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新たな魔法少女

「どうぞ、お入り下さい」

「おじゃましまーす」


 奈々子ちゃんの客室に入り、室内を見渡す。私の客室と同じで和室の落ち着いた部屋である。部屋の奥にはジャグジーのような形をした浴室があり、客室専用露天風呂となっている。


 奈々子ちゃんと一緒にお風呂も入る予定なので、洗面用具に浴衣と準備ばっちりだ。


「湯は張っておりますので、先におふろに入りましょう」


 浴室は屋根は無く、青空露天風呂になっており、既に夜21時をとうに過ぎているので星空が輝いており、とても美しい景色だった。


 身体を洗い、熱い湯船に浸かると、温泉の効能なのか身体の芯からじわじわと温まり、裸がすべすべになっているのが分かる。


「うぃ〜、いい湯だあ〜」

「穂華さん。おじさんみたいですよ」

「奈々子ちゃん以外誰も居ないし気にしない〜、ふい〜」


 何だかんだ素を出せるのは奈々子ちゃんと喫茶しぐれのまひるちゃんかな? 奈々子ちゃんは私の数少ない友達なのだ。


 月明かりに照らされ、温泉に浸かっていると疲れがイッキに飛んでいく。最近は60層で死にかけたり散々な目に遭ってきたので心身共に疲れていた。こういった息の休まる時間もたまには良いものだ。


 奈々子ちゃんにの表情も月明かりに照らせれ、胸元に溜まるお湯が色っぽい。ついつい視線が向いてしまう。


「穂華さん」

「ひゃい?!」


 変なところ見ていたのバレたかな? 


 奈々子ちゃんは湯船を見つめ、ポツリと呟く。


「6層のデスボールが倒せないかもしれません」

「……え?」


 そんな筈はない。奈々子ちゃんの実力なら確実に倒せるがレベルだ。ただ、今日のデスボール戦でも動きにキレが無かったので、もしかしたら体調が悪いのかな?


「夕食の席でも話しましたが、トラウマがあるんです」

「……もしかしてデスボール?」

「そうです。むかしパーティーを組んで、渋谷ダンジョンを探索していると、デスボールの襲撃に遭い……私の当時の恋人を失いました」


 まさかとは思ったけど、デスボールに恋人を失ってしまったなんて。

 パーティーの解散もそれが理由かもしれない。


「当時の大学で知り合った人達でパーティーを組み、そのパーティーリーダーであった私の元恋人、森本光将もりもとみつまさと私、そして神峰奏司かみねそうしと一緒にパーティーを組んでいました」


 神峰奏司……!! まさか、ここで、その名前が出てくるなんて……。

 以前、神峰と会ったような話しを聞いた事があったけど、まさか大学時代の知り合いだったとは……。


「当時、私達のパーティーと別のパーティーと合同でダンジョンを探索していると、謎の球体に遭遇しました。そして、殺戮が始まりました。森本君が残り、私を逃がすようにと神峰に伝えましたが、私は森本君を置いて行く事を拒否し残る事を選択しました。しかし、神峰に気を失わせされ、気がついた時にはダンジョンの外でした。討伐隊が編成されましたが、モンスターの姿は無く、無残な遺体が散らばっていただけでした。あれ以来、私はハンターを辞め、大学在学中、ハンターマスターアドバイザーの資格を取り、JHAに入りました」

「そうだったんだ……奈々子ちゃん、どうしてまた、私達とダンジョンに行こうと決めたの?」


 そんなトラウマがあるなら、きっとダンジョンには潜りたくない。

 しかし、現に私達と行動を共にしている以上、彼女をここまで奮い立たせる理由があるはずだ。


「私……穂華さんが羨ましいんです」

「私が?」

「はい。魔法少女になって、ダンジョンに潜って、たまに人助けをして……そんな穂華さんが羨ましくなって、渋谷ダンジョンセンターで帰りを待ってるのも、何だか待っていられなくて……」

「私は大した事をしてないけどなぁ。でも奈々子ちゃんが渋谷ダンジョンセンターで待っててくれると安心するのよね〜」

「それはありがとうございます。初めて言われましたよ」

「ふふふ」


 魔法少女になりたての頃は奈々子ちゃんしか頼れる存在はいなかった。喫茶しぐれの人達にも感謝しなくてはならないが、奈々子ちゃんがいなければここまで来れなかったかもしれない。できれば、奈々子ちゃんに恩返しがしたい。


「もし……もしも、奈々子ちゃんがデスボールを打ち倒すほどの力を得て、トラウマを克服できる方法があるとしたらどうする?」


 奈々子ちゃんは両手を合わせ、悩む仕草をする。小首を傾げ、うなじがとても色っぽい。


「そうですね。トラウマを払拭できるなら、デスボールにリベンジしたいですね、昨日の分と森本君の仇も含めて」


 なら決まりかな。


 私は奈々子ちゃんに秘密にしていたEXスキルの1つを教える事にした。



 ▽



 翌朝、合同合宿伊豆修善寺ダンジョン2日目、再度ソロでチャレンジする事になり、順次、修善寺ダンジョンに入って行く。

 2週目以降はモンスターが強化されており、後衛職の人はソロだと厳しいので、パーティーを組んで攻略する事になった。


「私は奈々子ちゃんの付き添い行ってきます」

「分かった。須藤さんを頼んだよ」


 アライアンスパーティーのリーダー中村さんに伝え、私と奈々子ちゃんは修善寺ダンジョン6層へと同時ではなく別々に入る。同時に入ってしまうとパーティー扱いになってしまうからだ。


「お、合流出来た」

「出来ましたね」


 バラバラになるパターンと合流出来るパターンが存在するけど、どうしてだろうか? まあ特に興味が無いのでルル様にも聞いていない。


「では、誰を魔法少女にするか決まったのだな?」

「うん。奈々子ちゃん」

「はい」


 緊張した面持ちで私の横に立つ奈々子ちゃん。

 昨夜、誰にも教えていないEXスキルのひとつ【もうひとりの魔法少女】について説明した。

 クラスチェンジオーブを使用せずに、任意に他者のクラスを変更出来るスキルだ。

 そのスキルを使用すれば、奈々子ちゃんも魔法少女になる事が可能で、尚且、デスボールを容易く倒す事が可能だ。

 彼女は今日の今まで悩んでいたけど、魔法少女になる事を選択したのだ。


「ズルをするようで悪いのですが、今回は穂華さんの力を借りようかと思います」


 デスボールさえ倒してしまえば奈々子ちゃんのトラウマを払拭出来る筈だと私は考えた。

 もし、それが駄目だとしても、私は奈々子ちゃんをサポートしていくつもりだ。


「それじゃ、まず私が変身するね」 


 私は秘密の呪文を唱える。


「らんらんらぶはーと♡まじかる☆ドレスアップ!!」


 キラキラした虹色の粒子が辺り一面に溢れ出し、私の周りが星とハートで埋め尽くされていく。そして、POPな効果音と共に身体にジャストフィットする可愛らしいデザインの魔法少女風衣装が次々と装着されていく。


「まじかる☆が〜る♡ ストロベリーほのりん☆彡」 


 奈々子ちゃんの前なら恥ずかしくない! ……ごめん嘘ついた、ちょっと恥ずかしい。


「我もこの姿に戻るか」


 白髪紳士からオコジョと猫を足した謎生命体に変わる。

 相変わらず頭の上には天使の輪っかに、背中にはコウモリの羽が生えているので、天使なのか悪魔なのかさえも分からない。変ったといえば、胸にある宝石だろう。

 ナヴァラトナと呼ばれる宝石がいくつも収まっている。


「さて、奈々子ちゃんを魔法少女にする儀式を始めます」

「うう……緊張してきました」


 どんな魔法少女になるのかな? 奈々子ちゃんのクラス【ソードダンサー】は強力なクラスだけど、魔法少女に変わると大半のスキルは使えなくなってしまう可能性が高い。

 できれば奈々子ちゃんの特性に合った魔法少女になる事を祈るしかない。


『EXスキル【もうひとりの魔法少女】を使用しますか? はい/いいえ』


「はい」


 はいを選択する。


『対象、須藤奈々子をEXクラス【魔法少女】にクラスチェンジします』


 私の周囲が輝きその輝きが奈々子ちゃんを包む。


「え? 秘密の呪文? ……ブラッティハート♡まじかる☆ドレスアップ?」


 奈々子ちゃんが、自信なさげに秘密の呪文を唱えると、周囲を赤黒く染め上げる。


 奈々子ちゃんの背後に血のように赤い月がゆっくりと現れ、足元から黒い影が這い上がり奈々子ちゃんを包み込む。

 そして、身体に完璧フィットする可愛らしいデザインは、赤と黒を基調とした魔法少女風ゴシックロリィタの衣装だった。

 最後に背中に小さな悪魔のような羽根を生やす。


「まじかる♡ガール、トワイライトななちゃん☆彡」


「「……」」


「は……」

「は?」

「恥ずかしいですーーー!」


 顔を真っ赤にさせた奈々子ちゃんこと、魔法少女ななちゃんが、ここに爆誕した。



読んでいただき、ありがとうございます。

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