15 (雪那 新兵訓練施設-ユキナ ブートキャンプ-)
トレーニングルーム…。
「ハイ、1・2・1・2」
軽快なBGMを流しながら ユキナが手を叩きながら左右にステップを踏み、ナオとグローリーが真似をしながらステップを踏んで行く。
「さぁユキナの新兵訓練施設にようこそ、今日はステップの基本中の基本だ。
準備は良いか?」
「「OK」」
「声が小さい!!」
「「OK~!!」」
「よ~し、クソ新兵にしては良い声だ。」
ユキナが左右のステップに肩を広げ、手を目一杯に広げ、次に中央で手を叩く。
その繰り返し…。
「オイ…手を降ろさない、全身に血を巡らせろ!!」
「具体的に如何やってぇ?」
オレが意味不明な指示に言う。
「身体を目一杯動かせって事だ。」
グローリーが言う。
「もうやってるよ~了解~」
「ハイ、1・2・1・2…声出して~」
「「1・2・1・2!!」」
「よ~し新兵ども良いぞ…次は これだぁ」
ユキナは、足を開いて身体を折り、リズム良く 両手を足の指先まで持って行き、身体を起こして腰に手を当てる。
その繰り返し…。
「ハイ、1・2・1・2…声出して~」
「「1・2・1・2!!」」
これを12セット…太もも 辺りが伸ばされ、腹筋に力が入る。
「膝を曲げて…次はスクワット行くぞ…。
手はしっかり、真っすぐに伸ばして…行くぞ、ハイ1・2・1・2!!」
膝を曲げて手を前に出すスクワット姿勢から、腰に手を当てる基本ポーズをし、またスクワット状態に戻る…これを12回。
「次、そのままでジョギング、膝を高く上げて~ハイ1・2・1・2」
「「1・2・1・2!!」」
「この訓練で貴様達は 敵と闘う為の身体を手に入れられる。
気合を入れて行け!!」
「気合ってどう入れるのおおお」
「一生懸命やれって事…」
グローリーが言う。
「もう、やってるよ~」
「ハイ次」
次のポーズは 片足はしゃがみ、もう片方の足を目一杯まで開いて、手は床と天井に向けて広げる。
うわっキツくなってきた…。
「ハイ1・2・1・2~」
「「1・2・1・2!!」」
「さあて、次は軍隊の基本、腕立て伏せ…。
これが出来れば、懲罰をいくら受けても へっちゃらだ~。
ハイ1・2・1・2~。」
「「1・2・1・2!!」」
「ハイ次~」
両足を名一杯 広げて足首を掴む…あっ…キクッ。
その 次のポーズはさっきと反対、片足はしゃがみ、もう片方の足を名一杯まで開いて、手は床と天井に向けて広げる。
やっぱり キツイな~。
「ハイ1・2・1・2~。」
「「1・2・1・2!!」」
「ハイ、手の疲れは取れたかな~腕立て もう一回 行って見よう~。
ハイ1・2・1・2~。」
「「1・2・1・2!!」」
……………。
……。
…。
それから1時間。
「よ~しクソ新兵ども…よ~く付いて来れた。
基本プログラムは ここまで、昼食後、午後から応用を行くぞ…お疲れ様。」
「本当にお疲れ様~アウッ」
オレは そのまま 倒れ込んだ。
「はぁ…エンドレス自衛隊体操より、数段キツイ…。
ユキナは元自衛官だろ…何で海兵式?」
ユキナが トレーニングルーム横の冷蔵庫に常備されているスポーツドリンクを3本持って来て、オレとグローリーが 受け取った所で言う。
「そりゃあ…これは ミハルから教わったからさ…。」
「ミハルは 元海兵だったのか~。」
軍経験者だとは思っていたが、まさか海兵隊出身だとは…。
3人はスポーツドリンクを一気に飲む。
「そっ、全身義体になる前まではな…その後 トニー王国軍で、今は退役してフリー。
私とは 自衛隊の体験入隊ツアーで、私が教官になった事がキッカケだな…。
現役 自衛官 顔負けで 非常に優秀だったんだけど、訓練中に身体のバッテリーが切れちまってな…あの時は私もビビった。
ミハルは 優秀でも電源が確保出来ない 山の中だと極端に弱くなる。
最前線だと電気の調達は難しいし、インフラ系は真っ先に狙われるからな…。」
「ぷふぁ…と言う事は 最強のドラムも、インフラに依存しているって事か…。」
「そう言う事…。
実際 陸戦最強のドラムでも、電源と通信インフラが確保出来無い所には展開出来ないって言う 大きな欠点を持ってる。」
「なるほど…結局、最後は生身って事か~。」
「そっ」
パタパタパタパタッ。
いきなり空から細かい破裂音の様な音が聞こえて来る。
アレはエアトラのプロペラ音だ。
「ミハルが戻って来たみたいだな…。
よし、迎えに行くか~。」
一息付いたグローリーが立ち上がり、トレーニングルーム横の階段に向かう。
「オレも行く」「私も…。」
グローリーの後に続き、オレ達は屋上へと階段を上って行った。
ナオ達は 階段から屋上に繋がる建物の窓から外を確認する。
この屋上の建物は ヘリポートの退避場所になっていて、離陸と着陸時にはヘリポートに入る事は出来ない。
屋上には 転落防止用のフェンスも無く、オレ達がいる建物以外に遮る物が一切無い。
床や建物の壁は 全面 耐熱 耐火性のパネルで覆われており、エアトラの芝を焦がして 火災になる程度の排気熱から建物を守っている。
屋上のあちこちの スピーカーからは エアトラの音と真逆の音が大音量で放たれており、その音をぶつける事で、騒音を大幅軽減させる『アクティブ騒音低減システム』が屋上には搭載されている。
これも近隣への騒音対策だ。
エアトラの大きさ的には 狭く感じる屋上ヘリポートのHマークに正確に着地し、すぐにエンジンを切ってプロペラの回転を止める。
後部ハッチが開き、ミハルが降りて来た所でオレ達もドアを開けてヘリポートに出る。
「おかえり、健康診断は?」
「問題無し…色々、貰って来たぞ…。
また命を掛けた実戦テストだ。
運ぶのを手伝ってくれ…。」
「分かった。」
そう言うとオレ達はエアトラから荷物を台車に降ろし、エレベーターで下に運んで行った。




