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英国紳士現る

 渋谷ダンジョンゲート前に到着すると、JDST達がメディアに囲まれインタビューを受けていた。

 そんな彼等を横目にそそくさと私は渋谷ダンジョンセンターの裏口から入り、スマホの通話ボタンを押して奈々子ちゃんに今帰った事を伝える。


「もしもし〜? 帰ったよ〜。アイテムの受け渡しできる?」

《穂香ちゃんごめんなさい、ちょっと今、手が離せなくって……》

「なら明日の昼前でもいい?」

《助かります! 明日お待ちしておりますね!》


 ぷつりと通話が切れた。奈々子ちゃんの後ろから大勢の人の声が聴こえたので、とても忙しいのだと思う。

 アイテムの受け渡しが出来ないのなら特に用事が無いので私は渋谷駅に向かい、喫茶しぐれに帰る事にした。


 ▽


「ただいま〜」

「おかえり。風呂沸いてるから入ってきなー」

「はーい」


 夕食はダン活を始めてから作って貰っていない。帰りが遅くなりがちだったので、咲さんに負担を掛けたくなかったからだ。

 服や下着を洗濯籠に投げ入れ、早速浴室に入りシャワーで汚れを落とす。

 魔法少女に変身している間は汚れが魔法少女の衣装に付着しているらしく、変身を解くと汚れが身体に付着していない事が分かっている。

 なので、思ったより身体は汚れていないのでお風呂も手短に済ませる事が出来るのだ。


「あ〜、いい湯だ〜」


 お湯に濡れた肌を見ると自然に笑みが溢れる。若返りの実で23歳から18歳ぐらいに若返った事で、肌の張りが見て分かるくらい元に戻ったのだ。

 

 うふふ〜、奈々子ちゃんを見て私も使ってみたけどここまで変化するなんて思っても見なかったよ。奈々子ちゃんが修善寺ダンジョンにもう1度行きたいって気持ちも分かっちゃうな〜。

 まじかる☆ゲートを使えば修善寺ダンジョンのボストレントがいる部屋に行ける筈だし、試しに1度行ってみようかな?


 そんな計画を立てつつ風呂から上がると、明日のモーニングの準備もあるので直ぐに就寝した。




 翌朝、モーニングの準備を終え喫茶しぐれを開店させるとお客さんが入店する鈴の音が鳴った。

 今日も鈴木さんが一番乗りかなと挨拶と同時に入口を見ると見慣れない男性が立っていた。

 その男性の見た目は豪華な仕立てのスーツを着ており、年齢は60代後半だろうか? 金色の瞳を持った白髪交じりの英国紳士が立っていた。


「ふむ、良い店だな」


 あれ? どこかで会った事があるかな?


 その声質、喋り方に佇まい。どこかで会った事があるような気がするけど、こんな紳士は会った事が無い。見た目も外国人なのに日本語ペラペラだしいったい何者なのかな?


「おはようございます。こちらの席へどうぞ」

「うむ」

「こちらがメニューです」

「この店のおすすめを頼む」

「畏まりました」


 おすすめと言うお客さんは珍しくない。この場合は玉子サンドセットのブレンドコーヒーを提供するだけなので、深く考えなくてもいいのだ。


「お待たせしました。当店おすすめのモーニングセットの玉子サンドとホットブレンドコーヒーです」

「ありがとう……どれどれ」


 英国紳士は玉子サンドを一口食べ目を閉じながら味わうよに咀嚼している。


 美味しそうに食べるその姿を見て私は、年齢はかなり上だけど、こんなおじ様とお付き合いしても良いかな? なんて事を考えてしまった。


「ふむ……このブレンドコーヒーとやらも中々に味わい深い……」

「……? 今までに珈琲をお飲みになった事が、ございませんか?」

「我は始めてだな。ほのりんから貰った携帯バランス栄養食2本満足しか食べたことがないな」


 ……は? 今なんと? 

 私の聞き間違いじゃなければ、この英国紳士は私から携帯バランス栄養食2本満足を貰ったと言った? ……って事はこの人ってまさか?


「あの……ルル様ですか?」

「フハハハ! 朝から美味い食事を取るのも気分が良いな! これなら毎日通っても良さそうだ」

「ちょっ! なんでルル様がこっち側にいるのよ! 私が変身していないと現れない仕様じゃないの?」

「ナヴァトラナの力の影響か、我も外界に出られるようになった。更に肉体までこの通り!」


 ぐっ……一瞬でも心ときめいた私を殴りたい。まさか英国紳士の正体がルル様だなんて……。そんな事より、ルル様が騒いでいると何かとマズイじゃん。少し大人しくしてもらわないと……。


「あのルル様?」

「なんだほのりん?」

「ここでほのりんって言うの止めません? 身バレする可能性ありますし……」

「ふむふむ。良かろう穂香よこれで良いかな?」


 ちっ……ルル様って絶対分かっててやってるよね。私の反応を見て楽しんている節がある。

 兎に角、私もルル様の事をルル様と呼ぶのも危険があると思うのよね。


 実はルル様の姿をしたぬいぐるみが売っていたりする。アミューズメントパークの景品だったり、ガシャポンのキーホルダーだったりグッツは様々で、魔法少女の動画が切っ掛けで人気が出たらしく今では魔法少女より人気があるらしい……。


「ルル様の事もそのまま呼ぶと危険なので別の呼び名を教えて下さい」

「我はこのままでも良いのだがな」

「いやいや……ルル様って結構有名らしいですよ。見た目が違うけど、声質や喋り方でバレると面倒なので何とかして下さい」

「仕方ない、我の本名はルルデミア=ロー=ゲーデルバイセルだ」

「ルル……え??」

「ルルデミア=ロー=ゲーデルバイセルだ」

「長い……」

「ルルデミアと呼ぶ事を許す」

「は、はぁ……」


 見た目は変わっても中身が同じなので少し面倒くさい。そんな面倒なやり取りが続く中、他のお客さんが入店して来た。鈴木さんだ。


「いらっしゃいませ~」

「あれ? 今日は1番乗りじゃなかったかー」

「フハハハ! 我が1番だ!」


 誰かこの人止めてよ……。本当にバレたら洒落にならないってば!


「おお! 外国の方ですか? 日本語がお上手ですね、しかも魔法少女のお供のルル様の声にそっくりじゃないですか」

「我こそがルル様張本人だからな! フハハハ!」

「これはこれはルル様! もし宜しければ相席宜しいですかな?」

「構わんぞ、外界との情報交換も大事だからな。穂香よ、この物にも同じ物を出してやれ」


 ノリが良過ぎでしょ……まあ、鈴木さんも玉子サンドセットなんですけどね……。ハイハイ、少々お待ちを〜。


 私がカウンターの中に入ると、咲さんとまひるちゃんがやって来た。朝から何やら騒がしかったので降りて来たのだろう。


「穂香、あの素敵おじ様と知り合い?」

「いや……まぁそうですね。知り合いっていうか何というか……」

「あのおじいちゃん、おめめがルルさまそっくりだね」

「あははは……そうだね……」


 まひるちゃんまでルル様を知っているのかい……どんだけ人気あるのよ……、あの英国紳士風のおじ様の正体が白い猫とオコジョを足して2で割った姿とは誰も想像できないだろうなぁ。


 私はヒヤヒヤしながらも玉子サンドセットを作り鈴木さんがいるテーブルに配膳を済ませる。

 何故か2人は意気投合し、今のダンジョンと政治、世界情勢などの難しい話をしていた。


「ダンジョンの存在意義とは人の進化を促進する為にある。制限なく人をダンジョンに向かわせ、新たなステージに上がる必要がある」

「しかし、ダンジョンその物が謎に包まれており、ダンジョンがいつ我々に牙を向くか分かりませんよ」

「なに、いずれ新たな出来事が起こる。そうなれば人類も黙ってはいないだろう」

「その話が本当なら私達は新たな時代の幕開けを垣間見れるわけですね! いや〜凄い!」


 鈴木さんもノリが良いな……。


 私は黙って2人から離れて、カウンターに戻り朝のニュースを見始める。


《朝のZAPニュースです。昨夜日付が変わる前にJDSTから発表された内容によりますと、近く魔法少女ほのりんさんとレイドダンジョン攻略を共同で行うと発表されました》


 ぶっ! げほっげほっ! え? 何これどう言う事よ! 確かにルル様とはそんな話はしていたけど、JDSTとは話を詰めてはいなかったじゃん! ……中村さんとルル様が何やら話し込んでいたけど、まさか奈々子ちゃんとの関係もバラした挙げ句、レイドの確約までしてるなんて信じらんない!


《JDST渋谷ダンジョンの攻略を行っている中村さんのインタビューです》

《えー、我々は魔法少女ほのりん殿の使い魔でもあるルル様と会談する機会があり、ダンジョンの機密情報と交換でレイドダンジョンの協力を約束しました》

《ダンジョンの機密情報とはどんな物なのでしょうか?》

《今は公表できませんが、一部の情報は我々の想像を遥かに超えた内容であり、信憑性も高くダンジョン庁を始めIDAの協力の元、調査を進めたいと思っております》


 ダンジョンの機密情報って何よ……ルル様からそんな事を1度も聞いた事がないわよ。

 ダンジョンの100層の先があるのかも分からないし、ナヴァトラナを集める理由すらイマイチ分からないでやっているのに……。


 私は頭を抱えていると、鈴木さんは仕事の時間が迫ってきているのかお金を払うと足早に店から出ていった。


「あの鈴木と言う者は随分と物分りが良い人間だな」

「ルルデミアがフレンドリーすぎるんです」

「ところでそこのお嬢さんはこの店の従業員か? そして小さいのは妹さんか?」


 私がギョッし、後ろを振り返ると咲さんとまひるちゃんが立っていた。先程からルル様が気になるのかずっと様子を伺っていたのだ。


「え? お嬢さんって私? お嬢さんって年齢じゃないけどね〜。私は穂香の伯母で、この店のオーナーをしている梶田咲って言います、この子は娘のまひるです」

「かじたまひるです!」

「おお〜これはご丁寧に、我の名はルルデミア=ロー=ゲーデルバイセルと申す。以後宜しく頼む」

「ルルデミアおじちゃんはおしごとなにしてるひとなの?」

「我か? 我はダンジョンで仕事をしている。そして穂香のパートナーでもある」

「あらま!? 穂華ったら年上好みだったの? ダンジョン関係のお仕事ならお金を持ってそうね、スーツも高そうだし……」

「ちょっと! 私とルルデミアとはそういった関係じゃないから!」

「何を言うか穂香よ、我との相性は抜群ではないか。お主を一人前の女にしたの我ではないか? 現に我がいないと何もできないであろう」


 おいー! 余計な事を言うなー! 咲さんが乙女な表情してるじゃないか! 絶対変な誤解されてるじゃん! こらー!


「穂香。年の差婚でも別に普通よ。私から倫成と恋華さんに伝えておくわ、そうすれば無理なお見合いとかされなくて済むと思うし!」

「ちょっ! 咲さんも余計な事はしないで! 私は大丈夫だから!」

「照れ屋さんなんだから」

「ほのかおねーちゃん、おかおがまっか!」


 ひぃー! まひるちゃんまで! 止めて! 恥ずかしい! 死ぬーー! 

 

 胸の奥からナヴァトラナが疼くと必死で抑え込み、この状況を何とか収めるのにかなりの時間を要してしまった。 



読んでいただき、ありがとうございます。

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[気になる点] >私は穂香の伯母で、この店のオーナーをしている梶田咲って言います 親の妹であれば「叔母」
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