フェニックスの弱点
フェニックスとの戦闘は困難を極めた。
萬田さんは熱耐性スキルを取得しているにも関わらず重度の火傷を負っており、非常に痛々しい。
フェニックスの周りは常に高温に曝され、灼熱の地獄と化している。迂闊に近づくのは自滅行為になってしまう。かといって、油目さんの【ファイアサークル】を動かす事はできない。柳瀬さんの【結界陣】とセットで運用するのが基本となっており、この2人はセーフゾーンを作る為には今いる場所から動けないでいた。
「んも〜♡熱くて近づけないわ〜♡」
「萬田さん大丈夫ですか? まじかる☆ヒーリングシャワー!」
萬田さんの火傷を治療し、フェニックスから距離を取る。
「ありがとう♡ほのりん♡」
流石の萬田さんでも手が出せないようで、辺りの石を投げて投石攻撃をおこないっていた。
たかが投石と思われがちだが、萬田さんが投げる石は、空気を裂き、フェニックスの体を貫く。
フェニックスもその攻撃を嫌がるのか、必死に回避行動をとりながら逃げるが、萬田さんの投げる石が何発も命中し、とうとうフェニックスは地面に墜落する。
「キエエエエエ!!」
「もらったあああ! 【五月雨突き】いぃぃぃい!!」
フェニックスが地面に墜落したのを確認し、園田さんの槍によるスキルが発動する。
【五月雨突き】は無数の突きによる攻撃で、防御されても隙間から縫うように突きが繰り出され、回避不可能な強力なスキルである。
元々実家が旧家で、幼い頃から槍の稽古をしていた園田さんは、経験とスキルが合わさってか、的確にフェニックスの急所を貫いていく。
「キエエエ……」
フェニックスが息絶えたのか灰になると、すぐに爆発が起こり、ボロボロだったフェニックスの傷が嘘のように綺麗に治り復活する。
復活の爆発に巻き込まれ、園田さんは吹き飛び、地面に何度も打ち付けられる。
「ぐ……クソったれ……」
「園田ちゃん、一旦下がりましょう」
園田さんは萬田さんに肩を借り、その場から離脱しようとするが、フェニックスの炎の羽がまるで意思があるかのうよに飛び、無数の羽が背後から迫って来た。
考えるより先に私達は動いていた。
奈々子ちゃんと飛び込むと、炎の羽を撃ち落としていく。
「ほのりん♡助かったわ〜♡」
「一旦引いて下さい。次は私達が行きます!」
「すまん、頼んだぞ」
「治療に専念してくださいね」
萬田さんと園田さんが離脱するのを確認し、私はフェニックスを見る。間近で見たその姿はとても美しく、命が燃えるように力強く燃え上がっている。
何度も倒しても灰の中から復活し、強力な攻撃を何度も放ってくる。このまま戦い続ければ、いずれは押し切られて負けてしまう。いくら蘇ろうとしても、フェニックスはモンスターだ。必ず弱点があるはずだ。
「ルル様、フェニックスの弱点は分かる?」
私の背後を飛行しながら追尾するルル様は眼をチカチカ光らせるが、反応がよろしくない。どうかしたのだろうか?
「我の真・鑑定眼をもってしても弱点が分からん。奴のステータスは分かるんだがな。ただ……」
「ただ?」
「奴が灰になった瞬間にエネルギーが集まる場所が一瞬だけ見える。そこにヒントがあるかもしれん」
私には何も感じなかったが、ルル様には何かを感じたようだ。それでも何かきっかけになりそうな助言に、1度フェニックスを倒して様子を見る事にした。
「奈々子ちゃん。極力接近戦は控えて、中距離から遠距離攻撃主体で攻めよう。ルル様の言葉が正しければ、復活の瞬間に何かあるかもしれない」
「わかりました!」
「まじかる☆エンジェルハンド【高速移動】付与!」
私の半透明な手が奈々子ちゃんの背中を優しくタッチする。
『まじかる☆エンジェルハンド発動。【高速移動】が須藤奈々子に付与されました。効果時間はおよそ2分……』
ウィンドウが表示され奈々子ちゃんにスキルが付与された事を知らせ、それを確認した私は【高速移動】を発動させると、奈々子ちゃんの追随する。
フェニックスの反応は早いが、私達の速度には対応できず、死角に回り込む事に成功する。フェニックスは必死に私達を目視し、攻撃をしようとするが、真後ろに回った私達に気づく事はない。
「飛べ! 【ピアッシングナイフ】!」
奈々子ちゃんのピチピチスーツに装着されているナイフホルスターから2本抜き取り、フェニックスに投げつける。
ナイフの刃に白いオーラを纏っており、鋭い一撃がフェニックスの炎の壁を貫く。
「キエエッ!!」
ナイフは突き刺さり、刺さった所から炎が噴き上がる。
思わぬダメージを受けたのか、怒ったフェニックスが幾何学模様の魔法陣を展開させると、大きな火球を作り出し、奈々子ちゃんに目掛けて放ってきた。
おわっ!? あれはヤバい。それよりも熱い! 熱耐性仕事しろー!
【高速移動】で、奈々子ちゃんの前に出ると、両手を火球に向けかざす。
「まじかる☆シールド全開!!」
虹色の半透明の盾が2枚が現れると火球と衝突する。
「ぐぬぬぬぬっっ!!」
ピシピシっと嫌な音が聞こえる。1枚目のまじかる☆シールドに亀裂が生じ、熱が私の肌をチリチリと焦がす。
『まじかる☆ドレスの耐久値が95%低下しました』
パリンっと音が鳴り、まじかる☆シールドが1枚割れると同時に火球が消え、ホッとしたのもつかの間、新たな火球が迫ってくるのが見える。
ちょっ!? それは反則! 奈々子ちゃんのスキル付与効果時間は……1分か……。
「奈々子ちゃん、火球を避けたらフェニックスの気を引ける?」
「試してみます!」
二手に分かれ、火球を回避すると後方で火柱が上がる。あの一撃を受けたら熱耐性をもってしても大ダメージを覚悟しなくてはならない。
よし、奈々子ちゃんが上手い具合に気を引けている。確実にフェニックスを倒すにはアメイジングコスモを撃ち込めば良いけど、恐らく復活する。弱点が分からなければ無駄撃ちになっちゃうから、まじかる☆スターライトを全力で当てるか!
「まじかる☆アタッチメント! 精霊のポンチョ!」
まじかる☆スキルブックから精霊のポンチョを取り出し羽織ると、私の姿は周囲と同化し透明化する。
気をつけなければならないのが、激しい動きやダメージを受けると、精霊のポンチョが解除され姿が顕になってしまう。
こっちに振り向くなよ〜……。
飛行スキルでゆっくりフェニックスの背後から迫る。フェニックスは奈々子ちゃんに夢中なのか、炎の羽を飛ばして攻撃しており、私に気がつく様子はない。
……今がチャンス!
「不死鳥さん! 焼き鳥にならないのは何故ですかー? まじかる☆スターラーーイト!!」
突如として背後に現れた私に、慌てふためくフェニックスは、私が放ったまじかる☆スターライトをもろに受けて光の粒子に変わる。このまま倒せれば嬉しいが、流石に問屋が卸さない。
フェニックスは灰の変わりに光の粒子になったが、そこに一瞬だが別の何かが見えた。
何だろうと注視しようと瞬間、フェニックスが復活する時に起こる爆発が発生し、その爆炎と衝撃が私を襲う。
「っ!? きゃあ!!」
『まじかる☆ドレスの耐久値が78%になりました』
吹き飛ばされたけど、なんとか着地に成功した。一歩間違えれば溶岩溜まりに落ちていたところだ。
「ふぅ〜。危なかった……それよりもアレはなんだったんだろう?」
フェニックスの体が朽ちた瞬間、胸の辺りに何かが確かにあった。赤い宝石なような物……もしかして魔石? アレを破壊すれば倒せるかもしれない?
何となくフェニックスの弱点が分かると、ルル様がやって来た。ルル様は危険な時は少し離れた所で見ているのだ。
「見えたか?」
「うん。たぶんだけど、魔石がフェニックスを何度も蘇らせてると思うの」
「正解だ。あの魔石は特別な魔石だ、出来ればあの魔石をまじかる☆ウェポンに取り込んでおきたい」
特別な魔石……? もしかして魔法少女専用スキルが手に入るチャンスかもしれないね。だけど、魔石を破壊しちゃったらオタマトーンに食べさせる事はできないしなぁ……。どうやって魔石をフェニックスから抜き取ろうか?
炎を纏い復活したフェニックスが再度、私達を攻撃を始めた。
「奈々子ちゃ〜ん、まだ動けそう?」
「はい、私はまだまだいけます」
よしよし、奈々子ちゃんはまだイケる。他のメンバー達も復帰し始めてフェニックスに攻撃を始めたし、出来れば次で決めたいな……。
「ほのりんよ、一か八かの作戦があるぞ?」
お? ルル様の作戦か……? 悪い予感がするけど、背に腹は代えられない……か。
「その作戦を教えて頂戴」
「よく聞くのだ、作戦とは――」
▽
「――と言うわけで、私達が囮をした後、ほのりんさんが突っ込みますので、皆さんはフェニックスが消えた後、速やかに避難して下さい。失敗した場合、爆発に巻き込まれますので」
須藤はChrome Tempestの3人のとATLANTISの3人、そしてJDSTの4人にフェニックスを倒す為の作戦を伝えた。
「まさか魔石を狙わないと倒せないモンスターだとはな」
「そうね魔石を破壊しないといけないとモンスターは何種類かいたけど、スライム系やアンデット系ばっかりだったわね」
「厄介な相手だぜ」
Chrome Tempestの3人がフェニックスの弱点を聞いて少し驚いていた。須藤もほのりんから聞いて驚いたが、魔石が弱点のモンスターがいる事を知っていたので、そういうものなんだなと納得した。
「しかし、魔石なんてよく見つけたな」
「中村さん、老眼が進んできたのでは?」
「うるせぇ!」
「灰が上手く隠れ蓑になっていたようですね」
中村さんと油目さんが戯れていると柳瀬さんが纏めてくれる。フェニックスは1度死ぬと灰の塊になる。その灰の中に魔石が隠れてしまうので、一瞬で魔石を発見し破壊するのは至難の業だと言ってもよい。
「よっしゃ次は良いところ見せようぜ」
「ういっす、萬田さんも頑張りましょう!」
「若いって良いわね♡ぎゅーってしちゃう♡」
園田さんと末留さんが太い腕に捕まり、分厚い胸板に押しつぶされている。
「それでは皆さん、行きましょう」
須藤は仲間を引き連れ、フェニックスと単独で戦っている、ほのりんの下へ駆け出した。
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