27 (力の前では法は無意味)
翌日 夜…。
ミハル警備、社内寮…3階大浴場…。
オレとグローリー、ユキナ、ミハルのミハル警備組、リッカに岸島の冬月組の6人が 脱衣所にで服を脱いで、風呂場に行き、昨日の戦闘で出来た汚れをしっかりと落として行く。
風呂場は、かなり広く、天井には 湯気にレーザーを当てて映像を表示している立体スクリーンが 綺麗な夜空を映し出し、壁には 大きなマジックミラーを使った窓ガラスが はめられており、一体を見渡せる。
「はあああ…」
「やっぱり大きい風呂は良いですね。」
「理由が無いと皆、自室のシャワーだけで済ましちまうからな…」
「…………。」
ユキナ、グローリー、ミハルと湯船に入り、少し間をあけて オレも入る。
「おお勃ってる勃ってる…健全、健全…。」
「うるさいな…と言うか、皆は混浴で良いのかよ」
オレを からかうユキナに股間を手で隠しながらオレが言う。
「アタシは男社会にいた元自衛官だからな。
流石に、風呂まで一緒って事は 無かったけど…。
それに アタシのガタイの良い身体で 勃ってくれるなんて、むしろ嬉しいね。」
肩幅が広く、筋肉が引き締まった太い腕…豊満なバストと 引き締められたくびれ、それにシックスパックの腹筋…確かに、需要は低そうだ。
「グローリーは?」
グローリーも普通に勃ってるが、堂々と入っている。
「僕は そういう店に慣れてますので…」
「はぁ…ミハルは?」
「私は義体のお陰で 若く見えるけど、もうオバサンだよ。
それに トニー王国は混浴文化だし、普通に慣れている。」
「私は混浴なんて初めて何ですけど…そう言った方面の店も運営してますし…。
純情とは程遠いですね。」
ユキナとは正反対の小ぶりの胸に細い身体を持つリッカが入って来る。
「岸島は?」
「私は お2人のオムツを取り替えさせて貰った事もある位、歳を取っていますからね。」
岸島も入って来る。
「ナオも今の内に恋愛しておけよ。
20を越えると仕事が生活の中心になって途端に出会いが減る。
一番良いのは 学生結婚なんだけど…」
「恋愛か…オレは母親の事もあって、する気に なれないな。」
「30になってから後悔する事になるぞ…。」
「そうなのか…」
「あっそうだ…リッカ…この後、5000万返す」
「えっ良いのですか?」
「ああ…元々、こっちに死人が出た時用の保険だったからな。
全員が無事に生還出来たし、運用資金に当ててくれ」
「助かります。」
「後は…竹島から持って来て、使って無かった新装備のテスト。
それに、ある程度 出来る様になったナオを鍛えて磨かないと…。
あ~ユキナは 大型免許の限定解除だよな。」
「そう…多分、合格 出来ると思うけど…」
「ユキナって大型免許 持っていたのか…」
オレはユキナの方を向いて言う。
「ああ…ただし『自衛隊車両に限る』が入っているんだけどな。
それを民間の車両でも扱るように するって訳…」
「なるほど自衛隊で免許を取ったのか」
「ナオもせめて、自動車免許は 持ってほしいだけど…年齢制限で引っかかるからな。」
「じゃあ グローリーは?」
「僕は ライフル射撃の大会に出るから、少しサボり気味になりますかね…。」
「ライフル射撃ね…じいさんも やっていたけど、免許 取り消されちまったからな」
「如何して取り消されたんですか?
あれ、そうそう取り消されるものじゃあ…」
「町中に熊が現れて、女の子が襲われる中、じいさんが 長距離狙撃で熊の頭をブチ抜いたんだけど…弾が後ろの建造物に当たっちゃってね。
後、距離的に女の子に当たる可能性があったのに、発砲したのが問題になった。
つまり、法律的には 撃たずに 熊に女の子を喰い殺させるのが正しかったんだけど、それを無視して助けたから、ライフルの所持が禁止された。」
あの時、じいさんは間違いなく正義だった…だけど、日本の法律がそれを許さなかった。
「まぁ…この国の銃規制から考えると そうなりますよね…。」
「日本の銃規制は 年々厄介になっているから、合法に所持すれば するほど、大きな制約と弱い銃を持たされて、法律ガン無視でAKを所持している敵に撃ち殺される。
そもそも 日本の銃は 狩猟が目的で、自衛の為に人を撃ち殺したら免許取り消しだろうしな…。」
日本で人を撃ち殺すには、公安委員会が担当している ボディーガード用の特例処置を受ける必要がある。
ただ、これを取得するには、公安委員会とのコネがあり、尚且つ銃を使う理由がある会社じゃないといけない…つまり、武装警備員に限られ、民間人が自衛の為に銃を使う事は違法となる。
「殺される事が正しい法律に意味なんてあるのか?」
「意味ないね…法律は正義じゃなくて それぞれの利害で 造られるから…。
だけど、法律を守る事で 少なくとも正当性は得られる。
私達がやっている事は、本質的には テロリストと大差ないからな。
違うのは後ろ盾の組織があるか、ないかだな…そもそも、私に法律が通じるか怪しいし…」
ミハルが言う。
「?如何言う事だ?」
「そうだな…この国では、警察が犯罪者を捕まえに来て、逮捕されて 裁判所で裁判をして刑期を決めて 刑務所に送る…最高刑は絞首刑…ここまでは 分かるよな?」
「ああ…」
「だけど全身義体の私の場合、そもそも捕まえに来た警察を簡単に殴り殺せちまうから、罪状が増え続けても大前提、警察に捕まえられない訳。
しかも、私は首が丈夫だから 仮に絞首刑にされても十分に自重を支えて生き残れる。
そして、刑を執行し終わったら私は 釈放だな。
ナオも機動隊を皆殺しにする腕がある訳だから、この最初の条件を満たしている。
例え 非合法な手段であっても、法執行機関以上の力や権力、金を持ってしまえば、法律を無意味に出来る。
最後に信じられるのは 自分の中のルール…良心って事になるかな。」
ミハルは星が輝く 満天の空を映し出している天井を見る。
オレは法律は絶対だと思っていた。
法律を守っていられれば、問題無いと…でも、世の中はこうも理不尽で…
法律を守らない事が正義となる…。
成り行きで拾って貰った会社だったけど…ここなら良い仕事が出来そうだ。




