01 (小さなテロリスト)
2016年…。
「きゃああああ」
生徒が叫び、次々と教室から逃げて行く…。
ナオの足元には 死体が3つ…。
1人目は 腕を意図的に脱臼させ、一切抵抗が出来ない状態で、顔を上履きの跡が出来るまで思いっきり踏みつけ、その後、床に頭を思いっきり叩きつけて殺した死体。
1人は腕を背中で締め上げて、首の後ろにヒジを掛けながら体重を乗せて一緒に床に倒れる事で、首の骨が折れ頸椎を損傷した死体…。
1人は あごの下から鋭利なボールペンを突き刺され、脳幹が破壊された死体…。
いずれも非常にテクニカルに効率良く殺している。
民間人の皮を被るコイツらの暴力による いじめに 中学に入学した時から2年半耐えて来たオレだが、話合いによる交渉が無意味だと判断し、オレは便意兵だと判断し、敵を排除する事にした。
さて、これから如何するか…。
そんな事を考えていると窓の外から パトカーのサイレンが聞こえる。
多分、誰かが 警察に通報したのだろう…。
普段偉そうにしている 生活指導の名目の元、オレのポニテを切り落とし、オレの地毛の茶色の髪を黒で染め上げた 体育教師の生活指導教員は、オレに殺されると思ったのか真っ先に逃げ出している。
まぁ実際に この場にいたら、ついでに殺していただろう…。
警官が2名が教室に入って来る。
「うわああっ」
1人の新米警官が 教室の惨状を見て 咄嗟にリボルバーを抜き、オレに向けた。
オレは身の危険を感じたと判断して 正当防衛を行使し、警官に急接近…銃を持っている手首を締め上げて、力が入らないようにし、手からリボルバーを抜き取ると、警官の頭に2発撃ち込む…。
サクラリボルバーから放たれた.38スペシャル弾が警官の頭に命中して倒れる…。
威力の弱い弾だったからだろうか?即死は 免れたが、脳の重要器官が破壊され、ただ痙攣を繰り返すのみ…。
「ひっ…」
もう1人の中年の警官がニューナンブ M60をオレに向けるが、遅い…。
オレは残りの3発を胸に向かって撃つ…弾は警官の防弾能力が一切無い、防刃ベストを簡単に貫き、倒れる…。
肺を撃ち抜かれたのか血が肺に溜まり、次第に呼吸が出来なくなり死亡する。
やっぱり、弾の威力が弱い…3発も撃ったのに即死を取れない。
「あ~こりゃオレ殺されるな…。」
この短期間に5人を始末…3人までなら まだ服役して戻って来れる望みがあったが、5人となれば、無期懲役か絞首刑が確定だ。
「オレが信じる正義の為にオレの命を使ってみるかな…。」
どうせオレの死刑は確定だ…。
だったら死体が10人、20人増えた所で 絞首刑以上の刑が無い以上、オレの刑は変わらない。
オレの命1つで 多くの人間を巻き込んで コスパ良く死んでやる…オレはそう考えた。
学校の外の校庭では 逃げた生徒や教師とマスコミ達が集まって来ており、ナオトが 犯人が警官から銃を奪った事で、立てこもり事件になり、専門の機動隊が現場に投入され、車両がやって来る。
甚平姿のナオキは、野次馬を かき分けつつ テレビ局から来たカメラの方に向かって行く…。
「こちらは 立てこもり現場の学校です。
現在、中には 人を殺害し 警官から銃を奪って 学校内に立てこもっている犯人が います。
あっ今、機動隊の車が到着しました…人数は…6名です。」
テレビ局のアナウンサーがカメラに向かって実況放送している。
機動隊員6名が 車両から降りて、土足のまま 校内に突入して行く。
装備はP-90か…アレ 扱い難いんだよな~。
「あれ?あなたは…。」
「はい…息子がご迷惑を掛けております」
オレが わざとらしく現れ、アナウンサーとカメラの前で言う。
オレは悪い意味で有名人だ。
撮影しているカメラを見る限り、如何やら生中継している みたいだな。
てか、現場の情報を実況放送って ナオトがテレビを見ていたら、マスコミに感謝しているだろう…。
「警察からは まだ犯人の名前は公表されていませんが…息子と言うと…今回の犯人は あなたの…。」
「ええ…俺の息子ですよ…。
中3の未成年ですから名前の公表が出来ないんですよ…。」
「事件の詳しい情報を持っていますか?」
「ええ…今回の事件は 息子への いじめが原因です。
息子からは 何度か連絡を受けて、学校側にも何度も警告をしたのですが…対応しなかった みたいで…まぁ、2年半も良く持ったと言った所でしょうか…。」
俺が軽い口調で アナウンサーに ベラベラ情報を流す。
これで学校側は いじめ問題に対して シラを切られなくなった。
「たぶん息子は『民間人を傷つけてはいけない』のルールの元、いじめっ子達の暴力に耐え続けていたのでしょうが、息子が いじめっ子を敵認定した事で、武力で排除したのでしょう。
子供とは言え、高度な戦闘訓練を受けている息子が、いじめに耐えかねて 武力を行使した場合、死人が出ると学校側に何度も警告していたんですが…残念です。」
その後の犠牲者の警官は、リボルバーをナオトに向けた事による正当防衛と言った所だろう…。
さっきからベラベラ喋るオレに対してカメラの後ろのディレクターが腕を×にしてNGを出しているが、アナウンサーは 正義感から俺の話に付き合ってくれている。
あ~こりゃテレビ局側から干されるな…。
そんな話をしていると しばらくして窓から閃光が放たれ、発砲音が聞こえる…。
「今、発砲音が聞こえました。
戦闘が始まったようです。」
「発砲音が3発…38スペシャル弾…あ~警察のリボルバーの弾ですね…。
多分、息子でしょう…閃光もフラッシュバンじゃありませんね。
アルミホイルを使った自作でしょうか…入手元は 家庭科室かな…。
えーと次は 機動隊が使う P-90の5.7x28mm弾の発砲音…。
あ~これは機動隊、返り討ちにあったかな…。」
しばらく待っても 機動隊もナオトの死体袋も降りてこない辺り、返り討ちは 確実か…。
「子供だからって機動隊が舐め腐っていたのかな~。
これでP-90が6丁と50発マガジンが、35マガジン…合計だと1750発の弾と防弾チョッキを6枚も手に入れましたね…。」
俺は テレビの前で 呆れながら そう言った。
数時間後…。
最初の6名は 即応出来る6名だったのだろう。
空が赤くなり夕方になると総勢200名近い数の機動隊員が学校を包囲していて、付近の建物には狙撃部隊まで配備されている。
だが、教室のカーテンは すべて閉められていて、狙撃が しにくくなっている。
ナオキは テレビ局のアナウンサーと再びテレビに出演している…が、局側で内容にNGが出たらしく、今回の映像は録画で、後で自分達に都合が良い様に編集しつつ テレビのニュースに流れる事になる。
「そう言えば 助けに行かなくて良いのですか?
大事な息子さん なんでしょう…。」
「まぁ大事なんですけど…オレは妻と息子にDVしたって事になってますし、親権も親父に持っていかれて、現在、執行猶予と接近禁止令も出ていますからね…。
それに『日本中のいじめられっ子への抑止力の為に大規模な騒動を起こして ここで死ぬ』との事なんで、もう言葉による交渉の余地もありませんし…。」
俺は 最近普及して来た 最近型のスマホを取り出し、メールをアナウンサーだけに見せる。
「まっヤツなら50位は 削れるかな…。
おっ突入しますよ…。」
「えっ?」
アナウンサーは 俺の言葉に振り向いた。
『突入を許可、繰り返す 突入を許可…。』
夕日が沈んで夜に変った所で 校舎を囲むように配置されていた機動隊員達が校内に進入し、ゆっくりと包囲網を狭める。
対象は1名で中3の男…名前は神崎 直人…。
忍者の家系の神崎家で 工作員としての教育を受けている。
本来、機動隊が6人もいれば 十分に拘束出来るのだが、ヤツは その上を行き、こちらの武器を鹵獲している。
上からは 彼が未成年と言う事もあり、射殺するには体裁が悪く、拘束しろと言って来ているが、こちらに何人の死傷者が出るのか 分からない状態だ。
現在、対象のスマートフォンのGPSによれば 理科準備室にいる事になっている。
私達は 1階から順番に教室のドアを開けて中に入り、対象がいないかを確認して行く…隠れられる場所は教卓か、掃除の用具入れ用のロッカー位だろう。
確認した消失のドアには 私が 赤色のスプレーで×の文字を描いて行く。
「隊長…男子トイレ、女子トイレ、確認が終わりました。」
「よし、次の教室だ。」
「開けます…なっ」
突然 ドンと爆発音がし、この教室を担当している6名のチームが巻き込まれた。
「如何した?」
「あ゛あ゛あ゛あ゛」
突入した6名は1名が死亡、爆発で片足がふっとんだ隊員が1名…残り4名は全身釘だらけになり、重症…。
「自作の破片手榴弾か…」
家庭科室にある圧力鍋に大量の釘と鹵獲した銃弾から抜き取った無煙火薬を入れて、フタを締めて完成。
ドアを開けた事で スイッチが入り、圧力鍋に外から電池で火薬に通電させて 爆発させ、辺りに釘をばら撒いて殺傷する簡易手榴弾だ。
『こちら、対象と交戦、対象は 殺虫剤を使った催涙手榴弾を使用…目をやられ、6人が撃たれました…全員負傷。』
『こちらは ガスタンクを利用した火炎放射器です。
6人やられました全員Ⅲ度の熱傷…おい大丈夫か…。』
『こちら…ガスを使用された…恐らく硫化水素だと思われる。
20人程巻き込まれた…ガスマスクを装備していないから 救助も出来ない。
まるでテロリストだ。』
ドォォン…強力な爆発音にガラスの吹っ飛ぶ音がする。
『こちら、家庭科室…爆発に巻き込まれた…恐らく都市ガス…。
被害甚大…救助を…くそっ撃て、撃て!!』
何人かの生き残りが対象を見つけたのか、射撃音が聞こえ、やがて静かになる。
『クソ…こちらは 負傷者救出中に狩られた。
ヤツは機動隊の服を着て、負傷者に偽装していた。
相手は 本当に子供1人なのか?』
『こちら狙撃班、理科室の灯りが付いた。
カーテン越しの陰だが、対象を発見、射殺した…確認を頼む…。』
『こちら確認部隊、くっそ、人体模型で偽装しやがった。
くっ…このニオイ…ガスか…誘い込まれた ここも爆発するぞ…逃げろ!!』
ガス爆発の音…。
『こちら、スモークグレネードを使われ、味方と同士討ちを誘導された…オイ撃つな止めろ…。
くそ…対象が撃ってくる…負傷者多数、撃ち返せ!!、馬鹿野郎、味方を撃つな!!うぐぁ…っ』
敵が こちらの服を着ている事と、敵が 味方同士の同士討ちを誘うやり方を使っている為、敵は たった1人だと言うのに、相手の戦力が大きく感じられる。
しかも、既に敵が味方に紛れていて、味方を信用する事も出来ない。
大雑把に考えて部隊の7割位が 既に機能していない。
ここは撤退して体勢を立て直して…いや、今の所 火薬系の爆発物が少ないのは、自衛用の銃弾がある程度必要だったからだ。
ここで また1、2時間掛けたら銃弾から無煙火薬を取り出し、爆弾を作り出すだろう…。
もしかしたら、学校から逃げ出して更に犠牲者を増やす可能性もある…。
ここで食い止めるしかない。
が、次の瞬間、足元にフラッシュバンが投げ込まれる…。
あっ死んだな…。
まばゆい閃光と爆音で 視覚と聴覚を失って次の瞬間 意識が飛び、2度と戻る事は無かった。
「いや…思ったより 簡単に死ぬね~」
慣れない手つきで、ナオは P-90のマガジンを差し込み、コッキングレバーを引いて装填完了…。
コイツ反動が 少なくって撃ちやすいんだが、装填がしにくい…。
機動隊の射撃精度は正確で、直接の撃ち合いだと勝ち目がないと判断したオレは、敵の背後から奥にいる別部隊に弾を当て、味方同士の同士討ちを誘発させる。
更にそれに殺虫剤のスモークなどで目を封じれば ラクに相手を狩れる。
事前に仕掛けていたトラップも そろそろ終わるし…ここにいる全員を狩り尽くせば、十分だろう…。
まぁ体育教師は もう既に帰宅しているので、ブチ殺せない事が心残りなんだが…。
オレの胴体には 死体から貰った防弾チョッキを着て、ヘルメットには 動画を記録するカメラがビニールテープでグルグルに巻きつけ、音声なしだが パソコン室 経由で、ネットで生放送配信している。
この光景は 掲示板、SNSに拡散され、オレの意思をネットに拡散させる。
これで、オレが死んでも オレに共感した いじめられっ子が、いじめっ子を殺しに行くだろう。
そして、いじめられっ子が、逆上すると恐ろしい事になると、身を持って知られれば それは抑止力となり、いじめの防止に繋がる。
最後の指揮官がいる部隊に 死体から奪ったフラッシュバンを柱から片手を出して投げ、目の耳を塞ぐ…。
180デシベルの爆音と100万カンデラの閃光が彼らの感覚器官を奪い、パニック状態でP-90を乱射している弾を撃ち尽くした後、余裕を持って鼻に弾を撃ち込んでいく…。
「途中で射殺される つもりだったんだが…勝っちまったよ…。
さてと…。」
本来、ここで オレが 死ぬことにより、ネット住民の記憶に強く残り、神格化される予定だったのだが、敵の統率が予想より簡単に崩れた為、あっけなく全滅してしまった。
『え~犯人です。
ただいま、突入して来た部隊を すべて 私の命を守る自衛目的の為に排除しました。
これから、武器を捨てて投降をします。
目的は果たせましたので、後はご自由にどうぞ…。』
オレは 放送室から校内放送で外の警官達に言い…。
死体だらけの廊下を歩き、階段を降りて1階の出入り口に向かい、ゆっくりと手を上げて 校庭に出る。
武器は捨てたが、ヘルメットや防弾チョッキはしており、生配信は続行中だ。
狙撃部隊の位置は 校庭の先にあるアパートで、十分狙撃出来るだろうが、生配信とTVのカメラがある前でオレを射殺出来るか…。
まっどっちにしてもオレの勝ちだな…。
警官に取り押さえられたオレは 手錠を付けられ、パトカーに乗せられた。
【読んで頂きありがとうございます…。】
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私一人だけでは、限界がある為、皆様の協力の元、この作品のクオリティを高めて行きたいと考えております…。
皆さまの反応をお待ちしております…。
【読み方 注意】
物語は 一人称視点で進みますが、視点は その都度代わります。
誰の視点か分からなくなった場合は ナオミハルなどの一番最初の一人称で分かる様になっています。
【シリーズ】
ヒトのキョウカイ01…物語本編、現在 最終巻を作成中。
ヒトのキョウカイ02…01の物語でナオ達が過去に行き、トニー王国を建国します…主にビルドがメイン。
ヒトのキョウカイ03…本作、物語の主人公、ナオの過去編を書きます。