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13 (戦闘糧食-レーション-)

 翌日…6:10分…。

「ふぁーおはよう…。」

「おはよう」「おはよ」…。

 ナオ(オレ)が起きて身支度を整えて部屋のドアを開けると同じくドアを開けた グローリーとユキナに会う。

 皆が 6時にアラームをセットしているので、出てくる時間も大体が同じになる。

 ただ、マトイは 目覚めが悪く、いつもユキナが掃除機を かけ始めてからやっと出てくる。

「あれ?ミハルは?」

 ユキナがキッチンを見て ミハルが まだ起きていない事に気付く。

「昨日の夕方にエアトラで竹島に出て行っただろ…。

 健康診断も受けて 帰って来るのは昼過ぎ」

 昨日の夕方6時位に会社から飛び立ち、1時間半位で竹島に到着。

 無事 荷物を降ろして 持ち帰る荷物を入れた所までは良いが、そのまま 戻ると会社への到着時間が 午後 8時を超えてしまう。

 騒音規制の問題で、午後8時~翌日の午前8時まで 会社には離着陸が出来ないので 竹島に泊まり、午前は ミハル専属の義体整備師の健康診断を受けている。

 何も無かったら昼前に竹島を出て、昼休み後 辺りに戻って来る予定になっている。

「あ~そっか…。

 マズイな…私にとって 栄養管理されたメシを食べられないって死活問題だからな。

 仕方ない今日は私が作るか…。」

「へぇ料理出来るんだ。」

 意外だ。

「まぁな…と言う訳で、今日の掃除は頼む。」

 ユキナは 階段下の倉庫に向かう。

「OK…。」

 オレは カーペットタイルが敷かれた廊下のごみを掃除機で吸い取って行く。

 その音で、マトイが部屋から出て来て「おはようぅ」と言って来る。

「おはよ…今日は ユキナが食事を作るんだって…。」

「あ~まだぁ帰って来てないんや もんなぁ~。

 てか、ユキナが作るんかぁ」

「もしかしてメシマズだったりする?」

「いんやぁ…まともやよ…。

 ちゃんと栄養状態が良い物ぉ出てくるぅしなぁ。」

 マトイが笑いながら言う。


「さて、作るか…。」

 ユキナ()は、寸胴鍋(すんどうなべ)に水を入れて クッキングヒーターの上に乗せて温める…。

 その間に炊飯器に無洗米と水を入れ、スイッチを入れる…米はこれでOK…。

 続いて 寸胴鍋すんどうなべの中の水が沸騰(ふっとう)して泡立ち始めた所で、大量の深緑の缶詰を投入…。

 鍋に(フタ)を閉めてヒーターをオフにする…後は米が炊きあがるまで待つだけだ。


 6:30分…朝食時間。

「はい、米出来たよ…セルフで盛って」

 掃除が終わった所で 食堂のユキナが言い、皆が集まって来る。

 ナオ(オレ)が掃除から戻ると、それぞれの茶碗が用意されていて 各自、好きな量のご飯を盛り、テーブル席に置く…。

 ただ、グローリーだけは ご飯を盛らない。

 白米だけで おかずの類は、無い…おかずは 多分 キッチンの寸胴鍋すんどうなべで調理中だ。

「そろそろ良いかな…。」

 鍋のフタを開けて 網杓子(あみじゃくし)で缶詰を上げて、布巾(ふきん)で水気を吸い取り、缶切りで手慣れた手付きで素早く缶詰を開ける。

戦闘糧食I型(イチガタ)か…」

 確かに栄養調節されていて そこそこ美味い物だ。

「はい、好きなの持って行き」

 テーブルに出された大量の缶をキッチンテーブルに置き、各自が自分の好きな缶を持って行く。

 オレは ウィンナー缶に野菜缶。

 ユキナは ハンバーグ缶に コンビーフ缶。

 マトイは マグロ缶、たくあん缶。

 グローリーは 福神漬(ふくしんづ)け缶と鳥飯缶となっている。

「それじゃあ…頂きます。」

「「頂きます」」

 ユキナが音頭を取り、オレ達は朝食を食べ始める。

「ふむ…普通に美味しい。」

 習志野の訓練で食べた以来だ。

 あの時は 現地調達がメインだったので、あまり食べる機会は無かったが、ヘトヘトの状態で 歩きながら食べるレーションは 肉体面、精神面を共に『まだやれる』と(ささ)えてくれる。


「そう言えば、これは 横流し品か?」

 食事が終わって片づけ始めた所でナオ(オレ)はユキナに聞く。

「あ~金銭的な やり取りはしていないから 横流しでは無いな…。

 賞味期限の切れた廃棄品の無償譲渡(むしょうじょうと)だ。

 向こうも 処分するにも それなりの費用が 掛かるし、何より今年で缶飯は終わりだからな…。」

「あ~戦闘糧食Ⅱ型(パック飯)?」

「そ、寮の倉庫には 結構な数があって、近くにコンビニが無い所に 行く時とかに使われているな。

 さて、ミハルがいないから、今日の予定は私がやる。

 マトイ…ナオの銃は?」

「映像の解析をした所ぉ、2点問題が発生したぁ…。

 調整に長くてぇ2時間…CQB用のガスガンも もう出来るぅけど調整はまだ。

 ナオには 9時に来て欲しいぃ

 後ぉ…午後からぁ他の武装警備会社ぁのお客が定期訓練でぇ 撃ちぃに来るぅ…。」

 お茶をすすっているマトイが言う。

「OK…それじゃあ、ナオは9時にマトイの所へ…。

 終わったらトレーニングルームで私達と体力練成。

 午後は 何か言われなかったら同じく体力練成だな。

 グローリーは私と朝からな。」

「OK…分かった。」

「何か働いている気がしないな…。」

「実戦に(そな)えるのも十分に仕事だよ。

 比較的、安全な武装警備とは違って、私達は 危ない案件がメインだから、金と時間を掛けて身体を鍛えるんだ。

 戦闘が高度化しているとは言え、最後は 基礎体力と精神力だからな。」

「そう言う物か…了解」

「それじゃあ、私達は朝のランニングに行くぞ。」

「食後のランニングって脇腹(わきばら)が痛くなるんだよな…。」

「敵は 食後でも襲って来るからな…。

 今日は ペース配分を落としてラクに走れる速度を見つけるんだ。」

「了解」

「それじゃあ、行って来る」

「気を付けてぇな~」

 そう言い、オレ達は朝のランニングに向かった。

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