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友達を作るには裸の付き合いが一番だ

温泉入りたいな~

 夕方17時過ぎ、私達は今夜宿泊する旅館へとやって来た。

 その旅館は修善寺から近い場所に在り、高級感漂う豪華な門構えは、来た者をワクワクとさせてくれる。

 フロントで受付を済ませると仲居さんが荷物を運び、私達が今夜泊まる部屋へと案内してくれた。


「こちらが本日お泊りになる白椿の間でございます」

「「おおー」」


 部屋は広い和室で、寝室は別の部屋に別れていた。


 お風呂はなんと源泉かけ流し露天風呂になっていた! これはテンションが上がる!。

 私は大浴場か部屋のシャワー室があれば良いかなと思っていたが、まさかの露天風呂! もう5月だというのに、今日は少し涼しかったので温かい温泉で今日の疲れを癒やすのも良いだろう。


「お食事は何時頃ご用意いたしましょうか?」

「十条様いかがなさいますか?」

「ん〜、ご飯を食べてからお風呂にしよう!」

「畏まりました。これからご用意致しますので、今しばらくお待ち下さい」


 仲居さんが部屋から出て行くと、私は座椅子に座る。


「お茶入れますね」

「あ、すいません淹れて貰っちゃって」

「気にしないで下さい、はいどうぞ」


 須藤さんはポットから熱いお茶を湯呑に注ぐと、私の前に置いた。

 一口飲むと、ほうじ茶だろうか? 心が休まる気分だ。


「本日はお疲れ様でした。小規模ダンジョンとはいえ1日で攻略してしまうとは流石十条様」

「魔法少女のお陰だよ。戦闘に関しては全くの素人だし、魔法少女の力だけでゴリ押ししてるんだよ」

「そんな事はございませんよ、近くで戦闘を拝見させて頂きましたが、頑張っていると思いますよ」


 須藤さんの優しさが心に沁みる……。

 私のへなちょこパンチや、ハイキックもローキックになってしまうのに、お世辞とはいえ、褒めてくれるなんて……。

 須藤さんが私のお姉ちゃんだったら良かったのに。


「ありがとうございます須藤さん。近い内に、護身術の教室に通ったり、運動をして体力を付けようと思っていたんですよ」

「良い心掛けでございますね。私も学生の時に陸上部で体力も付けていたので、ダンジョン攻略にも活きましたよ」

「へ〜、いつからハンターやっていたんですか? 須藤さんお強いですよね? パーティーやクランのお誘いとかあったんじゃないですか?」

「ありましたけど、大学卒業してからはハンターに成らずに、普通に日本ハンター協会に就職しましたよ」

「須藤さんならハンターで稼げると思うのにな〜」

「ハンターという職業は女性には厳しい世界ですよ。十条様は経験がありませんか?」


 ある。文無しで無知な女ひとりが、ダンジョンに行ったら暴行を受け、死にかけたのが約2週間前の出来事だ。

 あれ以来、男性ハンターに誘われるのが怖くなり、一種のトラウマになってしまった。


「……そうですね、私も経験しました」


 私はあの時の出来事を須藤さんに話した。


 伊豆に来る前の車内での会話には、私が魔法少女になる前の事は話していなかった。

 その理由は須藤さんにダンジョンセンターの個室に呼ばれた時に、私に暴行を加えた2人についての質問に対して嘘を吐いたからだ。

 本来ならハンターの死亡を確認したら、ダンジョンセンターやハンター協会に報告義務があるが、私は彼らが許せなかったし、騙された私も馬鹿だったので、戒めの為に墓まで持って行くつもりだった。

 でも、須藤さんの目を見ていると、何でも見透かされている気がして、罪悪感で胸がいっぱいになってくる。

 話して楽になってしまおう、と思ってしまう自分がそこに居たのに気がついてしまったのだ。


「……何か隠している事は薄々感じておりました。あの2人は婦女暴行の前科がありましたので、独りで帰って来た十条様が心配になったのです。安心して下さい、心と身体のケアを専門で扱っている先生に知り合いがいますので紹介できますよ」


 ん? 心と身体のケア? 須藤さんは私が暴行を受けたと聞いて性的暴行を受けたと勘違いしている? いやいや……されそうになったけど、デスボールのお陰で助かった? から、心のケアは兎も角、身体は大丈夫だよ。


「須藤さん、少し勘違いしてるかもしれないので訂正しますが、その……私はまだ……未経験なので大丈夫です……」


 須藤さんは私の言葉に目をパチクリさせ、少し間を開けると何かを察したかのように話す。


「あ……左様でしたか。それは良かったです。失礼しました」

「いえいえこちらこそ、勘違いするような事を言ってしまいました」

「ぷふ」

「「あははは」」


 客間に2人の笑い声が響くと、仲居さんが扉をノックし、夕食の準備が始まった。



 旅館の夕食は超豪華の一言に尽きる。

 海の幸山の幸がふんだんに使われた懐石料理だった。洋食のコースもあったらしいが、普段食べない懐石料理を須藤さんは注文していたようだ。

 室内に仲居さんが待機しており、私達の食事ペースを見ながら次々と料理を運んでくる。

 その都度、何処で野菜が取れたとかどこの漁港で仕入れて、どの部位を調理したとか説明を聞きながら食べた。


「普段こんな美味しい料理を食べないから新鮮ですね」

「そうですね。逆に私達が畏まってしまって、落ち着けないですね」


 人によるかもしれないが、コース料理で一皿づつ来るのが嫌と感じる人もいるだろう。

 しかしこれには理由があり、料理を全て同時に出してしまうと、一皿食べている間に、スープや他の料理が冷めてしまうのを防ぐ為でもあるのだ。


「十条様、お酒はどうですか?」

「私、毒無効スキルのせいか酔えない身体になってしまって……」

「凄いスキルをお持ちなのですね……でも味は分かりますか?」

「それは大丈夫ですよ」

「おすすめの地酒をご用意しましたので、食後に如何ですか?」

「いいですね! いただきます」


 食事も一段落し、須藤さんおすすめの日本酒をいただく。

 クセが無くフルーティーなその日本酒は、女性にも飲みやすくごくごくイケてしまう。これは美味しい。


「この後は露天風呂でも入って疲れを癒やしましょう」

「そうですね、須藤さん先に入っても良いですよ」

「折角のなので、一緒に入りましょう。背中をお流ししますので」

「えええ!? そんないいですよ〜」

「いえいえ遠慮なさらずに」


 グイグイ来る須藤さんに私はタジタジになってしまう。須藤さんお酒飲み過ぎなのでは? 顔が真っ赤ですよ?


 断る私を須藤さんは無理やり露天風呂に誘い、少し恥ずかしい気持ちを抑え露天風呂へ来た。

 露天風呂は縁側を通ると繋がっており、周りを竹林で囲っているので外からは見えない作りになっていた。


「おお〜、この規模の露天風呂は豪華ですね」

「この岩風呂も天然ですかね? ふむふむ」


 天然の岩風呂だろうか? 須藤さんは素っ裸で岩風呂を隅々まで観察している。

 さて、身体洗って入りますかね。


 頭を洗い、身体に移ると須藤さんがスポンジ片手にやって来る。とても洗いたそうにしているので、背中を洗って貰う事にした。


「十条様の背中綺麗ですね」

「え? あ、そうですか? 気にした事ないです」


 背中を見られるのは意外と恥ずかしい。

 たまに町中で背中を出した服を着ている人がいるけど、恥ずかしくないのかと思った事がある。

 須藤さんは優しく背中を洗いながら、今日のダンジョン攻略について感想を漏らした。


「久しぶりに今日ダンジョンに入って分かった事があるんです」

「分かった事?」

「はい、昔、嫌な事があってハンターを辞めたのですが、なんだかんだダンジョンセンターで働いております。でも数年ぶりにダンジョンアタックしたら、とても楽しかったんですよ」

「それは良かったですね」

「また機会が有ったら誘って下さいませんか?」

「私で良ければ良いですよ〜」

「ふふ、やった♪ それではお湯を掛けますね」


 お湯を掛け泡を落とす。

 私は洗って貰ったお礼に須藤さんの背中を流してあげた。

 須藤さんの背中はとても色っぽく、戦闘服を見て知っていたが、とてもスタイルが良かった。

 ついつい洗いながら見惚れてしまったけど、私もこんな身体になるには、もう少し食べて鍛えないといけないかもしれない。


 温泉に浸かると、少し熱めのお湯がじわじわと身体に染み渡り、疲れが一気に取れていくのが分かる。

 あ〜、っと声を出してしまう私達はオッサンだろうか? いえ、乙女ですが出てしまうモノは出てしまうのです。

 いくら魔法少女で強化されたとはいえ、肉体疲労は溜まるので無限には戦えない。

 ルル様のスパルタダンジョン攻略は死ぬ程辛いが、最近はなんとか付いて行けるようになって来たけど、それでもやっと20層を攻略したばかりだ。

 20層より上を攻略するには、私自身のトレーニングと、ダンジョンに関する知識を増やしたり、スキルを増やして使いこなせないといけない。

 まだまだ課題は多いのよね。


 そんな事を考えていると、ふと須藤さんともっと仲良くなるにはどうしたら良いかな、と思った。

 ダンジョンで活動するには須藤さんのサポートは大事だが、プライベートでも相談したい事は沢山ある。

 彼女ならきっと私の良き友人になってくれるハズだが、友人なら何でも言い合える仲が理想だ。 

 まずは須藤さんの硬い敬語を何とかしたい。


「須藤さん、私とお友達になってくれませんか?」

「わ、私がですか?」

「駄目ですか!?」


 友達になるのが嫌なのかな? まさか敬語を何とかする前に友達にすらなれないとは……私のメンタルは崩壊寸前だよ。


「あ、ごめんなさい。私なんかでも良いのですか?」

「良いも悪いも関係ないですよ、私は須藤さんとお友達になりたいです!」

「……よ、宜しくお願いします」


 照れた須藤さんはとても可愛かった。

 私が男なら惚れていたね。私はノーマルだけど。


「須藤さん敬語は止めましょうよ、私もタメ口で話しますし、須藤さんの下の名で呼びますから」

「私、敬語って癖で……」

「ほらほら、穂華って読んで奈々子ちゃん」

「な、奈々子ちゃん……数年ぶりにその名前で呼ばれました……」


 須藤さんは一呼吸置くと喉の奥から絞り出すように声を発する。


「穂華ちゃん……よ、よろしく……」

「よろしくね奈々子ちゃん!」


 やっと下の名で呼び合えるようになったけど、須藤さんの顔がお酒と温泉の熱で茹でダコのように赤くなっており、のぼせたのかフラフラとしていたので慌てて奈々子ちゃんをお風呂から出した。


「なんだかすみません……」

「あ、また敬語になってるよ」

「あ……」

「あはは、そのうち馴れるよ〜」

「ふふ、そうですね」


 温泉から出た私達は、今日の出来事をあーでもないこーでもないと話し、日付が変わる頃まで楽しく過ごした。


 



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