16 (武装 警備会社)
12:30分ごろ…。
昼休みに入って オレは 敷地を出て 外に食べに行く…
近くにはコンビニ、うどん屋、牛丼屋、ハンバーガー屋があり、近くの高校の学生達も利用している。
ただ片道 200m~300mなので、昼休みの限られた時間内で 徒歩で往復するには 少し時間が掛かる。
その為、従業員は 主に自家用車を使って 1km先の大型 ショッピングモールに行く人もいて、そこに行けば 大抵の娯楽や料理を楽しめるので 立地条件は 非常に良い。
ミハルが オレに原付の免許を取らせたのも こう言った理由だろう。
オレは うどん屋に行くが、駐車場には 黒塗りの高級車が3台止まっていて、中に入ると ガタイの良い ゴツイ スーツ姿の人達が9人と20歳前後のお姉さん1人が うどんを すすっているシュールな光景が起きている。
そして その雰囲気の為か、普段いる はずの学生達が一切見当たらず、営業妨害になって仕舞っている。
オレは 今までの訓練から来る自信からか、思いの外 冷静に食事を取り、食事を先に終えた黒服達は 車に乗って何処かに行った。
さて、店を出て 腹ごなしに歩きつつ 会社に戻るが、敷地から少し離れた道路に6台の黒塗り高級車が待機している。
それを見るとオレは 自然な動作で 歩きスマホをしながら、ミハルに電話を掛ける。
『はい?如何した?』
「今、敷地の外にヤクザ風のヤツが待機しているんだが…。
台数は6台…1台に付き 5人なら30人…4人想定なら24人。
何か、カチコミされる理由でもあるのか?」
カチコミなら 今すぐ会社に戻って、銃で武装してヤクザの襲撃に備える必要がある。
この人数なら 十分に撃退出来るだろう。
『まぁ私ん所も法律通しているとは言え、実質 暴力団だからね…。
仕掛けられる理由も それなりにある。
とは言え、多分 武装警備会社の冬月さん達だよな…。
定期訓練は まだのはず だけど…』
「武装警備会社?確かに縄張り守ってそうだけど…。
危険性は無いって事で良いのか?」
『ああ…多分、こっちの昼休みが終わる 1時を待ってるんだろう…マトイに確認を取ってみる。
それじゃあ 命令、取りあえずの危険性は無し、通常通り 昼休みを過ごして良い。
昼休み後は 通常通り ユキナ達とトレーニング。
ただ、向こうの出方次第で 予定を変更する可能性あり、以上。』
「分かった。」
オレがそう答えて電話をきると会社に向けて歩き始めた。
ただ、電話を掛けて 移動速度が落ちたのが 行けなかった。
会社の門に行く前に 後ろから黒塗りの高級車が低速でやって来て 人用の門のドアを開ける所で、1時になり 呼び止められた。
「お兄さん、ミハル警備の人かい?」
車から出て来たのは 30過ぎの 強面で屈強な おじさんで、顔や服装は完全にヤクザだが 口調に圧が無い。
「ええ…お客さんですか?」
「そうです…。
自分達は冬月組の者です。
部下達の定期訓練と仕事の依頼を…取り次いで貰えますでしょうか?」
ハルミが想定していた武装警備会社だ。
「取り次ぎは、社長のミハルで?」
「ええ…」
「お待ちよ」
オレはスマホで ミハルに電話を掛ける。
『はい…今度は如何した?』
「不測の事態が発生…対応を求める。
門の前で 冬月組のお客さんにミハルへの取り次ぎを頼まれた。
お客さんの要件は 部下の定期訓練と仕事の依頼との事…。
ユキナ達とトレーニングが出来なくなった…指示をこう。」
『門を開けて 車を駐車場に入れて…。
代表者には 応接室に来るようにと言えば、大丈夫…場所、知ってるから…。
ナオは お客さんを連れて銃砲店へ…。』
「了解した。
許可が出ました。
代表者の方は 応接室に来るようにと…。
銃砲店に行く方は私と…。
今、門を開けます…手伝って貰えます?」
「感謝します…オイ」
「ハッ」
舎弟さん達と一緒に門を開けて車を中に入れる。
駐車場に綺麗に車が並び、1台に付き4人のヤクザの皆さんが降りて来る。
真ん中に守られる形で止められた 車の運転席から降りて来たのは、オレに話しかけて来たおじさん…。
そのおじさんが 後部座席のドアが開けて、中から20歳前後のお姉さんが出て来る…あっうどんを食べていた人だ。
ヤクザの皆さんが道を作り、頭を深く下げる…対応からして、この人が代表見たいだ。
オレは15度の会釈で対応する。
「冬月組の若頭…冬月六花です。」
頭は下げない…若頭…か。
組長の1つ下の階級だから、副社長と言った所か…。
「ミハル警備の新人、神崎 直人です。
代表者の方は 応接室にへと…場所は 知っているとの事ですが…。」
「ええ、大丈夫です。」
「定期訓練の方は 私と共に銃砲店へ…。」
「分かりました…聞いてましたね…。」
「はい!!」
組員の皆さんは 若頭とおじさんの2名と定期訓練組20名に分かれ、オレの前に綺麗に整列する。
その光景は まるで軍隊の様で、見た目を除けば ヤクザに見えない。
ミハルが武装警備会社って言ったのは こういう事か…。
「はい…それでは 行きます…付いて来て下さい。」
20名の皆さんと地下の的射銃砲店に続く 防弾ガラス扉の前に来た所で、組員達はスーツの中に手を突っ込み、銃を抜き 初弾を装填する…。
くっそ、偽装か…。
ナオは 即座に防弾ガラスの扉を開けて、飛び込み ドアを盾にする形で姿勢を低くして 背中を向けて押し込み、ドアを閉じた。
「どないしたん?」
的射銃砲店の受付の椅子に座るマトイが こちらを見て言う。
「マトイ敵襲だ…ヤツら銃を抜いて来やがった。
とっととオレの銃を出せ!攻め込んでくるぞ…。」
オレは財布に繋がっているロッカーキーを外してマトイに投げる。
訓練と偽って 銃砲店の中に入り、一番 厄介な銃砲店を制圧する事で、こちらに銃を預けているオレ達の戦力を すべて無力化する事が出来、尚且つ向こうは、大量の武器が手に入る。
くっそ…思いの外 真面だったから油断した。
応接室いるミハルが心配だ。
若頭と その護衛がミハルを殺しに行ってるだろう…。
さて…如何する?
「あほう…銃を抜くんはぁ当たり前やぁ…。」
「おい…撃たれるぞ」
マトイが堂々と防弾ガラスのドアの前に出る。
防弾ガラスとは言え、何発も同じ箇所に撃ち込めば貫通する。
「さてぇすまんねぇ…マガジンとぉ銃を見せぇて順々に入りぃ。
はいOK…OK…OK…OK……」
次々と片手に銃を、もう片手にマガジンを持った 組員が中に入って来る。
「さて、代表者はぁ?」
「自分です。」
「ほな…ここに記入をお願いしますぅ
レンジは1番から6番まで、弾は後で 持って来ますぅ…。
順番に撃っててぇ下さいぃ…。
それと、その子 銃口を向けられるのにぃ敏感なんですぅ…。
下手すると殺されますよぉ…。」
「まさか…こんな子供が?」
「『習志野 中学 立てこもり事件』知りません?
この子 1日ぃで205人もキルした人ですからぁ…。」
「……ほんと、ミハル社長は良い人材を揃える…。」
「優秀でもぉ面倒な子がぁ多いんやけどなぁ…。」
「自分の所もそうです。
よし、1番から6番だ…行け!」
「はい!!」
それぞれが、シューティングレンジに付く…。
「それでは 自分も…。」
代表者が マトイに会釈をして シューティングレンジに向かって行った。
「如何言う事?」
オレがマトイに行く。
「レンジのルールぅ!…銃はぁ 撃つまでぇセーフティを掛けてぇ マガジンはぁレンジに入るまでぇ抜いておくぅ…。
アイツらは 初弾装填済みぃのガバメントのマガジンを抜いて、銃のスライドぉ引いて初弾を排莢したんやぁ。
だけど それをオマエはぁ初弾を装填したと思ったんやなぁ。
あ~危なぁい、危なぁい。
ほな…鍵、返すでぇ…。」
マトイがオレが投げた鍵を渡す。
「とは言ってもセキュリティ的に問題だろう…。
もし、ここが占拠されたら 対処の仕様が無くなるぞ…。」
「一応、警察に連絡される警報装置とぉ…入り口ぃのドアの遠隔でのロック機能があるぅ。
後、お得意さんはぁ素行調査もぉしてるぅ…。
ただ、セキュリティ的ぃにはぁ こん位ぃが限界。
如何やってもプラスチック爆薬なんか 使われればぁ 簡単に抜かれるからなぁ…コストにぃ見合わない~」
「そっか…コストか…。
あっそれで…定期訓練ってのは?」
「ああ…冬月組は 半年に1回…射撃練習ぅに来るぅ。
昔ぃはぁ 銃を持っててもぉ撃った事が無いぃ奴が多かったんやが…今は撃つ機会もぉ多くなってるかんなぁ~」
「半年に1回ね…効果あるのか?」
組員は皆、足を軽く広げ、両腕でガバメントをしっかり持って真っすぐ構えて撃っている。
射撃スピードも遅いし、実戦向きではないが、取りあえず10m先の的には全弾当たる感じだ。
「もっと腰を落とさないと 早く撃てないだろうに…。」
「皆がやってんのぉは 基本の撃ち方やぁ…。
それを 数の連係と立ち回り方でぇカバーするぅ」
「連係ね…」
「ナオ…やってみるか?
CQBで…向こうも 車の中にぃガバメントのガスガン入れてるぅだろうしぃ」
「ウージーマシンピストルのガスガンでか…。」
「そっ…。
向こうも ガスガンでの連係は 結構やってるみたいやからな…。
良い訓練になるんじゃないか?
双方に…。」
「分かった…。」
マトイは 奥から黄色いテープを張られたウージーマシンピストルとマガジンを6本 持って来る。
多分、実銃とガスガンが混ざらない様にだろう。
「それじゃあ…オレは CQBの訓練室に行ってるから…。」
「分かった…伝えておくぅ」
オレが そ言いマトイが答えると防弾ガラスの出入り口のドアを開けて、CQBの訓練室に向かった。




