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新宿2丁目にやって来たが…

少しお下品な表現があります。

 まじかる☆ゲートから出ると、そこは渋谷ダンジョンゲート前だった。

 流石に会議室に作ったダンジョンゲートから出る事はできなかったのは残念だけど、それでもいつでもどこでもダンジョンゲートを生成し、行ったことのある場所へと移動出来るのは、革命的なスキルだと思う。

 

 突然渋谷ダンジョンゲート前に私達が現れると、ゲート前に列んでいたハンター達から歓声が響く。

 本来ならあり得ない組み合わせの豪華メンバーがゲートから出て来たので、私達を目撃した人は驚いたのだろう。


 あっという間に人集りが出来るがマイクさんがスキルを発動させたのか、私達の周りから自然と人が離れていく。

 マイクさんのスキル【神域】の効果には人を寄せ付けない効果がある。私が感じるのは神々しくて近寄り難いオーラを感じるので、そのせいで人が避けているのだと思う。


 非常に便利なスキルだ。是非欲しいスキルなのだが、グリフィスダンジョンのメジャーアップデート前のスキルなので、取り方が不明なのは残念だ。


 十戒のように道が開ける光景は2度目だけど、いつ見ても凄い。その中を歩く私は、居心地は最悪だけどね。



 渋谷ダンジョンセンターの会議室に戻ると、先程、気絶していた大臣が顔を真っ赤にさせて私達を出迎えた。何だか怒っているが、正直面倒くさいのでスルーして着席した。


 みんなが席に着席するのを確認すると、ルル様が私達の前のテーブルにゆっくりと降り立ち、太く渋い声で話しだした。


「約1ヶ月の間に限界まで鍛え上げ、竜王アークバハムートを討伐しようではないか。もし、合同合宿について行けないのであれば無理に参加しなくてもよい。これは強制ではないからな」


 ルル様はみんなに煽るような口調で話すけど、これも狙って言ってるんじゃないかな? そんな風に言われて逆にやる気出してる人がチラホラ見えるし。


「おーおー! 言ってくれるじゃねぇか! 猫モドキ! 俺はリベンジも兼ねてるから絶対参加するぜ!!」

「ね、猫モドキだと……」


 ケルビンさんにルル様が猫モドキって言われて、地味にダメージ受けているのが印象的だった。本人は見た目にコンプレックスとかあるのだろうか?


「そうね、私達もあの時の借りを返すチャンスよ。ね、マイク」

「……ああ、そうだな」


 マイクさん達もやる気はあるみたいなので、細かい調整は明日にでも決まるだろう。

 JDSTもChrome TempestもATLANTISもダンジョンに潜るのが仕事なので、合同合宿と言ってもやる事は変わらない。ダンジョンに行ってモンスターを倒すだけだ。


 事務的な話し合いが続き、あっという間に夕方になってしまった。


 お尻痛いな……。


 ずっと座っていたのでお尻が痛い。まじかる☆ドレスでお尻へのダメージは軽減してくれないのかしら?


 さて、ある程度話しが纏まり、後は事務方で調整する事になり、本日の会議がお開きになったところで萬田さんに捕まった。捕まったというより、抱き締められて圧死しそうな勢いだ。


「ほのり〜ん♡ この後暇でしょ? 私のお店に来ない? 勿論いっぱいサービスするわよ?」


 何故この後暇だと決めつける……。まぁ暇だけどね。


「えっと確か、萬田さんのお店って大人のお店ですよね?」

「やーね♡性サービスはしていないわよ。ただのゲイバーよ♡」


 ただのゲイバーってパワーワードだなと思いつつ、女性の私が行ってもよい場所なのか疑問に思う。あそこは男性が行くようなお店ではないのだろうか?


「あの……私が行っても大丈夫なのでしょうか? その……私女ですし……」


 萬田さんのつぶらな瞳が私を見てニコニコ微笑む。


「もう♡ほのりんったら♡うちの店の子は全員貴女のファンよ! ほのりんが来たらみんな昇天しちゃうと思うわ♡ほら行きましょ♡」

「あっちょっと……」


 太い二の腕にがっつり抱えられ、無理やり会議室から連れ出された。


「ほのりんさんも大変ですね、私も同行します」

「あ、ありがとうございます」


 母も来てくれるようだ。

 萬田さんもATLANTIS所属だから来てもおかしくないか。

 ルル様も背後からゆっくり飛びながらついて来る。マイクさんや中村さんは来ないようだ。いや来れないだろう……。

 あとは奈々子ちゃんに任せ、私達は萬田さんのお店に行く事になった。

 

 私は好奇の目に晒されながら渋谷ダンジョンセンターを出る。魔法少女風の衣装に身を包んだ、筋肉ムキムキの人に抱えられているのだ。普通ではない。

 タクシーに乗り込むと、ミニバンなのに非常に暑苦しい。しかも萬田さんからいい匂いがするので、何故か女とし負けてる気がするのは気のせいだろうか?


 私も何か香水をつけた方がいいのかな?

 モンスターの素材で香水を作っている企業もあるくらいなので、少し調べてみるのも良いかもしれない。


 渋谷から新宿2丁目へと到着したのはそれから30分後だった。

 タクシーから降りると、既に日は暮れており眩しいくらいネオンが輝いている。

 夜のお店の前には必死にお客さんを呼び込む声が聞こえ、サラリーマン達がキャバクラに入って行く様子が見えた。


「私の店は直ぐそこよ♡さぁ行きましょう♡」


 カップルや外国人観光客に写真を撮られながら進むと、ピンク色のネオンが辺りを照らし出す明らかにヤバい場所へと辿り着いた。


 ごくりと生ツバを飲み込む。


 デカデカと看板には『ちんだらけまんだーらんど』と書かれていた……。


「ここよ♡」


 え!? ここに入るの?


 助けを求めるように母に視線を送るが、特に臆する事もなく店内に入って行く。


 お母さん。平然とゲイバーに入って行く貴女を知りたくなかったよ……。


 萬田さんにガッチリと腕をホールドされているので逃げられる筈もなく、私は引きずられるようにピンク色のネオンに照らされた入口へと入って行く。



「「いらっしゃいませ〜♡」」


 店内に入ると美しい? 女性達が大勢迎えてくれた。


「あらママが来たわよ〜♡」

「おかえりなさい〜」

「あら、その子ってもしかして!?」


 わらわらと元男性? 明らかに何も化粧もしていない普通の男性もいるが、そんな彼らは私達の周りに集まって来る。

 私はどうして良いか分からずビクビクしていると萬田さんが手を叩き、周りの従業員に指示を出す。


「今日は超VIP客をお連れしたわ♡ スペシャルコースで行くわよー♡」

「「スペシャル入りますーす♡」」


 え? スペシャルコースって何? 何が始まるの?


 店内の奥にある広い席に案内されると、次々と食事が出される。

 フルーツの盛り合わせから始まり、オニオンリングタワー、生ハムメロン、チーズの盛り合わせ。そしてもずく酢……。


「ほのりんって未成年じゃないでしょ?」

「分かるんですか?」

「女の勘よ♡」


 萬田さんが私が成人だと見抜いた。

 正直驚いた。変身後の私はかなり幼く見える。それでも私を成人と判断したのには何か理由があるのだろうか?


「私って大人っぽく見えます?」

「見えないわよ。普通に青臭いガキに見えるわ♡」

「なら何故私が成人だと分かったんですか?」

「そうね、会議室に入ってきた時の歩き方とかしら? ウォーキングの訓練や指導を受けた事がある?」

「高校や大学もマナー教室があったので指導は受けましたよ。そういうのは煩かったので」

「あらやだ女子校? 羨ましいわ〜♡私、中高男子校でイカ臭かったわ〜♡」


 そんな情報いらん。

 まぁ、夢を壊すようで悪いけど、女子校は女子校で臭いんだけどね。


「ほのりん何飲む?」

「えーと……」

「クリュグロゼにしましょう♡」

「え? えええ……」


 私が決める前に萬田さんが決めてしまった。

 あ然としている私に母がやれやれといった感じで話しかけてきた。


「萬田と飲むといつもこんな感じですよ」

「そうなんですか?」

「普通の人が萬田と飲むと金があっという間に消えます。でも今日は萬田のおごりらしいので、じゃんじゃん呑むと良いですよ」

「そうよ♡じゃんじゃん呑んでね♡私、ステージの準備があるから席を外すわね! それじゃ♡」


 そう言うと、萬田さんは優雅にスタッフ専用の通路に消えていった。


「十条代表は萬田さんと長いんですか?」

「私ですか? ん〜、10年くらいの付き合いですね。私が息抜きでジェンダーフリーバーに通ってた時に、その店の経営者が萬田だったんです」

「え? 萬田さんってこの店以外にも経営してるんですか?」

「ええ、彼はこの辺じゃ有名で、いくつもお店を経営していますよ。萬田は性の悩みを抱えている人達を集めて相談にのったり、仕事を与えたりしているの」


 ほほ〜、萬田さんってそういう人物なんだ。

 世の中には身体は男性だけど、心は女性だったりその逆だったり、どっちの性か揺れ動いて悩んでいる人が大勢いる。家族に打ち明けて受け要られる場合もあれば、拒否され絶縁される場合もある。

 そんな人達に手を差し伸べている萬田さんは、彼、彼女にとって救世主なのだろう。私も萬田さんを見る目が変わったと感じる。


 赤いドレスを着たお姉さんがクリュグロゼを私と母のグラスに注ぐ。


「それじゃ乾杯」

「「乾杯!」」


 私達に付いた女性? にもお酒を振る舞ったが、全員が一気飲みして1本40,000円のクリュグロゼ一瞬で消え去った。そして追加でテーブルにボトルが4本置かれる。


 腕毛の濃い人が私の横に座り、お酌をしてくれた。


「私、魔法少女ほのりんの大ファンなの♡お近づきの印にこれどうぞ♡」


 名刺を貰い内容を確認すると、源氏名だろうか、穂華と書いてあった。


 私の本名と同じかーい!!


 思わず心の声が外に漏れそうだったが、自制した。


 そういえば、ルル様静だけどこにいったのかな?


 辺りを見渡すと、美しい女性達にもみくちゃにされていた。

 ルル様は必死に抵抗するが、1階層のモンスターにも勝てないルル様では、ここの人達には抵抗できなかったようだ。


 そうこうしているうちに店内が薄暗くなり、天幕が上がるとステージがライトアップされた。


 そして、リズミカルな音楽が鳴ると派手な衣装に身を包んだ人達が出てくる。その中には萬田さんもいた。


「レッツ♡ショータイム♪」


 店内にいる従業員もお客さんも手拍子をして盛り上がると、私も楽しくなり一緒に手拍子をして楽しんだ。

 母も楽しいのか立ち上がり踊っている。


 少し呑み過ぎなんじゃないですかね……。


「萬田さんってお店の経営で忙しいのに、なんでダンジョンに潜ってるんだろう……」


 思わず口から漏れた疑問に、隣りにいる毛深い穂華が私の疑問に答えてくれた。


「ママには長年の付き合いがある友達がいるんだけど、その人の為にダンジョンを潜っているみたいよ?」

「アイテムでも探してるのかな?」


 ダンジョンに潜る理由は様々だが、大きく3つあると言われている。ひとつは金、そして、戦闘、最後にアイテムだ。

 アイテムは様々な効果をもたらす物が存在する。例えると、どんな怪我や病気を治す薬や原子力に変わる新エネルギー、自身に様々なスキルを身に着けさせるスキルクリスタルなど様々だ。

 萬田さんが友達の為にダンジョンに潜っているって事は何かを探していると推測できる。


「どんなアイテムか知りませんか?」

「確か心の病気だって聞いたことがあるわ」

「そうですか」


 心に聞く薬か……。どんな症状か分からないと萬田さんの手助けができないね。1ヶ月の合同合宿中に話を聞いてみようかしら?



 今夜は楽しいダンスのステージを見て楽しめた。いくらお酒を呑んでも酔えない私でも楽しかったし、色んなことを知ったけど、母がジェンダーフリーバーに通っていた事が最大の衝撃だった。


 

ゲイバーに女性が行くと凹みますのでご注意を。

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