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影の世界、影牢に囚われる

渋谷ナンバーズ逆襲編

 渋谷の会議から数日経ち、子供達は既に夏休み期間中だ。

 喫茶しぐれでバイトをした後は、まひるちゃんと水族館に行く予定だ。まひるちゃんは水族館が楽しみ過ぎて、寝付きが悪かったらしくモーニングの時間でもぐっすりと寝ていた。


 バイト終わり1時間前になると奈々子ちゃんがやって来てきた。既にルル様のおじ様バージョンが優雅に珈琲を飲みながらくつろいでいる席があり、奈々子ちゃん正面に座ると相席した。


「須藤よ。今日は絶好の行楽日和だな」

「外の気温は33°Cを越えてますよ……暑くて倒れそうです」


 ここ1週間以上30°C越えが続いており、時々猛暑日の日がある。7月でこの気温だと8月は40°Cを越えて死人が出るかもしれない。

 そんな暑くてもルル様は熱い珈琲を3杯目を飲み始める。奈々子ちゃんにはアイスカフェラテを注文し、水分を補給する。


 まひるちゃんと水族館に行く予定だけど、私の他にも奈々子ちゃんとルル様も一緒に行くことになっている。

 奈々子ちゃんに話したら是非一緒に行きたいと言われたので、まひるちゃんと相談した結果行くことになったのだ。ちなみにルル様はおまけだ。


 テレビから流れるニュース番組には、JDSTとChrome Tempest、ATLANTISが合同でレイドダンジョンに挑む話題でもちきりだった。

 当初はJDSTと魔法少女ほのりんが、合同でレイドダンジョンを攻略する話だったが、今では話がどんどん膨らみ、今ではChrome TempestとATLANTISも参加することになってしまった。

 ただ、話題だからといって、Chrome TempestやATLANTISからも何の声明もないので、極秘任務扱いとして、連日テレビやネット記事でも話題になっている。


 そんなニュース番組を見ている上の階からお洒落をしたまひるちゃんがやって来た。


「おはよう〜」

「おはよう、まひるちゃん」

「あ、ななこおねぇちゃんとるるじーだ!」

「あら、まひるちゃん凄い可愛いね〜」

「まひるよ、今日は我も一緒に行くからな」

「わーいわーい」


 とても素直で可愛いまひるちゃんだ。

 いつの間にか仲良くなった奈々子ちゃんとルル様だが、るるじーって愛称がギャップがあって良い感じだ。ルル様も嬉しいのか、まひるちゃんの前だと顔が緩んでいる。


「まひるの準備も出来たから、今日はもういいよ。いっぱい遊んできな」

「ありがとうございます!」


 時刻は丁度午前9時を過ぎたあたりだ。

 目的地は池袋にあるムーンシャインシティの中にある水族館だ。ここの複合施設には水族館の他にも昭和レトロな遊園地も入っていてずっと遊べる施設になっている。


 私も支度を済ませると、私達4人は電車で30分掛けて目的地に向かった。


 ▽


「うわーすご~い! みてみてー! ニョロニョロしてる〜」


 キャッキャとはしゃぐまひるちゃん見ていると私も楽しくなっちゃう。

 水槽の中のチンアナゴが、こちらを不思議そうに様子を覗っている。キョロキョロ頭を動かし、驚くと直ぐに砂の中へと隠れるその姿は、とても可愛らしく癒やされる。


「おお、これを見ろ穂華! このカニ大きいな! 旨そうだな!」


 まひるちゃんと似たような感想だが、いい年した英国紳士が足を広げれば3mはあろう大きなタカアシガニを見てはしゃいでいる。


 何やってるのよ……。


 周りの家族連れやカップルがこちらを見てクスクスと笑っている。


 昔来たことがあるけど、リニューアルオープンしたのか、大小様々な水槽があり、変わった生き物たちが沢山いた。私と奈々子ちゃんも珍しい生き物を見てとても勉強になった。

 オレンジ色と黒の縞模様が特徴のカクレクマノミがイソギンチャクと共生しているのを初めて知ったのだ。その事を奈々子ちゃんに伝えたら、どうやら知っていたようで、ドヤ顔で教えた私は恥ずかしくて顔が暑くなるのを感じた。


 他にも深海生物を見たり、ペンギンやカワウソを見て癒やされて心休まる時間を過ごせた。

 最近はダンジョンに籠もりっきりで、有名なハンター達と一緒にダンジョンに潜ったりと忙しい毎日を送っていたので、こんな日もアリだと思った。

 そして、忘れていた事をひとつ思い出す。


「あっ!」

「どうしたんですか?」


 私の声に反応したのか、まひるちゃんと奈々子ちゃんが不思議そうに私に振り向く。


「8月に旅行に行く計画が……」

「あ……」


 奈々子ちゃんも気づいたのか、あっやべ……って顔をしている。

 奈々子ちゃんと8月に他のダンジョンに行ったり観光しようって話をしていたのに、まさかレイドダンジョンに挑む為に合同合宿をすることになってしまったのだ。

 私達は唸りながら困っていると、まひるちゃんが元気だしてー、と声を掛けてくれたので、その可愛らしさに元気が出てきた。


 気を取り直し、私達は薄暗い水族館の中を歩いていると、奥から不良っぽい3人組の男達に道を塞がれた。


「この女がそうなのか?」

「そこにいるのは渋谷ダンジョンセンターの須藤奈々子と、専属契約している十条穂華だ」

「なるほどな。こいつのせいで……」


 え? 何この人? ブツブツ言ってるし、会話が少し聞こえたけど、この人達は私達の事を知っている?


 よく見ると、ひとりの男は帯刀しており、身なりからしてハンターかもしれない。その武器もすぐに使える状態なので、明らかな銃刀法違反である。


 私は咄嗟にまひるちゃんを背後に隠す。

 奈々子ちゃんが前に1歩出ると、坊主頭の1番体格のいい人に話しかける。


「元渋谷ナンバーズのナンバー1、不二木 荒斗。何故貴方がここに?」


 この人、渋谷ナンバーズの人? 目が血走ってて怖い……。


 奈々子ちゃんが不二木の正体を明かすと、不二木は口角を上げ話し出す。


「俺の事を知っていたか。流石に俺様は有名人だったかな?」

「私はJHAの職員ですからね。知ってて当然です」

「知ってて当然か……なら俺様の目的は分かるか?」

「知っていたらどうするつもりですか?」

「大人しく後ろの女を渡せ。そうすれば誰も怪我をする事も無く平和に解決できるぜ?」


 話が随分ときな臭くなってきたね。

 もしかして、私の正体がバレてる?


「大声を出しますよ」

「それは困るな。影山」


 不二木が仲間のひとりに声を掛けると、私の身体が急に動かなくなった。口も動かせない。動くのは眼球だけだ。


「後ろのジジイとガキはどうする?」

「ついでだから影に入れろ」

「あいよ」


 影山と呼ばれた男が手のひらを私達に向けると視界が暗闇に染まり、落下する感覚が身体を襲う。


 真っ暗な空間に落ちると、身体の自由が戻った。真っ暗だが私の【暗視】で小さな人影見える。


「まひるちゃん!」

「!? ほのかおねーちゃん!」


 ギュッと強く抱きしめる。

 安堵から泣きそうにるが、まひるちゃんが泣いていないのに私が泣く訳にはいかない。今は現状の把握が最優先だ。


「奈々子ちゃん! ルル様!」

「穂華ちゃん? どこですか? 全く見えないです」

「我は見えているぞ」


 ルル様は兎も角、私は奈々子ちゃんがいる方向へ歩き、腕を掴む。


「わっ! ……びっくりした……穂華ちゃんですよね?」

「そうだよ。まひるちゃんもいるし、すぐそこにルル様もいるよ」

「? ルルさまいるの?」


 あ……ここではルルデミアって呼ばないといけないんだった……。


「ルルデミアだよ、近くにいるから安心して」

「……うん」


 暗闇の中で不安なのか、まひるちゃんの元気がない。ここはいったいどこなのだろうか?


「ルルデミア、この空間って何? 影山っていう人のスキルだよね? これ」

「そうだ。これは影を操るスキルのひとつ【影牢】と呼ばれるスキルで、このスキルは対象を影の中に引きずり込み捕らえることができる。そして、我らを拘束したスキルは【影縛り】だな。恐らく影山と呼ばれた男は【影法師】のクラス保持者だ」

「影法師……影を自在に操るクラスですね。かなり厄介な相手です」

「ここから出る方法はあるの?」

「強い光を出せば出る事は可能だ」


 強い光……。まじかる☆グリッターネイルの光なら確実だね。しかし懸念材料もある。まひるちゃんの存在だ。

 ここで私が変身すると確実にバレてしまうだろう。それでも、まひるちゃんの安全を確実にする為には覚悟を決めなくてならない。


「……変身しよう」

「穂華ちゃん。いいんですか?」

「まひるちゃんには口止めに甘いお菓子買わないとね〜」

「お菓子? なになに? 食べたーい!」


 真っ暗でもルル様に抱っこされて安心しているのか、お菓子に反応している。


「まひるちゃん、少し眩しいからお目々を瞑ってくれるかな?」

「はーい」


 まひるちゃんは目を瞑り、両手で顔を隠す。  


「まひるの事は安心せよ。我が責任を持って守ろう」

「頼んだよ。それでは……」


 私は影の世界【影牢】の中で秘密の呪文を唱えた。


いつもお読みになって下さりありがとうございます。大したことではありませんが、活動報告にご報告がありますので、お暇な時にお目を通して下さると嬉しいです。

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