表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/53

26 (武力外交)

 エアトラ機内…。

 シートベルトを外したナオ(オレ)達は、リュックを背負う。

 ワイヤーの先端が足を掛けられる△になっている巻き取り機 2本が後部ハッチに取り付けられており、ワイヤーをタイヤで(はさ)んで、落下速度を減速させるザイルと取り付け、それぞれのベルトに固定する。

 ドラムであるユイは△の先端を腕で(つか)んで降下だ。

 ちなみに機長で あるはずのミハルも、背中に赤い十字架がプリントされた白衣を身にまとい、白い医療品が入った リックを前に下げ、ザイルを取り付ける。

「ハッチ開け…コパイ、カウント…。

 そんじゃあ、後は任せたぞ…。」

「ええ…機体は大丈夫です…ちゃんと緊急着陸させます。」

 武装警備員の1人が そう言い、2人が機長席と副操縦士席に座る。

 操縦は コパイに任せれば、安全に着陸してくれる。

 ハッチが開き、地面が高速で流れて行く…。

『カウント30…20…10…9…8…7…6…5…4…3…2…1…0』

「行くぞ!!」

 オレが気合を入れて、機内から飛び降りる…。

 隣ではユイがワイヤーの先端を(つか)んで降りている。

 ザイルを強く握りしめてワイヤーとの摩擦(まさつ)を増加させて減速させ、リュックと尻クッションがある背中から地面に落ち、速やかにザイルとリックを外して、階段へ繋がる建物の 出入り口のドアにウージーマシンピストルを向けてリュックを簡易バイポットにして伏せる。

 ユイは 巻き取り機が回転して伸びて行くワイヤーの先端を(つか)み、吊り下げ状態で地面に着地。

 その後 ユイは 自分の体重を使って、ワイヤーを安定させる(おもり)となる。

 2番手はユキナとミハル…見事な足からの着地で最短でザイルを外し、屋上の建物の(かげ)に隠れる。

 最後の3番は リッカを背負ったタンデム状態の岸島(きしじま)とグローリーが時間を掛けて安全に降りて来る。

 全員が着地と同時にユイがワイヤーから手を放して、巻き取り機によりワイヤーが巻き取られて行き、スペトラは高度を上げながらハッチを閉鎖…。

 武装警備員を2人乗せて 緊急着陸地点に向かう。

「こちら、エアトラ ミハル機…緊急着陸に成功…。

 乗員は 全員無事…救助の必要は ない…。

 今 エアートラック社のエンジェニアが遠隔(えんかく)で原因を特定中…現場を荒らさないでくれ…。

 復旧の目途(めど)が付いたら また連絡する…以上。」

 ミハルが、エアトラを中継して 管制官に緊急着陸の連絡を入れる。

「よしっナオ以外のバックパックは ここに集めろ!!」

 次の瞬間…屋上のドアが開かれる…バババ…。

 オレは ウージーマシンピストルで、ドアを開いた敵を撃つ。

 続いて階段を上がり、頭が見えた男に撃ち込む…。

 オレが階段を狙いながら 立ち上がり、敵がいない事を確認…建物に近づく。

「クリア…。」

「よし、ユイが先頭、次、ナオ、グローリー…最後、私。

 行くよ…。」

 ユキナが指示をし、突入を開始する。

 ユイは 脚4本で支えられていた身体を後ろ脚2本で支えてバランスを取り、ライオットシールドを構えつつ ゆっくりと降りて行く。

 ドラムの弱点は階段に弱い事だ…。

 とは言え、盾役が前にいるお(かげ)て、オレ達は 安心して前に進める。

 オレがフラッシュバンを階段下に投げ込み、激しい閃光が敵の目を一時的に殺す。

 パニックを起こして敵が撃ってこない事を確認しつつ、ユイを盾にして グローリーと一緒に突入する。

 階段には 敵はおらず、3階の廊下…ッ…ヘルメットにボディマートを来た敵4人が こちらを向いている…銃は まだ構えていない。

 とっさにオレは銃を向けて撃とうとするが、ユイが盾になっているせいで、射線が確保出来ない…。

 向こうは こちらに気付いて銃を構え始めた。

「くっそ…邪魔だ」

 ユイは オレのウージーマシンピストルから放たれるレーザーが自分に当たり、射線が確保 出来ないと瞬時に判断して、左にべったりと寄る。

「よし」

 一瞬遅れて、ユイの(かげ)から ウージーマシンピストルからゴム弾が放たれる…全員、装甲が付けられない股間にヒット…間に合った。

 4人は股間を押さえて悶絶(もんぜつ)している。

「3階廊下 確保!!…敵の数が 少ないな…。

 部屋に 立てこもっている可能性があり」

「ユイとグローリーは、武器庫…。

 ナオと私は 他の部屋の制圧」

 オレは壁に水平になる様にして 左手でアミュレット リボルバーを取り出し、跳弾を防ぐ形で 45口径スーパー弾で蝶番(ちょうつがい)を破壊する…。

 その瞬間…部屋の中からのフルオート射撃が始まり、木製のドアが ズタズタになる。

「ぐあっ…。」

 そのライフル弾は 向かい側のドアを突き破り、部屋の中にいる敵に被弾し、向かい側からのフルオート射撃…。

 こういう時にライフル弾の貫通力の高さが裏目に出て来る。

 双方の敵が狙っている部分は 人の胴体(どうたい)部分で、床から100~120cm…。

 オレとユキナは 互いに フラッシュバンを双方の部屋の天井に向けて投げる。

 フラッシュバンが敵に撃たれる事が無く、天井に辿(たど)り着き、閃光…ユキナを見る…左手でのハンドサインだ。

 手の指を広げた5…カウントダウン…突入タイミングだ。

 4、3、2、1…突入!!

 目がくらんで混乱した敵の股間を正確に撃つ…2人を無力化…。

 だが、最後の1人は 机にへばりつく形で銃を構えている為、下半身が隠れて狙えない。

 とっさにオレは 敵の頭に狙いを付けてゴム弾を撃ち込み、敵は脳振盪(のうしんとう)で倒れる。

「よし、クリア…。」

「ちっ…銃を撃たれた」パン…「よし弾は まだ出る…次、行くぞ」

 オレとユキナは、廊下を警戒しつつ次の部屋に向かう。


 グローリー()とユイが武器庫に突入…。

 ユイがシールドを構えて 僕が蝶番(ちょうつがい)を破壊した瞬間…フルオート射撃が始まる。

 ユイのシールドに被弾…。

「ユイ…発砲許可…」

「了解…(*'▽')ばーん」

 ユイの気の抜けた声とは裏腹に P90を構えてゴム弾を発射…立てこもりていた4人の頭に瞬時に当てる…。

「おっと…」

 ユイを側面からの攻撃から守る為、廊下を警戒してた僕は下の階からやって来た敵をゴム弾で撃つ…。

 腹部の横隔膜(おうかくまく)辺りに命中し、呼吸困難になる。

 フラッシュバンで次々と部屋を制圧している ナオ達がやって来る…が。

「あっ止めっ…。」

 ナオの銃から放たれたゴム弾が 階段から上がって来た組員さんの股間にゴム弾ヒット…股間を押さえて悶絶(もんぜつ)して倒れる。

「あちゃあ…。

 そっちは?敵は?」

 上がって来た組員さんに聞く。

「負傷者…3…いや…4名…全員 拘束(こうそく)…死者0…。」

「OK…こっちも頼む…片付いた。」

「了解…。

 それにしても、フレンドリーファイヤーか…。」

「すまん…頭では分かって いたんだけど、指が止まってくれなかった。」

 ナオは 銃を抜いてから 撃つまでが非常に早く、その予備動作は事前に脳から身体へ先行入力され、味方だと 知覚して行動のキャンセルを脳から流したとしても、指がキャンセル出来ずに撃ってしまう。

 スピードシューティングをやっている経験者なら誰でも起こる問題で、これを無理やりキャンセルすると 身体と脳の命令がぶつかり、一時的な思考停止状態になり、行動不能になる。

 これは 歩行者がトラックに()かれる寸前(すんぜん)に動けなくなる現象と同じ…まぁ人間版のフレーム問題だ。

「まぁ分かるけど…とりあえず お疲れ…。」

「お疲れ…。」

「さて…負傷者はいるか?

 敵味方関係なく治療するよ~。

 ヤバそうなのから 持って来て…。」

 戦闘が終わった所で 銃を構えたミハルが 治療用のリックを持ってやって来て 一番ヤバそうな 同士討ちで負傷した敵の前に行く。


「何で 敵のオレを助ける?」

 同士討ちで腹を撃ち抜かれたマフィアがミハル()に言う。

「何でって…アンタ負傷者だろう…。

 負傷者は治療する…それ以外に理由が必要か?」

 受けた弾は2発…1発目は防弾チョッキで身体への進入は防がれ、腹部に1発貫通している。

 臓器は無事だし、出血量も少ない…。

 胸と腹に弾を受けて とっさに()せたんだな…。

 昇圧薬(ミドドリン)は 打たなくても大丈夫だろう。

 私は薄手のゴム手袋をはめて、患者に鎮痛剤(モルヒネ)を打ちこみ、止血した後 傷口を皮膚の内側から糸で手早く縫合(ほうごう)して行く。

 負傷者が山ほどいる戦場なら、ステイプラー(ホッチキス)で止めちまうのが一番早いんだが、傷の(あと)が残り(やす)い。

 味方の被害も皮膚を銃弾が(かす)った程度の出血で、胸の防弾チョッキに当たった人もいるが、直接 弾で()かれた人はいなく、傷口に消毒液を掛けてガーゼで傷口を(ふさ)ぎ、テーピングで止める 最低限の応急処置は出来ている…。

「はい…よし、これでOK…。

 表の病院に行けないなら 私の診療所に来な。

 無料(タダ)で面倒をみてやるから…。

 後は…熱が出て来たらコイツを飲め…抗生物質だ。

 使った場合、症状が治まっても薬は 全部 飲み続けろ…絶対だ。

 1匹でも身体に残られて抗生物質に耐性を付けられたら、医療業界全体で面倒な事になるからな」

 私は強く念を押す。

「……ありがとうございます。」

「どーも、はい次…。」


「起きた様ですね…。」

 上半身裸で 腕にガーゼとテーピングで応急処置をされ、腕を後ろで 縛ばられ、額にはアザが出来ているアンドレイにリッカ()が言う。

 私の隣にいる岸島(きしじま)M870(ハナマル)ショットガンを持ち、何か私に危害を加えれば 即射殺出来るようにしている。

「あ゛~オレの仲間達は?」

「全員無事です…ゴム弾で無力化しました。」

「……殺した方がラクだったろうに…。」

 アンドレイが周りを見て言う。

「ええ…でも そうするとアナタ達は 損得無しで報復を選ぶでしょう。

 プライドだけの泥仕合(どろじあい)は 双方に金と人を消耗するだけで、メリットはありません。

 今回は こちらの戦力を見せつける事。

 交渉のテーブルに着かせる為に…。」

「はは…完全にオレの負けだな…それで何が望みだ?

 オレに何をやらせたい?」

「私が望むのは 互いに利益を得られる管理された共存…。

 現状 私達には中国マフィアを倒す 戦力はありません。

 彼らと交渉するには 更なる力と組織力が必要です。」

「オレ達と同盟を組もうと言うのか…。」

「ええ…それが一番、この国の平和に繋がると私は考えています。」

「残念だが、ここまで やられた時点で、オレはボスに殺される。」

「そうですか…なら、そのボスへの仲介を頼みます。

 私が直接 話を付けますので…。

 今、この事務所の書類やパソコンを根こそぎ、運んでいますからね…。」

 引っ越し業者の様に騒がしく、荷物をトラックに積み荷行っている組員を見て言う。

「それをネタに交渉する気か……まぁ良いだろう。

 出来るならだが…。」

「それでは…後で連絡を入れます。

 皆さん…そろそろ警察が来ます。

 撤収(てっしゅう)しますよ。」

「はい!!」

 私達は速やかに車に乗り、それぞれの車が事前に決めたあったルートに散らばり、警察に見つかる事無く、一般車に紛れて逃げる。


「警察です…。」

 誰かが通報したのだろう…警官達が乗り込んで来る。

 この国の警察の対応能力だと、戦闘中に警察が来ても不自然(おか)しく無いんだが、装備が リボルバー1丁なので、戦闘が終わった所で来たのだろう。

 ん…警察の手に握られている銃は…ウージーマシンピストル?

 あ~警察が 治安が悪い地域を優先して オートマチックピストルが配備されるとは聞いていたが…遂に導入されたのか…。

 見た所 銃のセレクターは アタレのレの部分にストッパーが取り付けられ、フルオート機能が封印されているタイプだ。

 確か、セミオートタイプが『10式けん銃』。

 フルオート解除版が『10式機関けん銃』だったか…。

「あ~やっと来てくれたか…。

 見てくれ…この通り()()に入られた。」

 アンドレイ(オレ)が言う。

「強盗ですか…そこの銃は?」

 警察官は荒らされた部屋に転がる銃を見てオレに言う。

「奴らが捨ててった。

 使い終わった銃は足が付かない様に捨てるのが基本だ。」

 銃から放たれた弾丸は、線状痕(せんじょうこん)と言う銃弾の指紋を残し、これを調べる事で 使われた銃のバレルが分かる。

 なので、現場に銃を捨てて 身軽になって逃げる事も普通にある。

「はぁ…確かに…。」

 警察は こちらの事情を正確に理解して、はぁ…と ため息をつく。

「取り合えず、銃は 証拠として回収します。

 あなたには 任意同行をお願いします。」

「分かったよ…。

 オイ…後は任せた…少し行って来る」

 オレはロシア語で部下に言い、手錠を掛けられず、警官に挟まれる形で後部座席に乗り、パトカーが走り出す。

 そう言えば…アイツ…リッカは ボスと交渉するとか言ってたが、オレのボスは ロシア特殊任務部隊(スペツナズ)だぞ…。

「全く如何(どう)なる事やら…。」

「何か?」

 ロシア語で つぶやいたオレは「いいや…何でも。」と日本語で答え、オレを乗せたパトカーは警察署に向かって行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ