾燥機能付きの洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、ケトル、エアコンが 部屋に標準搭載されているので、運ぶ荷物が異様に少ない。

 寮は 3階建てで、各階には 6×2の12の部屋があり、更に1階には 食堂と談話室、2階に倉庫で、3階には 大浴場が追加で付いている。

 ミハルは 101号室で左の一番手前…103号室がマトイで、オレは 反対側の右の一番奥の112号室。

 ミハルの部屋の真正面になる107号室には ユキナ…109号室には グローリーの名前がある。

 まだ会っていないが、ここの従業員だろう。

 そんな事を思いつつ、オレは オレがPC一式を持ち、部屋に入り、ベッドとベッドテーブルを持ったドラムが後に続く。

 部屋には、玄関手前と奥の 2部屋あり、玄関手前の部屋には、簡易調理位は出来そうな キッチン、洗濯機、冷蔵庫、側面のドアを開けると そこにはトイレと風呂が 一緒のバスルーム…。

 奥の部屋は ベランダ側にエアコン…オレがドラムに指示して壁側にベッドを置き、その上にベッドテーブル…。

 更に上にディスプレイやキーボード&マウス…横にPCラックを置き、その中にPC…。

 モデム、ルーターなどのケーブル接続が終わり、ベッドに座って起動の確認と高速ネット回線の接続を確認した所で、ドラムが すべての折りコンを 室内に綺麗に運んでいた。

「良い部屋だな…。」

 これが全部、会社持ちな訳だから 良い物件だ。

 オレはそう思い、部屋を出た。


「おっネットに繋がったか?」

 ナオ が部屋を出て談話室(だんわしつ)に行くと ソファーに座っているミハル()が タブレット端末を操作しながら言う。

「ああ…助かった。

 それにしても やけに通信が速かったな」

「会社で一括で契約しているからな。

 サーバールームもあるから、大容量回線を用意している。」

「それで 他のルームメートは?

 仕事 仲間になるんだろうから…挨拶はして おきたいんだが…。」

 おお…これから一緒に戦う仲間は 興味の範囲内か…。

「ここを使ってるのは、今の所5人…。

 私とマトイとナオ…後2人…その2人は今、泊まりで 危ない方の警備に行ってる…。

 帰って来るのは 3日後の夜…つまりナオの入社前日の夜だな。

 入社日の朝の朝食に でも話すと良い…。」

 私がナオに言う。

「あ~食事出るんだっけか…。」

「そ…朝と夜の2食…。

 私は 栄養士の資格も持っているから 健康管理は任せろ。」

「本当にミハルって 沢山の資格を持っているんだな…。」

「まぁな…私は 大抵の車両には乗れるし、民間だとハンドガンだけ だけど、軍務ならライフルまで使える。

 他だと救急救命士の資格、栄養士、カウンセリング…内科だと 消化器が出来るな…。

 その(ほとんど)どは 軍で取った資格で、日本でも医大を卒業したから、外科手術も出来るぞ。」

「あ~それでか…作業塔の2階に病院があったよな…。

 確か『ミハル診療所』だっけか…。

 設備はそろって そうなのに入院用のベッドが無いから気になってたんだけど…。」

「法律の問題だな…。

 実質、ここには 銃で撃たれた なんかの訳ありの客しか来ないから、入院用のベッドが無い『無床(むしょう)診療所』って事にして、大量の患者が出た時には 空いている(りょう)の部屋を使っている。

 ベッドの数が19を越えると病院扱いになっちまうからな…。

 (りょう)は 病室じゃないから、自宅療養(じたくりょうよう)と言う形に出来る…ちなみに健康保険も ちゃんと使えるぞ。」

「本当、よく考えられているんだな…。」

「大金を掛けて教育した従業員が 簡単に死んじまったら、こっちが困るからな…救える命は救う。」

「オレは 良い人に拾われたみたいだな…。」

「だろ…で、夕食は7時位からだ。

 配達(デリバリー)は やって無いから ちゃんと食堂に こいよ…。

 あっ…ナオ…何か食べられない物はあるか?」

 私がナオに聞く…。

「?……。」

 何だ?意味が伝わってない? ナオが考え込んだぞ。

「『食べられない』は、アレルギーか?それとも好みか?」

「あ~そう言う事か…。

 ナオに アレルギーが無い事は 分かっている…好みだ『苦手な食べ物はあるか?』」

 私が言い直す。

 曖昧(あいまい)な質問に対して 会話の流れから質問内容を想像して答える事は出来ないか…。

 とはいえ、向こうが 聞き返してくれるなら こちらで対応出来る。

「ある…生肉と生魚だ。」

「あ~火を通さないとダメな人ね…。

 焼けば 食べられるか?」

「ああ…大丈夫だ。

 それじゃあ 夕食まで あちこち回って来る。」

 ナオはそう言うと、(りょう)の外に出て行った。


 さて、ナオ(オレ)が戻って来ると食堂では ミハルがキッチンで料理を作っている。

 テーブルは 1テーブル6人席が 6テーブルあり、36人が座れるが、現在の入居者は5人なので、キッチンに一番近いテーブルが使われていて、醤油、ソース、ドレッシングなどの調味料は そこにしか置かれていない。

「ただいま…?」

 中学に入ってから 実質一人暮らしだったので、久しぶりに使う言葉だ。

「お帰り~」

 マトイが席に座って手を振っている。

 ツナギ姿だったマトイは TシャツとGパン姿になっていて、鍵束をGパンに繋いで、ポケットに入れている…銃砲店の鍵か?

「お帰り、料理が出来ているからカウンターからテーブルに運んで…。」

「ああ…。」

 カウンターには 和洋中 様々な料理を少量ずつ、白皿に盛り付けられ、品目の数が かなり多いが、全部を合わせても 2人分だ。

 ミハルかマトイは 極端に小食なのか?

 オレは料理をテーブルに運ぶ…。

「とりあえず、今日は ナオの反応を見る為に多品目で作って見た。

 好きな物、嫌いな物、味の注文なんかが有ったら 素直に行ってくれ。

 皆の為の食事だから、ナオの好みに 特化される事は出来ないんだが、色々と調整を効かせられる。」

「分かった。」

「ほな…頂きますぅ」

「頂きます。」「…いただきます。」

 オレとマトイは 食事を始め、ミハルは スプーンを口に運ぶパントマイムをしている。

「ん?」

「あ~ナオは知らんのか~ほれ、これで ミハルを見てみぃ」

 マトイは スマホを操作し、オレに渡す。

「おう…マジか…。」

 そこには、カメラに写されたミハルの姿があり、テーブルの上には オレ達と同じ料理が表示されていて、ミハルの手には、先割れスプーンが持っている。

「話だけは聞いた事があるが AR食品か…となるとミハルは…。」

「そう、全身義体…。

 ミハルはぁ 軍務中に銃で撃たれて瀕死(ひんし)の重症だったんやが、脳だけは無事でなぁ…。

 それでぇ 復活の可能性があるからやと トニー王国に全身義体の実験体として売られてぇ、全身義体として復活したって訳やぁ」

 マトイが言う。

「まるで攻殻だな…。」

「流石にあそこまではな…。

 電脳化しているから こうやって義体を動かせて、ARとは言え 食事が出来るんだが、ハッキングは出ないし、義体も力持ちで 壊れにくいが 出力は精々、100㎏の荷物を軽く持ち上げられるレベル…。」

 ミハルが笑いながら言う。

「せやけど、パラリンピックの100m走で10秒出して 金メダルとったやろ…。」

「マジか…」

「リハビリと トニー王国の義体の宣伝でな…。

 全身を入れ代えたってのに、等級が足の切断、義足ありの6で、1番軽い等級だったんだが、健常者の女子の最速記録を2秒も縮めて 世界1位になっちまったんだよな~」

「そりゃ、ヘタに生身を持ってるよりぃ…全身機械の方が動けるやろうからなぁ…。」

「それで、その後のパラリンピックは?」

「金メダルを取った時に 大パッシングを食らったな…。

『これはメーカー側の技術力であって 本人の力では無い』なんて言われてな…。

 で、それ以降は参加して無いんだけど、4年後には別の国が 短距離走専用の足に換装して、私の記録を抜いて、9.1秒を出して人類最速になった。

 ちなみに人の物理限界が 9.27秒って言われているから、機械化する事で人を超えたって事になる…。

 やっぱり、人の足だと出せる速度にも限界があるんだよな~。」

「足を変えてみる気は 無かったのか?」

「私は アスリートじゃないし、それに せっかく私の魂が定着した足をまた交換したら、私自身の魂が また薄くなってしまう…そんな気がしてな。」

「魂ね…。」

「さて、私の話は これ位にして 味は如何(どう)だ?

 義体の味覚受容体(みかくじゅようたい)は 人と同じ位のレベルはあるんだが、それを受け取る脳側がちょっと自信が無くてね。

 条件が悪くなると ハバネロも普通に食えちまうから…。」

「うわっ」

 辛さ上位のハバネロを食べるのか。

 もしかしたら、料理が殺人レベルで 辛くなっている可能性もある訳か…。

 これは ちゃんとコメントをしないと…。

「どれも普通に美味い。

 なんだろうな…チェーン展開してそうな 定食屋の味?

 万人受けする為に平均点を狙った感じ…感動する程では無いんだけど、立地が便利だと ついつい行っちゃう感じかな?」

 習志野の家に来てからナオキは全く家に帰らなかったが、十分な程の生活費を毎月 送ってくれる為、近くの牛丼屋、ラーメン屋、コンビニに頼る事が多く、家では 冷食、パック飯、インスタント麺にカップと、電子レンジと電気ケトルと鍋があれば 十分な状況だった。

 この味は 多分、牛丼屋が一番近いだろう。

「これ…どう表現する?」

 オレはマトイに聞く。

「せやな…美味しいんやけど、家庭料理とは 違うって事かな」

「オレの家庭料理は冷凍食品だから、確かに それより美味しいよ。」

「あ~そうくるか~困ったなぁ…。」

「まぁ言いたい事は分かるから…このままで、問題無いって事な。」

「ああ…問題無い。」

「ウチもやぁ…。」

 オレ達はそんな会話を楽しみつつ、こんな食事は久しぶりで楽しかった。

テーマ:全身義体、食事

 

私は 軍務中に銃で撃たれて瀕死(ひんし)の重症だったんだが、脳だけは無事でな…。

(2050年に衛生兵をやっている時に撃たれた。

作中では2016年なので、未来、タイムマシンで過去に戻っている。)

 それで 復活の可能性があるからと トニー王国に全身義体の実験体として売られて、全身義体として復活したって訳

(嘘)

「まるで攻殻だな…。」

(攻殻機動隊より、ナオもミハルも攻殻を知っている。)

「私は アスリートじゃないし、それに せっかく私の魂が定着した足をまた交換したら、私自身の魂が また薄くなってしまう…そんな気がしてな。」

(ミハルは最低、3回は死んでいる その度にミハルのオリジナル性がドンドン無くなっていった。)

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