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憧れの魔法少女になれたけど、恥ずかし過ぎて死にそうです!!  作者: じゃむばた


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ロハスな生活はよおさらば! もうどうにでもな〜れ!

 ――5/7土曜日 午前6時


 私は伊豆旅行に行くために土曜日のバイトが終わり次第、伊豆に向かおうと思っていたが、咲さんによると元々土曜日の祭日は休むつもりだったらしい。

 喫茶しぐれがお休みなので、早く出られると事を須藤さんに伝えると、直ぐこちらに向かうと連絡があった。


 カランカランと店の扉が開くと、いつもと違う雰囲気の須藤さんが入って来た。


「おはようございます十条様」

「おはようございます須藤さん」


 普段の須藤さんのイメージはデキる女を具現化したような女性で、スーツ姿が良く似合っており、細身のパンツとヒールで足がとても長く見え、まるでモデルさんのようなプロポーションだったが、今日の服装はライダースジャケットにワイドパンツでもの凄くカッコ良かった。

 ついつい須藤さんに見惚れていると、須藤さんがジッと見られて恥ずかしいのか、少して頬を紅潮させ照れた表情を浮かばさせる。


「あ、あのう……似合ってますか?」

「とても似合ってます! 凄いカッコ良いです!」

「あはは、あまり出掛けないのでコーデには自信がないんですよ。十条様はシンプルですが、動きやすそうです良いですね」


 私は動きやすさ重視だ。ダンジョンも行く予定なのでラフな格好で十分だ。


 必要な物を詰め込んだトランクケースを転がし須藤さんと外に出ると、そこには1台のピンク色の軽自動車が停まっていた。須藤さんらしからぬ車に、私の口角が緩む。


「荷物は後ろに積みましょう。運転は任せて下さい」


 須藤さんに手伝って貰い荷物を乗せ、私は助手席に乗る。

 私も車の免許は持っているがペーパードライバーなので運転はできない。車を自在に操作する須藤さんがとても格好良く見える。


 車は高速に乗ると、須藤さんは新しく出現したダンジョンについて説明を始める。


「日本に新たに確認されたダンジョン2つの内ひとつは、修禅寺日枝神社です。突然ダンジョンゲートが現れたそうで、直ぐに地元警察が封鎖してJHA、日本ハンター協会が立ち入り禁止勧告を発表しました」

「そんな所に私が入れるのですか?」

「普通なら入れません」

「普通なら?」

「そうです。私は上を納得させる為に、とある条件を提示しました」


 ちょっと待って! まさか……。


「安心して下さい。十条様が“魔法少女”だとは一言も喋ってはいませんよ」


 ヒェ……バ、バレてるーー!

 何となくバレてるのでは? と思っていたが普通にバレてるじゃーん! 私のスキル仕事してないよ! 車の中で密室……、逃げられない!


 冷や汗が背中を伝う中、須藤さんは話を続ける。


「十条様が魔法少女だと疑いを持ったのは、別件で渋谷ナンバーズを追っていたんです。そこに十条様が渋谷ナンバーズの傘下メンバーの犯罪歴がある人物達とダンジョンに入り、一人で戻って来てから不審に思いました。その後、魔法少女がダンジョンランキングに乗り、世間が騒がれる中でダンジョンの異変、そしてタイミング良く出て来る十条様。これでも半信半疑でしたが、先日の城神高校生拉致監禁事件で十条様が魔法少女であると確信しました」


 私は黙って須藤さんの話を聞く。

 須藤さんの話は時系列に起こった事を分析し、私が魔法少女だと確信を得て話しているのだろう。もうバレている以上、誤魔化しても意味は無い。


「十条様が焦りながらダンジョンに入り、直ぐに魔法少女ほのりん様が出て来て、私にスマホを見せました。あのスマホは配給品と言いましたが、あれは私の自前で用意したスマホですし、通話アプリに表示されていたのは十条様のアイコンとIDでしたので、それが決定的でした」


 ……あ〜……全て私が招いた凡ミスだ。

 このスマホが罠だとは思いもしないし、アプリ画面を見せるのも愚策だったよ。もう完全完璧に私の負け! ロハスな生活はよおさらば! もうどうにでもな〜れ!


「……そうです。私が魔法少女……ほ…ほのりんです……」


 自分で正体を明かすと恥ずかしくて顔面が熱くなり、耳鳴りが鳴ると音が遠くに聞こえてくる。

 私の精神状態は限界を迎えようとしているのが分かる。


「フフフ。私の勘は良く当たるって言われるんです。でも安心して下さい。十条様の正体は絶対にバラしませんし、上に圧力を掛けられたら退職しますので」

「えええー!」

「その代わり、ダンジョン産のアイテムをガッツリ稼いで来て下さい」

「は、はぁ……」

「もし、私がダンジョンセンターを辞めても十条様のサポートに周りますから! 安心して下さい。勿論分前は貰いますけど」


 ちゃっかりしてるな〜。行動力の化身だとは思っていけど、須藤さんも人生がかかっているハズ。それでも私の為に動いてくれると思うと、その働きに報いてあげたい気持ちにはなる。

 私の事を知っている協力者を得る事は難しいと思ったけど、こんな結果で得られるとは思いもしなかった。


 ダンジョンで変わったクラスチェンジオーブを手に入れて、今日に至るまでの話をしつつ、私達を乗せた車は、伊豆にある修禅寺日枝神社にたどり着いた。



「お~初めて来ましたけど神秘的な場所ですね」

「この先ですね」


 私達は駐車場に車を停めると神社の奥へと向かう。

 ダンジョンゲートはどこにあるのだろうか?

 暫く歩くと物々しい雰囲気で自衛隊車両が見え、自衛隊の隊員達が警備している場所が見える。


「ダンジョンゲートは修禅寺日枝神社の裏手にある修善寺梅林の中の途中にあります。十条様、少し待ってて下さい、担当者と会って来ますので」


 須藤さんはそう言うと私を置いて、自衛隊が設営したテントの中に入っていく。

 警備をしている自衛隊の人達の視線を浴びる私は、場違いなのを自覚しているので気まずくなってくる。

 早く帰ってきてと願っていると、須藤さんが帰って来たのが見え胸を撫で下ろす。


「ちゃんと話は通っているみたいで通行許可がおりました、さぁ行きましょう」


 修善寺梅林の散策ルートを歩くと美しい風景が見え、心が穏やかになるのを感じる。

 梅の花は3月が見頃なので今来ても特に何もないが、散歩コースで歩けば最高の風景だろう。

 そんな修禅寺梅林を歩いて行くと、見慣れた物が見えてくる。


「……ダンジョンゲート」

「私も初めて見ましたけど、本当にダンジョンゲートが開いてるんですね」


 須藤さんも驚きの表情を浮かべている。

 私も渋谷ダンジョンゲート以外で見るダンジョンゲートに驚きを隠せない。

 以前ルル様にダンジョンゲートやダンジョンについて聞いても、詳しく教えてくれなかったのだ。本当に謎の存在である。


 口を開けてダンジョンゲート眺めていると、須藤さんが私に話しかけてくる。


「十条様、ここに来る前に、上に許可を得る為にある条件を提示したとお伝えしたと思うのですが」


 覚えている、車で移動中に話していた事だ。その条件とはなんだろうか?


「覚えてますよ」

「その条件とは、修禅寺日枝神社ダンジョンのデータ収集と、ダンジョンで得られたアイテムの一部提供をお願いしたいのです」

「なるほど、そのくらいなら問題ないですが」

「ところが少し問題がありまして……」


 須藤さんが手に持っていた紙袋から何やら機材を取り出す。

 小型カメラとヘルメット? まさか録画しながら探索するの?


「その…魔法少女ってバレる可能性がある激しい動きはNGって可能でしょうか?」

「無理じゃない?」

「ですよねぇ……仕方ない私も行くか……」

「え?」

「このダンジョンでのデータ収集は必須なのです。なので撮影者が必ず必要なのです」


 それは困った。姿を隠しながら戦うのは制限が付きすぎて戦い辛いし、場合によってはピンチに陥る可能性がある。

 私はどうしようかと考えていると、1つの案が浮かび上がる。魔法のポンチョを装着して戦う事はできないので、オークと戦った時に手に入れた深緑色のローブを着て、格闘メインで戦えば何とかなるかもしれない。私はその事を須藤さんに伝える。


「それは名案ですね。カメラはどっちが付けるか相談するとして、そこの簡易テントの中で着替えましょうか」

「え? 着替えるの?」

「私も一緒に行きますよ、ちゃんと装備も持ってきましたし」


 えぇ……、冗談じゃなくて本気なのか……。テントの中で変身? いや、それはマズイ……ダンジョンの中に入って変身? それもマズイし八方塞がりじゃん。どう足掻いても変身シーンを見せなければいけないよ……どんな拷問なんだよー! 誰がこんな設定にしたんだー!


「ダンジョンへは一緒に入りましょう、別々に飛ばされると面倒ですし」

「そうですね……」


 もう腹をくくるしかない。

 恥ずかしいのは一瞬! 我慢すれば何とかなる! なってくれ!!


 あぁ胃が痛いよ……。



読んでいただき、ありがとうございます。

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