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憧れの魔法少女になれたけど、恥ずかし過ぎて死にそうです!!  作者: じゃむばた


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越えなければならない壁

 伊豆修善寺ダンジョンを攻略したメンバーの中には再度挑戦する者が続出した。ボスモンスターしか現れず、宝箱も確実にドロップする。短時間で周るには非常に効率が良かったのだ。

 ただ、2週目以降はボスが強化されて登場し、生半可な覚悟で行くと返り討ちな遭う事になった。その中で、Chrome Tempestの3人は2週目をクリアし、マイクさんにいたっては4週目に突入していた。


「ここのダンジョン最高じゃねぇか。何で未だに一般開放されてねぇんだ?」


 ケルビンさんが瓶ビール片手に盛り上がっている。どこからビールを持ち込んだのかは不明だけど、目的は達成しているから問題はないだろう。

 そんな出来上がっているケルビンさんに対して周防院さんが答える。


「JDSTとJHAが、まだ調査しているんですよ。何でも3層に出てくるトレント系の変異種が珍しいアイテムを落とすそうで、それを手に入れる為にJDSTとJHAから派遣されているハンターが占拠している状況なんですよ」

「へ〜、そいつはまた……」


 ケルビンさんが何やら悪巧みを考えている表情を浮かべている。


「ちなみにどんなアイテムを落とすんだ?」

「残念ながらな機密事項なのでお話できません」

「なるほどな〜」


 ケルビンさんが懐からスマホを取り出しどこかに連絡を始めた。


「ハイ、カタリナ。伊豆のダンジョンについてJHAから情報を全て貰ってくれ。頼んだぜ!」


 ピッ とスマホの通話を閉じる。


「まっ、今日中にはデータは揃うだろうな」

「……JHAはUSHAには弱いですからね」


 周防院さんは困った顔をしていた。

 私に聞いてくれれば話すけど、特に聞かれなかったので、敢えて3層のトレントについて教える必要はないだろう。


 ケルビンさんと周防院さんの話を聞きつつ、修善寺ダンジョンゲートの前に立ち、ゲートに触れる。


 どこに転移しますか?


 修善寺ダンジョンゲート前〈現在地〉

 修善寺ダンジョン 1層

 修善寺ダンジョン 2層

 修善寺ダンジョン 3層

 修善寺ダンジョン 4層

 修善寺ダンジョン 5層

 修善寺ダンジョン 6層


 修善寺ダンジョン6層を選択し、ダンジョンゲートを潜ると、石畳の正方形の空間に出た。正面には大きな扉が半開きで開いており、中から剣戟の音が響いて聞こえる。

 ボス部屋の中を覗くとそこには、黒いピチピチスーツを来た奈々子ちゃんが、必死にデスボールと戦っているのが見えた。


 奈々子ちゃんの相手はデスボールなんだ。1度戦った事があるのかな? 6層は苦手なモンスターが現れると聞いたけど、確かに奈々子ちゃんの動きにキレが無いように見える。次第にデスボールの動きが激しくなり、触手を鞭にして攻撃するデスボールの一撃が奈々子ちゃんに当たり、その衝撃でボス部屋の入り口まで吹き飛んできた。


「ぐっ……」

「奈々子ちゃん大丈夫?」

「痛ぅう、……ほのりんさん? すみません、みっともない姿をお見せしました。今日はギブアップしますので、一旦出ましょう」


 奈々子ちゃんがボス部屋から出るとデスボールは動きを止めて部屋の中央に戻る。


「まず怪我を治そう。まじかる☆ヒーリングシャワー!」


 光の雨が奈々子ちゃんに降り注ぎ、裂けたスーツから見えていた怪我が、たちまちと治っていく。


「ありがとうございます。2時間掛けて戦っても駄目でした」

「え? 2時間も戦ってたの? 他の人に会わなかった?」

「いえ、来ませんでしたよ? てっきり私が出てくるまで待っているのかと思いました」


 あれれ? おかしいな。マイクさんなんて4周目だし、会っているはずだなんだけどな。


「末留さんと奈々子ちゃん以外の人はクリアしたよ」

「そうなんですか!? 私、足を引っぱっていますね……」

「そんな事ないよ。奈々子ちゃんが一番頑張っているの、私知っているもん」

「……ありがとうございます」


 奈々子ちゃんの表情は暗い。デスボールのせいなのか、後ほど詳しく聞く必要がありそうだ。


「末留さんの様子を見に行こう」

「わかりました」


 ダンジョンゲートに触れ、1層から順にダンジョンゲートを潜って行くと、末留さんが6層のボス部屋の前で仰向けに倒れていた。


「末留さん! 大丈夫ですか!?」


 慌てて駆け寄ると、末留さんが驚いた表情で私達を見る。


「あれ!? お2人どうしたんすか?」

「それはこっちのセリフだよ。末留さん怪我は無い?」

「あ、大丈夫です。俺、6層のボスとどうやって戦おうか考えていたんだけど、中々思いつかなくて、誰かに相談しようかと待っていたんすけど、誰も来なくて……」


 私と奈々子ちゃんは顔を見合わせる。


「私と同じ状況ですね」

「もしかして、人によって同じ階層にいても別の空間だったりするのかな?」


 そうじゃないと説明がつかない。


 時間を置いてダンジョンに入っているが、必ず誰かと鉢合わせしてもおかしくないのに、奈々子ちゃんと末留さんは、今まで誰とも会っていないらしい。

 もしかしたら、同じ階層でも別の部屋なのかもしれない。ただ、私がこうやって彼らと出会えるのも謎なのだけども。


「ちなみに末留さんの相手ってどんなモンスターなの?」

「見てみて下さいよ〜」


 私と奈々子ちゃんはボス部屋の扉から中を覗くと、黒い鎧に身を包つみ、長い槍を持った人物が立っていた。あの姿には見覚えがある。


「園田さん?」

「園田さんですね」


 園田さんって実はモンスターだったり? いやいや、そんな事ある訳がない。なら、あの人は何だろうか?


「ほほう。珍しいモンスターだな」

「うわっ! びっくりした!」


 ルル様が突然現れた。私ひとりでダンジョンに入って来たのにな。まぁ、ルル様はどこでも現れるか……。


「ルル様は、あの園田さんが何者なのかご存知で?」

「勿論、あれはれっきとしたモンスターだぞ」


 奈々子ちゃんの質問にルル様は答える。


「あのモンスターはメタモルスペクター。相手の脳波から様々な姿に変身する、アンデッド系モンスターだ」

「ふ〜ん。でも何で園田さん?」

「あー、多分ボス部屋に入る直前に、園田さんに言われた事を思い出したんすよー」

「言われた言葉? どんなことを言われたの?」 

「ええと、お前が死んだら両親が悲しむ。無理にクリアしようとせずにヤバいと思ったら逃げてもいい。です」


 園田さんらしい言葉を掛けたようだ。園田さんも弟さんを危険な目に合わせたくない一心でダンジョン連れて行き、ダンジョンは危険な場所だと体験させて実家に返したそうだ。


「園田さんの偽物なら勝てそうですね」

「そうでもないぞ?」

「なぜですか?」

「末留は園田の側でその実力を知っている。メタモルスペクターは末留の記憶を元にそれらをトレースしてくる。園田本人と戦う事を想定した挑んだ方がいいぞ」

「ええ! マジっすか!? うわ〜、勝てんのかこれ?」


 愕然とした表情で、扉の隙間から覗きこむ末留さんの足が震えているのは、園田さんがそれほど強いと分かっているから? こう言うのなんて言うんだっけ……武者震い?


「無理せずに明日挑む? 3日間は猶予あるし」

「いえ! やります! 園田さんに勝って美味い飯と美味い酒呑むんですから!」


 旅行気分かな? まぁ本人がヤル気あるみたいだし、無理に引き止めても可愛そうだ。

 ここは彼の戦いを見守ってあげるのが賢明だね。


「うっし! 行ってきます!」


 白い歯を見せて笑うと、扉の奥へと進んでいく。


 部屋の中央には黒い鎧を着た園田さん元い、メタモルスペクターが立っている。

 竜のデザインがかっこいい鎧は、ダンジョン産の素材がふんだんに使われた一品だ。


 対する末留さんは、派手な全身鎧に身の丈ほどある大剣を携えており、某アニメキャラの大剣振り回す人みたいだ。 



「ひえ〜、園田さんまんまやん……」


 末留は園田そっくりに化けたメタモルスペクターを見て怖気づいていた。

 魔法少女ほのりんこと、十条と須藤に漢を見せつける為に気合を入れてみて挑んだものの、いざ園田モドキと対峙すると、その強さが見て分かる。


(俺も強くなったと思ったけど、今なら分かる。園田さんってめちゃくちゃ強いわー)


 末留も強くなり、相手の強さを量る事が出来るようになり、目の前の園田の強さを肌で感じていた。

 末留の不運はただのモンスターではなく、園田に化けるモンスターだったということだ。


「やるっきゃねぇか。先輩超え、果してみせるぜ!」


 大剣を肩で担ぎながら走り出す。


「うおおおっ! 行くぜ! 【バスターインパクト】!!!」


 メタモルスペクターの手前でジャンプし、大剣を上段から振り下ろす。


 メタモルスペクターの目が赤く発光すると、ゆらりと体を反らし、末留の【バスターインパクト】を回避すると、勢いで大剣が地面にめり込み、地面を大きく破壊する。


 小石が巻き上がり、ゆっくりと流れる時間の間に、末留の背筋がゾクリと凍るような感覚が襲う。


 それは本能的な危険信号だった。

 咄嗟に身体を捻り、振り下ろした大剣の影に隠れると、強力な横薙ぎの一撃が大剣に当たり、金属がぶつかる音が木霊する。


「あっぶねー! 園田さんエゲツない攻撃パンパないっす!」


 特に反応を見せない園田モドキの中身はモンスターだ。

 話しかけても淡々と攻撃を仕掛けてくる。

 非常にやり難い相手だな思いながらも、末留とメタモルスペクターは武器を激しくぶつける。


「おおお!? やば、その構えはあああ!」


 園田の得意技【五月雨突き(さみだれづ)】だ。


 無数に突き出された穂先は、末留の防御を難無くすり抜け、全身に何度も突き刺さる。


「ぐほ……」


 血飛沫が舞い、末留の目に力が抜ける。


「「末留さん!!」」


 ほのりんと須藤が叫ぶ。


 末留が前のめりに倒れる瞬間、片足でしっかり支え、倒れないように踏ん張る。

 末留の表情はまだ諦めてはいない。

 むしろ末留は【五月雨突き】を耐えれば勝てると確信していた。


「その技は出た後の隙きがでかいんだぜ! うおおおおおお!!!【ストレンジアップ】からの【バスターインパクト】!!!」


 ドーンッ! と、ボス部屋に響く轟音は、地面を大きく抉るほどの威力があり、メタモルスペクターを跡形もなく、一撃で消し飛ばした。


「うおっしゃーー! 園田さん越えだぜええええ!」


 ボロボロになりながらもチャンスを覗い、最大の力をぶつける。末留の作戦勝ちである。


 勝利に喜ぶ末留の背後に、3人の人影が現れる。


「おうおう。誰が俺を越えたって?」

「え?」


 末留は恐る恐る振り返ると、ほのりんと須藤の背後に、先程対峙していたモンスターにそっくりの人物が立っていた。


「な!? まだ生きていたのか! メタモルスペクターめ!」

「誰がメタモルスペクターだ!」

「いてっ!」


 槍で頭を叩かれた末留は、痛そうに頭を押さえる。

 そして出血多量のせいかゆっくりと倒れ、園田に抱きかかえられる。


「ったく、手間の掛かる奴だ」

「ふふふ。さあ、怪我を治しますよ」


 治療を終えた末留達はダンジョンを後にし、今日の伊豆修善寺ダンジョンの攻略は終了したのだった。



ブクマ&評価ありがとうございます。

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