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24 (テロリストの救世主)

 事件から1ヵ月が立った。

 ネットでは事件終了から2日で 情報がネットにアップされ、SNSでは大騒ぎになる。

 その後、慌てた様子で 報道しなかった 各報道機関が報道を開始し、日本中を巻き込んだ大ニュースとなった。

 これに伴い防衛省側(市ヶ谷)が正式に情報を公開…。

 報道がされなかったのは 敵に作戦が筒抜けにならない様にする為との事…。

 まぁ政府要人がテロリストに簡単に捕まったなんて言える訳もないので、発覚し無かったら そのまま報道しなかったのだろうが…。

 この事件により『政府要人がテロリストに簡単に捕まる国』と言う事を世界中に宣伝する事となり、日本の首相との会談を控えていた アメリカ側は、アメリカ軍のストライカー装甲車のフル武装で 要人の輸送を行った。

 ちなみに警護に ここまでやるのは 紛争地帯を通る位なので、『日本の要人警護は 当てにならない』と『日本は 紛争地帯レベルで危険だ』のメッセージを日本政府に間接的に伝えた事となる。

 これにより、日本政府や普段警護をしている警察のプライドをズタズタにする事となった。

 ただ良い事もあった。

 作戦で使用した『試作型 20式小銃』が ネットのガンマニアの話題になり、評価は それなりに好評…。

 これまで 国産の64式、89式を使わずに アメリカのM4アサルトライフルを主力にしていた特戦が、一部とは言え、試作品の20式小銃を実戦で使った事で『20式小銃が 特殊部隊でも普通に使える性能』だと国民にアピールする事が出来た。

 そして、この銃の製造を担当している 豊和工業は、特戦と共同開発をしている事を公開。

 更に『20式は 現状でも性能としては 十分では あるが、細かな修正箇所と、何より 銃の生産性が悪く、コスト高になってしまう問題が残されている…細かい部品の見直しを行い、正式配備は名前の通り 2020年になる事だろう』と発表した。


 続いて実際に捕まった人質…。

 フェミニストのオバサン以外に目立った外傷は無く、目の前で大量に人が殺された事で メンタル面に影響が出ていたが、現状では 回復をしていて、テレビ出演や ネットや動画投稿サイトなどで再びを活躍をしている。

 基本的に人質の発言は、特戦と 特戦が占領した場所を 再占領されない様にする為に守っていた 武装警備員に対して感謝している好印象な内容だ。

 ただ、人質の中で2名だけは別…。

 1人は反戦派の要人で、彼は テロリストと交渉をして 自分達を解放せず、武力でテロリストを皆殺しにした事を批判…まぁフォロワーが反戦派だらけの彼が主義主張を変える事も出来ず、平常運転だ。

 そして、フェミニストのオバサン。

 彼女は 人質の中で唯一被弾した事で、注目度が高く、あの中で自分と女性自衛官が撃たれたのは、撃った側の男性が女性を嫌悪している女性嫌悪(ミソジニスト)だからだと主張。

 更に男性自衛官に治療と称したセクハラを受けたと主張し始めた。

 もう無茶苦茶。

 これに対して 特戦に協力をした民間武装警備会社…ミハル警備は、ミハル名義でオバサンの診断書をホームページに公開。

 オバサンは 胸の下を撃ち抜かれており、血を外の空気で肺が圧迫されていた事。

 『男に触れる位なら死んだほうがマシ』と彼女が発言した事で、現場の男性 武装警備員が治療出来ず、被弾した女性武装警備員が来るまで 治療が出来なかった事…。

 それにより、応急処置で一番重要な10分を無駄に過ごしてしまい、彼女は失血死 寸前だった事だ。

 そして男性が女性に行うAED問題を出し、男性が女性を治療出来ず 死なせてしまう事について警告をした。

 ちなみに一番下には、民事訴訟した場合、ヘルメットに取り付けられている映像データを証拠として提出すると書かれており、これで相手に民事訴訟を起させにくくした。

 で、SNS上は『患者の医療データを乗せる何てプライバシーの侵害だ』とか『被写体に許可なく撮影しているのは盗撮だ』とか…もう人を攻撃するのが目的であり、理由なんて如何(どう)でも良い見たいだ。

 今日もSNSでは 元気に罵詈雑言(ばりぞうごん)が飛び交っている。

「まぁ おおよそ 狙い通りって所かな…」

 アタッシュケースを持ったナオキ()()カフェのパソコンの電源を消して退出をした。


「なるほど…そういう仕掛けか…」

 ミハル()は 社長室でパソコンのディスプレイを見ながら 株の売買で資産を増やして行く。

 暴落した状態で最安値で買った宝石店の株は 若干 持ち直していて、今は 上昇傾向にあり、もう しばらくすると 株価が回復してい来るだろう。

 私の資産とは 口座の預金残高では無く、私が大株主となった 現物の会社だ。

 株を買い占めて 大株主となった私は、会社をある程度コントロールが出来る様になる。

 で、その手に入れた 会社と別のミハルカンパニーが手に入れた会社と仕事を組み合わせて 互いの会社に利益を生み出す業務提携システムを作り上げる。

 後は、適当な所で 業務内容はそのままで 私の会社の系列に入れば、私の信用を借りて株価が上がる。

 で、私が保有している株を大量に売却すれば、市場が動き、その企業の株は一気に暴落…最安値になった所で また その企業の株を私が大量購入をする。

 そうなれば 私の資産価値も上がり、株価も上がると…。

 まぁここまでしなくても 数百円の株の値動きがあれば、投入している株数が桁外れなので 大きな利益を生めるのだが…。

 そして、その業務自体も私の身内専用の資産管理会社『ミハル資産管理会社』に管理させる事で、自動的に資産が増えて行く。

 正直、もう働く必要が無いし、銃製造会社、武装警備会社、死体を始末する特殊清掃員と火葬場を組み合わせた この会社は完璧に私の道楽だ。

 コンコンコン…。

「どーぞ」

 ドアを開けて、アタッシュケースを持ったナオキが入って来る。

「ハルミ 金を持って来た1億5000万。

 上との交渉に手間取ってね…。」

 ナオキはソファーに座り、アタッシュケースを開く…そこには 大量の札束が並んでいる。 

「はい、どーも」

 私は 偽札検知機能を持った札束計測器に札束を 次々と突っ込み、正確な枚数と偽札ではないかを調べる。

「それで、その上は 大儲けか…。」

「まぁね…予想は 付いているんだろ」

「ああ…今回の犯人は 宝石会社。

 自分の会社を強盗に襲わせる事で保険金を得るのが目的だ。

 ナオキは それを起させる為のテロと要人の誘拐作戦を作戦に組み込んだ。

 つまり元凶はアンタって事になるかな…。」

「正解~」

「盗んだ宝石は?」

「最終的には 元のショーケースに戻るな…。

 元々自分の店の商品ならシリアルナンバーの問題もクリア出来る。」

「なるほど…。

 で、構成員に払った300万円は、信用売りをした宝石店の株を大暴落させた後で 買い戻して手に入れた金だな。」

「これまた正解~」

「それで…アンタの利益は?

 ボランティアと言う訳じゃないんだろ」

「増税しようとしていた財務大臣への牽制(けんせい)…。

 それと治安悪化させる事で、公安に自衛の為に銃を持てるように法整備をさせる事が 目的かな…。」

「じいさんの為か…。」

「そう、それに今回 無秩序に暴れる犯罪者を組織にスカウトする事で 制御可能な状態に置けた…。

 これからは 株価の操作を目的とした組織に変わって行くだろうな~」

「まぁマフィアを制御可能な状態に出来るなら、結果的に治安も良くなるか…。

 はぁ…ナオキが計画した作戦って、本当に不利益になる人が出ないんだよな…」

 つまり、投資家から指定の会社の株の暴落させる依頼を受けて、構成員がリアルで強盗をして株価を落として儲けるシステムになる訳か…。

「今回の不利益が出たヤツは、皆 死んだからな…。

 それでも 契約通りちゃんと金を振り込んで最低限の礼儀は果たしている。

 俺は 国民を大切にしない法律(ルール)は守れない。

 だから言葉を聞いて貰えない貧困者を先導して、武力で この世界を変える。」

「私は 衛生兵だから…ヒトを殺せない。

 殺しをやらせている身だけど、法律(ルール)に乗っ取って内側から変えて行く。」

 ナオキのやり方の方が効果的だと言う事は分かっている。

 だが、通常の手続きで法を変えて行かないと正当性が得られない。

 金を数え終わった…全部 本物…枚数は ちょうど1万5000枚だ。

「だろうな…その方がナオト(アイツ)の教育には良い。

 じゃあ、次のオレ()を頼むよ」

 金を確認した ナオキは そう言うと、ドアを開けて外に出て行った。

 法律は高所得者が造る…高所得者は 自分の利益を維持する。

 だから いつも低所得者が割を喰う。

 皆がちゃんと不自由無く暮らせる社会システムが 既にあると言うのに、既存のシステムに しがみ付く高所得者でシステムが変わらない…そのシステムに乗っ取って稼いでいる私もだ。

 なら如何(どう)するか?

 ナオキは、第二次世界大戦時にトニー王国が武力で世界を征服する事で、地球民の幸福を確保しようとし、私とジガが それを止めた。

 それぞれの国には、文化や歴史があり、トニー王国の価値観を押し付けてしまうのは間違いだからだ。

 その後も冷戦時には、核戦争を誘発して 地球上の国を解体して一旦(いったん)リセット…。

 ポストアポカリプスの状態にして ナオキを中心とした新世界の秩序を作り、その過程で新しい社会システムを押し付けるのが良いと言っていた。

 もちろん、実行には移さなかったが、この世界の状況を見て見ると、一定の理解が出来てしまう。

 が、それでも私は認める訳には いかない…今後も対立は するとしても上手く付き合っていく必要があるだろう。

「本当に後30年ちょいで滅びる国だってのに…」

 まぁ先伸ばし体質の この国は 知っていても、知らない事になっているのだけど…。

 私は そう思いながらパソコンの画面を見て仕事を再開した。

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