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レアクラス

「十条さんってもしかしてランカーか?」


 有家さんが私に疑念を持つのは至極当然の事よね。この状況を打破するにはどうしたら良いか……。


「私はランカーではないですよ」

「しかし、あの攻撃力は……」

「あ…えと、特殊なアクセサリーがあって、一瞬だけ強くなる物を持っているんです!」


 大法螺を吹いたけど、これで乗り切るしかない!

 お願いこれ以上詮索しないで!


「……まぁいい。ダンジョンでは様々なアイテムが手に入る。十条さんが持っていると言うアクセサリーも、稀にダンジョンで手に入るブースター系の一種だと思う。これらのアイテムは高価だがとても高い性能を持っている。ダンジョンで生き残る為には、売らずに使う事を考えた方が、早く確実に稼ぐ近道になるから覚えておくんだ」


 そんな効果のあるアクセサリーがあるんかーい!

 運が良かったのか、嘘が本当になった……良かった。次からはスキルを使っても手加減して戦おう。


 ダンジョンインストラクターの有家さんの的確な指導によって、ダンジョンで生き残る為のいろはを丁寧に教えて貰った。

 私は実践で覚えた事が多かったけど、こうやってプロの視点から指導してもらうと新たな発見もあった。

 特に勉強になったのは、モンスターのドロップ率を上げる方法のひとつに、モンスターの部位破壊を狙うと良いそうだ。

 モンスターの牙が欲しいなら、牙を破壊してから倒すとドロップしやすいらしい。

 私の場合は魔法で倒した時、モンスターから素材を手に入れた事は無かったような気がする。

 魔法で倒すと、スキルクリスタルかクラスチェンジオーブが手に入る事が多く、モンスターから得られた素材は肉弾戦で戦った時だけドロップした記憶がある。

 今後そういった事を意識しながら戦うのも良いかもしれない。


 運良く祭壇がある部屋にたどり着くと、紅いダンジョンゲートが開き、3体のゴブリンが出て来た。

 ゴブリン3匹相手に有家さんと末留さんと南本さんの3人でゴブリンと戦う事になっている。

 私はレンタルのバットを破壊した為、待機するように命じられている……まあ仕様がないよね。


 新人2人は人型のモンスターと戦うのに抵抗があるのか、ぎこちない動きで戦い、全てを倒すのに30分くらい掛かった。

 南本さんに限っては震えており、顔色が悪い。

 ゴブリンの見た目は兎も角、人の子供の背くらいの大きさで、ビッグイヤーラビットと違ってゴブリンは知能が高いので戦い辛いのだ。


 ダンジョンゲートが開き宝箱が出現する、新人2人は大はしゃぎで宝箱を開けると……。


「クラスチェンジオーブが2つか! 運が良いなお前達! これを使えばパーティーに困る事も無いし、クラス次第では大手クランに誘われて金に困る事もなくなるな!」


 もの凄い幸運の持ち主だなぁ〜。まぁ私はクラスチェンジオーブは要らないんだけどね。


 私の考えを他所に、新人2人は恐縮してしている。私は彼らの側に寄り、事情を聞く事にした。


「どうしたんですか?」

「あの……十条さんの分が無いので、この2つの高価なアイテムをどうしようかなと」

「そうそう、有家さんは要らないそうなんで、どうしようかと……」


 私は要らない。

 折角だし2人に使って貰って、今後のハンター生活に使っても貰った方が良いと思うの。


「幸先良い証拠だね、私は辞退しますので2人で使って下さい」

「良いんですか!?」

「ありがとうございます!」


 2人はコメツキバッタのように頭を何度も下げる。

 どんなクラスに成れるなかは知らないけど、運試しに使っても良いし、鑑定してから使っても良いだろう。


「さて、話し合いも済んだ事だし今日はこの辺で終了だ。次回参加する人は中級コースに申し込んでくれよ!」


 有家さんは爽やかな笑顔を振り撒くと、ダンジョンゲートに入って帰って行った。


 さて、私も帰ろうかと思った瞬間、新人2人に呼び止められた。なんだろうか? 感謝の言葉は受け取ったので特に用事は無いはずだけど。


「十条さん、僕達これからこのオーブを使おうと思うのですが、立ち会いをお願いしたいです!」

「え? 立ち会い?」

「はい。折角ですので、どんなクラスチェンジオーブか知りたくはありませんか?」


 確かにどんなクラスチェンジオーブか気になる。

 鑑定しないで使うとなると、本人との相性もあるのでハズレクラスだった場合、再度クラスチェンジオーブを探し使わないといけない。


「ダンジョンセンターで鑑定しなくても大丈夫

?」

「ダンジョンセンターの鑑定は時間が掛かるって聞きますし、僕は明日にでもハンターとして活動したいのでクラスチェンジは今したいんです」

「あの……私も末留さんと同じです」


 なるほど、それなら是非使ってもらって頑張ってほしいものだね。

 私は2人の決意を了承し、クラスチェンジの立ち会いをする事になった。


「そ、それじゃあ使いますよ」

「ドキドキしますね」


 私もドキドキするよ〜、アタリクラスゲット出来ますよ〜に。


 2人はクラスチェンジオーブを使うとオーブが黄金色に輝き出し、辺り一面を眩しい光で覆い尽くす。


「…………」


 少しの沈黙の後、まず末留さんが歓喜の声を上げた。


「僕、【ハイランダー】っていうクラスみたいです! やったー!」

「それってどんなクラスなんですか?」

「わかりません!」


 ちょっ…分からんのかーい! 思わず心の中でツッコミを入れてしまったが、ハイランダーとはどんなクラスなのか分からない。名前からして前衛職だと思うけど。


 末留さんのクラスは分かったけど、南本さんはどんなクラスなのだろうか?


「わ、私のクラスは……【歌姫】だそうです。歌を歌えばいいのでしょうか?」

「……レアクラスっぽいですね」

「僕が使わなくて正解でしたね……」


 恐らく…いや、確実にレアクラスだろう。

 戦闘に使えるかどうかは分からないけど、歌を歌えば仲間にバフをかけたりする事が可能かもしれない。

 末留さんが歌姫ってイメージではないので、南本さんが最適なクラスだろう。


「どんなクラスか分からないので、ダンジョンセンターに問い合わせしてみるのも良いですね」

「そうですね」

「なら、この後みんなでダンジョンセンターに行って打ち上げしませんか?」


 お〜打ち上げ! 私もやりたい! 奈々子ちゃんともやったけど、この新人特有のノリに乗りたい!


「南本さんも大丈夫?」

「大丈夫ですよ、特に仕事は入っていないので暇ですし」

「なら適当なファミレスに行きましょう」


 彼女達はお金も無さそうなので、格安大衆イタリアンレストランへ行こうか。



 ダンジョンを後にし、ダンジョンセンターの総合案内に行くと、クラスについて教えてくる場所を教えて貰った。

 そこの受付に行き、案内された場所へ行くと見慣れた人物が現れた。


「あれ? 奈々子ちゃん?」

「おや? 穂華ちゃん?」


 なんでここに? アイテム買取所の受付じゃなかったけ?


「奈々子ちゃんはどうしてここに?」

「私は総合職扱いなので、基本何でもやりますよ。お二方のクラスについての質問ですよね? どうぞお掛けになって下さい」


 知り合いなの? と困惑気味の2人は椅子に着席すると、奈々子ちゃんの説明を聞く。


「まず、クラスについて簡単に説明いたします。大まかにクラスは4つの役割に別れております。まず、パーティーの盾役であるタンクです。高い防御力と体力でモンスター達のヘイトコントロールをします。次にアタッカーです、別名ダメージディーラーとも呼ばれ、前衛職の大半はこれに当たります。攻撃魔法が使える魔法使い系もアタッカーに入ります。次にヒーラー、文字通り回復を専門としたクラスです。次にサポート職です、様々なクラスがありますが、バフやデバフを掛けるクラスだったり、他の役割に当てはまらないクラスは大体サポート職になります。ここまでの説明は宜しいですか?」 


 私達は頷く。


「お二方のダンジョンライセンスカードをお預かりします」


 2人は奈々子さんにダンジョンライセンスカードを手渡すと、奈々子さんの表情が驚愕の表情へと変わる。


「お二方のクラスはレアクラスです、ハイランダーは現在ひとりだけ登録されており、イギリスのランカー Selva Madrid 氏がそのクラスを所持しております」

「僕知ってます! 魔法少女に抜かされたけどダンジョンランキング7位の人ですよね? うおー! あの人と同じクラスなんて最高じゃないですか!」


 末留さんは席を立ち上がり、もの凄い喜んでいる。有名ランカーと同じクラスで尚且、世界で末留さんを含めると2人しかいないクラスだ。

 末留さんはこれから成功の道を歩んで行くかもしれない。


「続きまして南本さんですが……過去にひとりだけこのクラスを持っていた人がいました」

「過去に持っていた? じゃあ今は……」

「はい、既に亡くなっております」


 ダンジョンで命を落としてしまったのだろうか? ダンジョンで命を落とすのは日常茶飯事なので、その歌姫を持った人が亡くなっていたのは残念である。


「……実はこのクラスをもった歌手は自殺しております」

「「え?」」

「アメリカの歌姫 Alyse Rose Weston をご存知ですか?」


 知ってもる何も私もファンのひとりだ。

 数年前に自殺し、世界中が嘆き悲しんだのは記憶に新しい。

 まさか、彼女が歌姫のクラス保持者だとは知らなった。


「南本さんは今後、波乱の人生が待っているかもしれません」


 南本さんの表情は硬い。

 彼女は芸能事務所に所属している以上、そのクラスを遺憾なく発揮出来る環境でもある。

 彼女の人生なので私がどうこう言える立場ではないが、似たような立場の私にはひとつ言える事がある。


「南本さん。後悔しないようにして下さいね。歌が好きなら全力でやれば良いし、何かあったら私が相談に乗りますから」

「十条さん……」



 クラスの説明を受けた後、私達3人はファミレスで打ち上げをして、お互いの連絡先を交換し、今後の事について話し合った。


読んでいただき、ありがとうございます。

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