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ルル様トチ狂う

 渋谷ダンジョン31層をスタートして早3時間、現在は37層を進行中だ。

 ルル様にナヴァトラナの宝石、金星のダイアモンドを捧げてからルル様がパワーアップした結果、ダンジョンの攻略スピードが飛躍的に上昇した。

 いくつかルル様には新たな能力が開花し、その1つに祭壇の位置が大凡分かるといった力を得たのだった。


「ルル様〜、次どっち?」

「そこの大木を越えた先に反応があるぞ」

「了解〜♪」


 モンスターとの戦闘回数は減ったけど、モンスターを見つけ次第確実に倒す。ドロップする素材はお金にもなるし、稀にスキルクリスタルや回復アイテムも落とすのでしっかりと回収していく。


 祭壇がある場所へ向かうと、既に1組のグループがボスと戦闘を繰り広げていた。

 そのグループは迷彩服の上に、タクティカルベストを来ている。


 あれは確か……JDSTの人達だ。


 37層のボスは巨大なゴリラみたいなモンスター1匹のみで、その巨大からは想像できない程の速さでJDSTの隊員達を殴り飛ばしている。


 うわ〜あの攻撃は痛そうだな……あれをうけても死なない隊員さん強すぎだよね。

 

 JDSTは練度が高く、10人以上で行動しているにも関わらず、ひとりひとりが強者のオーラを放っていた。

 そして紅一点、周防院 萌さんがスキルを使用し巨大ゴリラを切り刻むと、モンスターの叫び声と共に光の粒子へと変わっていく。


「どうだい? 我々も中々強いだろう?」


 戦闘中でも、しっかりと私に気がついていた中村 俊夫さんが話し掛けてきた。


「とても強いですね。流石JDSTです」

「ははは。君に助けられた後は全隊員を鍛え直したからね」


 私に助けられてプライドが傷ついたのかな? でもこれだけ強いならもっと先に進んでいてもおかしくないハズなのに……。


 隊員の命を犠牲にすることなく、確実に安全にダンジョンを攻略しているせいかダンジョンの攻略スピードは決して早くはない。

 メディアではその攻略速度に対して叩かれているが、私から見れば彼らの命は変えの効かないモノで、無理に攻略して殉職してしまっては残された遺族達が可哀相だと思う。

 ……私の場合はルル様が急かすので、1日で10層を攻略とかやって死にそうになった事が何度もある。

 今は活動休止したせいか、ルル様はそこまで急かす事はなくなったけど、早く先に進んでほしそうな目をしている。


 素材や宝箱の中身を回収している隊員の中からひとりの女性隊員が、こちらに駆け寄って話し掛けてきた。


「ほのりんさん! お久し振りです!」

「周防院さん、お久し振りですね。以前より動きが早くなってますね」

「フッフッフッ! だいぶレベルも上がってきたので以前のようにはなりませんよ!」


 そういえば初めて会った時ってメジャーアップデート前の41層だっけ? この人達って日本のハンターの中でもトップクラスの強さなんだよね。忘れてたよ。

 詳しいランキングは覚えないけど、100位以内に中村さんと周防院さんは入っていたはず。

 そもそもランキングの計算ってどうやって算出してるのかな?


「ねぇルル様。ダンジョンランキングの順位ってどうやって算出しているの?」

「単純にその人物のレベル、クラス、装備、取得スキルなどで決まる。特に影響を受けるのがスキルだな。これにはレアリティが存在し、多く所持しているとランキングポイントが加算され上位に上がりやすくなるぞ」

「へ〜そうだったんだ」


 ルル様の説明を呑気に聞いていると、中村さんが怖い顔をしてルル様に話し掛ける。


「ルル様、先程の話は本当でしょうか?」

「確かにそうだが……お主は?」

「失礼、私はJDST所属、中村 俊夫 一等陸尉であります。是非その偉大な知識を我々にもご教授お願いできますでしょうか?」

「むむむ。しかしな……」

「ルル様! 日本政府の為にお力を貸していただければ、我らJDSTも魔法少女ほのりん殿にお力をお貸しする所存! 何卒宜しくお願いします!」

「ほう……ほのりんに手を貸すとな?」


 ルル様目がキラリと輝く。

 え、ちよっと待ってルル様。何かろくな事を考えてないよね? 他人と関わってもメリットよりデメリットの方が多いんですけど!


「ならばレイド攻略要員として何れ招集を掛ける。その時にほのりんに手を貸すのだ」

「レ、レイドですか……?」

「そうだ、できぬか?」

「1度話を持ち帰りたいのですが宜しいでしょうか?」

「構わぬ。お主達も力をつけねば厳しい場所だからな」


 何勝手に話を進めてるのよ……中村さんレイドって聞いて明らかにテンション下がってるじゃん……。

 あんな場所に行くってなると死ぬ可能性が高いし、人数が多くなると攻略出来るかもしれないけど、怪我人も増えそうだね。


 流石に中村さんも上に指示を仰がないといけないレベルだと判断したみたいで、日本人お得意の話を持ち帰る作戦だった。


「我らと連絡を取りたかったら渋谷ダンジョンセンターの須藤に話を通せ。彼女なら唯一我らと直接連絡が取れる相手だ!」

「ちょっとルル様駄目だって!」


 何をトチ狂ったか、私と奈々子ちゃんの関係をバラしてしまった。

 慌てて止めるが時既に遅く、それを聞いた中村さんと周防院さんは目を見開いている。

 

「なんですって!? その話は本当ですか! 周防院! 今の話を聞いたか!」

「はい! 確かに聞きました!」


 おいーー! ルル様何してくれとんのじゃー!

 奈々子ちゃんは確かに協力者だけど、迷惑掛けていい人じゃないぞ!

 あああ……、奈々子ちゃんが死んだ目で私に無言の圧力を掛けてくる絵が浮かぶよ……。


 頭を抱える私を余所に、中村さん達はここぞとばかりにルル様に質問攻めをしていた。

 JDSTはダンジョンの秘密を暴く為に結成された組織でもある為、ダンジョンの知識を多く持つルル様に目を付けたのかもしれない。


 ダンジョンゲートが開いているのでこのまま次の階層に向かっても良かったけど、ルル様が中村さんと話し合い、40層まで合同でダンジョンを攻略する事になってしまった。


「ルル様、何を考えているの?」

「レイドを攻略する為には奴らの協力が必要不可欠だ。寧ろ少ないくらいだ」

「そんなに難易度が高いの?」

「出来れば魔法少女専用クエストを、あと2つはクリアしておかないと厳しいな」


 私自身の強化も必要な程の難易度なら、JDSTの協力は必須かもしれない。

 保険を掛けるならマイクさんのチームも入れたいけど、協力してくれるかな?


 今後の事を考えながら私はJDST達と暫く行動を共にする事になり、次の階層へ進む為にダンジョンゲートに飛び込んだ。



 渋谷ダンジョン38層。

 どこまでも続く草原エリアが広がる。

 360°緑の草原が広がり、太陽は沈み掛けている。外の世界と時間は連動しているらしく、現在の時刻は5時頃といったところか。


「周防院さん、もう一度確認したいのですが、私が倒したモンスターから得られる魔石やアイテムは私が総取りして良いですよね?」

「はい。構いませんよ。私達は12人で行動してますので、ほのりんさんに回ってくるモンスターは少ないと思いますが」


 1対12ならJDSTの人海戦術でモンスターを総取りされてしまう可能性があるが、私も指をくわえて見てるだけではない。

 回収できる物は回収して元を取るつもりだ。


「祭壇の位置は向こう側ですね」


 ひとりの隊員が謎のアイテムを使用し、正確に祭壇の位置を特定していた。


「ルル様、あの人の言っていることって合ってる?」

「うむ。確かに合っている。あ奴が持っているアイテムはアーティファクト【朱門のコンパス】だ。1日1度だけだがボス部屋にある祭壇の位置を特定できる」


 おお〜そんなレアアイテムあるんだ。

 そもそもアーティファクトって何? 初めて聞いたんですけども!


「流石ルル様、このアイテムまで知っておられるとは恐れ入ります」

「我の眼を持ってすれば分からぬ事はない。フハハハ!」


 まぁ、祭壇の位置も分かったし、加速を使ってモンスターを狩りつつボスがいる場所に向かおうかな。

 JDST達はあたりを警戒しつつ向かうみたいなので移動速度が低い。一緒にいたら日が暮れてしまうのだ。


「私は先行してモンスターを狩ってきます」

「そうですか……。本当は一緒に行動して貰いたいが、仕方がない。祭壇の前で落ち合う事にしよう」

「はーい」


 私は中村さんと周防院さんに断りを入れ、先行してモンスター狩りを始めた。

 一緒に行動しても美味しくないもんね。

 先に祭壇前で待機してよう。



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