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魔法少女ななちゃん

「き、聞いてないですよ! 身体が勝手に動くし、セリフまで……魔法少女ななちゃんって何ですか!? そのまんまじゃないですか!」


 私に言われてもね……。そういう使用だとしか言えないし。

 菜々子ちゃんの変身を見て、私もこんな感じなんだなと共感性羞恥を身をもって感じていたよ。これはとても恥ずかしいわ~。

 少し慣れたと思ったけど、こうやって客観的に見るとこれは酷い。

 今までよく私はこんな恥ずかしい事をしてきたと思うよ。特に変身シーンは一瞬裸になるんだけど、身体のシルエットまる分かりじゃん。

 薄々感づいていたけど、ここまでハッキリと身体のラインが分かると、近くにいた男性陣は目のやり場に困っただろうに……。


「まぁまぁ落ち着いて同士よ。これで私の苦悩も分かってくれるはずよ」

「ど、同士……。今まで変身のポーズやセリフはほのりんさんが考えて自発的にやっていたと思っていたのですが、これって強制なんですね……」

「分かってくれて嬉しい」


 ふふふ。これで菜々子ちゃんも私と運命共同体よ。恥ずかしい事も全て共有すればきっと私の苦労も半減する!


「にしても、この洋服ヒラヒラが多くありませんか? 私こういった洋服着たこと無いんですよね……」

「そうなの? 似合ってるよ」


 菜々子ちゃんの魔法少女風の衣装は私とは対象的にゴスロリ系の衣装だ。赤と黒を基調としており、襟や袖、フレアスカートの裾もヒラヒラが沢山ついており、何処かの吸血貴族のご令嬢だ。ミニハットがアクセントになっており、背中の小さな悪魔の翼も可愛く動いている。


「そうですか……? ほのりんさんと対象的なデザインですが……」


 たしかに私の魔法少女風の洋服は俗に言う甘ロリ系だ。

 甘ロリとはゴスロリ系のクラシカルなデザインとは異なり、白やピンクなどの明るい色を基調としており、ブラウスやスカートにはリボンやフリルが沢山ついているのだ。

 私のデザインは星やハートの他に苺の刺繍がスカート散りばめられており、パニエでふんわりとしている。そして、背中には小さな天使の翼が生えている。


「全く違うデザインだけど、コンセプト的に合ってるのかも? 天使と悪魔みたいに?」

「私悪魔は嫌です」

「小悪魔は?」

「もう怒りますよ!」


「「ぷふっ、あははは」」


 お互いしょうもない事で笑みが溢れる。


「ふむふむ。ななちゃんのステータスならデスボールなら余裕そうだぞ」

「おおお!」

「そ、そうでしょうか? 強くなった実感がありませんが……」


 ななちゃんが手のひらをグッと握る。


 感触を確かめているようだけど、魔法少女の強さは実際体験してみないと分からい事が多い。魔法少女になるとレベルの懸念が無くなるので自分の強さが把握できなことが多々ある。


「ななちゃんの強さはほのりんと同等だ。スキルも一部を除いて同じだ」


 へ~そうなんだ。となると、EXスキル系で使えないやつがあるかもしれない。これは情報を共有しておいたほうが良いだろう。


「ななちゃん、まじかる☆スキルブックって言ってみて」

「は、はい。まじかる☆スキルブック……いっぱい出てきました」

「メモるから教えて~」


 私の所持スキルとななちゃんのスキルを照らし合わせると、ノーマルスキルは全て同じで、違うのはEXスキルとまじかる☆スキル、そしてまじかる☆アタッチメントだ。


 まず、EXスキルでななちゃんが所持していないスキルは【魔法少女の相棒】と【もうひとりの魔法少女】だ。ななちゃん用の相棒がいないのは可哀想だけど、仕様上仕方ないのかもしれない。私が取得している【もうひとりの魔法少女】は私が使ったからだろうか、グレーアウトしていた。


 まじかる☆スキルでななちゃんが使えないのは全てだ。私とは系統が違うのか、別のスキルと【ソードダンサー】用のスキルが並んでいた。これは要検証である。


 まじかる☆アタッチメントはアメイジングコスモだけが存在し、必殺技は使えるようだ。これも要検証だけど、ななちゃんなら使いこなせるだろう。


「ここのダンジョンは己を鍛えるのには適している。思う存分戦い、己が何ができ何ができないのか理解するのだ」


 そうだね、今日みっちり鍛えれば、ななちゃんの課題も見えてくるだろうし、レイド・竜王討伐戦でもきっと活躍してくれるね。


 それよりも……。


 私は思わず、ななちゃんをギュッと抱きしめる。優しい甘い香りが鼻孔を擽る。柔らかい身体は安心感を覚え、ずっと抱いていたい衝動に駆けられる。


「わ、わわわ、ほのりんさん!? 突然どうしたのですか??」

「いや〜、ななちゃん可愛くて可愛くて、でへへ」


 本当に可愛い。まるでお人形さんのようで、家に持ち帰りたいくらいだ。

 私になすがままにされたななちゃんは頬を紅潮させ、ぷるぷると震えている。


 恥ずかしいでしょう? うふふ。さて、悪戯もここまでにして、本題に入りますか。


「ぶっつけ本番だけど、大丈夫?」

「……ほのりんさんがギュッとしてくれて緊張が解けました。何だか行けそうな気がします」


 奈々子ちゃんこと、魔法少女ななちゃんの表情は自身に満ちている。これなら大丈夫だろう。


 私とななちゃんの間に入り、満足気な表情を浮かべるルル様。


「新たな魔法少女の誕生は大変喜ばしい。これで世界樹ユグドラシルの扉は開かれよう」


 81層に進む為にはEXクラスに就いた人が2人いないと進めない、それだけ難易度が高いのだ。これからも焦らずじっくり攻略を進めて行きたいと思う。



 ボス部屋の中を覗くと、デスボールがうにょうにょ動いていた。

 明らかに私達を意識しているのか、周辺の地面を鞭で何度も叩いている。


 デスボールの強さは60層のボス相当の強さを持っている。60層にいたフェニックスと同等だと思うと、ソロで倒すには厳しい戦いを迫られる恐れがある。しかし……。


「行ってきます!」


 魔法少女ななちゃんは一気に加速する。あれは【高速移動】だ。

 デスボールの鞭による攻撃を容易く回避し、ななちゃんの両手が輝きだす。


「まじかる☆ウェポン!」


 ななちゃんの両手に現れたのは……。


「え? ……マラカス?」


 シャカシャカ鳴る楽器である。

 ななちゃんのマラカスは黒いルル様が描かれたデザインで可愛かった。

 私のオタマトーンといい、楽器を操る魔法少女なのか? いや、オタマトーンとマラカス……共通点が楽器以外無いぞ? 


 クラス【魔法少女】には謎が多い。まずどこからかデータを集め、それを元に魔法少女のクラスが作られた。

 ルル様の説明によると、これもダンジョンデータベースの機能なのだそうだ。


 呆気に取られているななちゃんに、デスボールの鞭がソニックブームを鳴らしながら襲うが、素早く回避し、マラカスで触手を殴る。


 カシャ……。


 マラカスを振る度に音が鳴る。私のオタマトーンよりある意味武器としてしっかりしている。


「もう、割り切るしかないわ! くらいなさい! 【ダンシングエッジ】!!」


 あれは【ソードダンサー】のスキル、魔法少女になっても一部のスキルは継承されているので、非常に強力なスキルだ。

 私には、ああいったスキルが無いので羨ましい。

 スキルクリスタルの初級棒術スキルが手に入れば覚えられるかも知れないけど、未だに初級棒術は取ったことがない。


 【ダンシングエッジ】がデスボールにクリーンヒットする。

 シャカシャカとマラカスの音がボス部屋に鳴り響くのを我慢すれば強力なスキルだ。

 華麗に踊りながら、まじかる☆ウェポンのマラカスを巧みに操り、デスボールをボコボコにしていく。


「森本君の仇、そして私の弱い部分もこれでお別れよ! まじかる☆レイディアントムーン!!」


 突如現れた月が神々しく輝きだし、マラカスからキラキラした三日月のエフェクトが発生し、虹色の粒子が溢れ出す。

 そしてマラカスから放たれた光の奔流はデスボールを包み込み、一瞬発光すると爆散し、辺りにキラキラと輝く星や月の形をした物が散らばった。


「おおお……綺麗」

「素晴らしいな。ほのりんも、うかうかとしてられんぞ」


 これは私より人気がでてきちゃう! ……でも、ななちゃんを矢面に立たせるのは可愛そうだ。私が少しでも人前に出て我慢すれば良いだけだし……ん〜、我慢できるだろうか?


 ボス撃破報酬にスキルクリスタル〈擬態〉と金のメダルを手に入れた。

 これで61層ユグドラシルの塔へ行くことができる。


 奈々子ちゃんは魔法少女ななちゃんになったのでレベルが撤廃された。

 レベル70未満の人は末留さんだけなので、レベル70になればレイド・竜王討伐戦に参加出来る事になった。


 そしてレイドの前にひとつ試練がある。それは……。


 魔法少女ななちゃんをみんなに紹介死なくては! 恥ずかしくて死にそうな顔をしている、ななちゃんの顔が浮かぶわ〜。ふひひひ。



 

新しい魔法少女ななちゃん登場しました。

今後どのような展開になるか楽しみです。

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