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アメイジングコスモ

謎が深まります

 はぁはぁはぁ……つい先日も、汗だくに為りながら10層まで走ったけど、チュートリアルをクリアした時よりも何倍も楽かもしれない? なんだかんだで19層へ到達してしまったよ。


「だいぶ魔法少女の衣装の力を引き出せるようになったな」

「もしかして、まじかる☆ドレスアップの強化でスタミナも上がってる?」

「そうだ、まじかる☆ドレスアップの強化は耐久値だけではない、魔法少女の衣装は剣であり、盾であり、パワードスーツでもある」

「ふむふむ。それならばスキルポイント全振りしても良さそうだね」

「スキルポイントを多く稼ぐには、時間は掛かるが深層に行くか、他のダンジョンを攻略しても良いな」

「他のダンジョン? メジャーアップデートで追加されたってやつ?」

「そうだ、渋谷から近い場所は、伊豆と呼ばれた場所に出来ているな」


 伊豆か〜、微妙に遠いな〜。北海道や名古屋、熊本まで行くよりかは近いけど、バイトの休みを使えば伊豆のダンジョンを日帰りで行けそうだね、機会があったら行ってみても良さそう。


 ルル様と今後の事を相談しながら走っていると、うさ耳カチューシャが祭壇特有の音をキャッチする。進路を変え暫く走ると、祭壇が見えてきた。


 今までの階層ボスの出現傾向は、次の階層で現れるモンスターが出てくる。ボスを倒せなければ、次の階層に現れる雑魚モンスターにも勝てないぞ、っていう警告なのかもしれない。


「それではいざ尋常に〜」


 私が祭壇に近づくと、祭壇の上にある石が紅く輝きだし、紅いダンジョンゲートを出現させる。


 私はオークの件以来、開幕先制攻撃は控えている。その理由は一度どんなモンスターか確認してから行動しないと、カウンターを受ける可能性があるからだ。

 モンスターは決して馬鹿ではないし、システムで動いている訳でもない。彼らも生きているのだ。


 紅いダンジョンゲートから現れたのは、骨の馬に乗り、長い槍を持った髑髏の騎士に、ボロボロのローブを着たアンデットの2体だけ現れると、紅いダンジョンゲートはゆっくりと閉じていった。


「ほぉ…あの2体の名は、馬に乗っているのがデスライダー、ローブのアンデットはリッチだ」

「強いの?」

「そこそこだな。気をつけなければいけないのが、デスライダーの速度から繰り出される突きだ。攻撃を受けるのではなく、避ける事に専念せよ。次にリッチだが、遠距離から高火力の魔法を放ってくるので、これも回避するのだ」


 ……ルル様は、今まで出会うモンスターに対して適当に解説をしていたけど、このボス2体に対して注意を促したって事は、それだけ強いって事だよね? 今までの経験をぶつけてみるチャンスだね。


 私は深呼吸をすると、目の前のアンデット2体を注視する。

 相手も私がどう出るか見ている様子だ……それなら先行いただきます!


「まじかる☆グリッターネイル!」


『まじかるグリッターネイル 発動。デスライダーの視覚を奪いました』


 髑髏の騎士にキラキラした星が現れると、激しく発光する。


「からの〜アンデットさん! 成仏してね! まじかる☆スターラーイト!」


『まじかる☆スターライト 発動』


 虹色に光り輝く星々がデスライダーに当たるかと思いきや、アンデットの馬が素早く動き回避すると、そのまま加速し私に向かって来る。


「くっ! 間に合わない!」


 加速した馬体に激しく跳ねられ、視界がぐるぐると周り地面に叩きつけられる。


『まじかる☆ドレス の耐久値が80%になり、非ダメージ軽減率が低下しました』


 ぐうう。目眩ましは聞いたはずなのに……何故? 

 確かに、まじかる☆グリッターネイルは発動し効果はあった。なのに、まじかる☆スターライトは回避され、真っ直ぐに私を攻撃をした……まさか!


 まじかる☆グリッターネイルは効果はあった。しかし、効果があったのはアンデットの馬に乗っている髑髏の騎士だけで、馬には当たっていなかったのだ。

 恐らくだが、デスライダーは2体で1体の扱いなので、紅いダンジョンゲートから馬と髑髏の騎士、リッチの3体としてカウントされていた可能性がある。


 体制を立て直そうとした瞬間、私の視界が赤く染まる。


「きゃあああ!」


 熱い、熱い! 息ができない…救けて! 


 必死に身体を転がし灼熱の空間から抜け出す。


『まじかる☆ドレス の耐久値が45%になり、非ダメージ軽減率が低下しました』


 ……動ける。強化した魔法少女の衣装に感謝しないと。そして、あの熱い攻撃をしてきたのは…リッチ。


 リッチに視線を移すと、ボロボロのフードから覗く腐り落ちた表情は、獲物を痛めつけるのが楽しいのか笑っていた。

 私はその表情を見ると恐怖で身体が硬直する。


「ほのりん! 避けろ」


 視界の端にデスライダーが高速で詰めてくるのが見えた。

 私は必死に身体を捻り防御に専念する。


「まじかる☆シールド!」


 まじかる☆シールドを削るような嫌な音が耳元で聞こえる。

 いくら防御が成功したとしても、運動エネルギーを打ち消す事は不可能で、私の身体はボールを蹴り飛ばすように弾け飛ばされる。


 !? 来る!


『跳躍 発動』


 咄嗟に発動した跳躍で回避し、私が先ほどいた場所に火柱が上がる。

 リッチの火炎魔法だろうか、あれを受けた時、正直死んだかと思ったくらい辛かった。二度とあの魔法は受けたくない。


『跳躍 発動』


「お返しだあああ!」


 跳躍で一気にリッチの懐に潜り込むとオタマトーンを胴体に捩じ込む。


「はああああ! 全力全開! まじかる☆スターラーーーイト!」

「オオォォォ!」


 体内で放たれたまじかる☆スターライトは、リッチの体内で暴れだし、星とハートの煌めきが身体から溢れ出し爆散する。


「まじかる☆スターライト!」


『まじかる☆スターライト 発動。威力が30%減少しました』


 咄嗟に放ったまじかる☆スターライトは背後に迫っていたデスライダーの頭部に当たる。

 しかし、デスライダーの速度は落ちない。


 デスライダーの槍を攻撃を回避するが、馬と接触し弾き飛ばされる。


「…くはっ……」


 痛い……身体がバラバラになりそう……。


 も…う限界……し、死ぬ……あともう少しなのに……。


『まじかる☆ドレス の耐久値が36%になり、非ダメージ軽減率が低下しました』


 デスライダーの髑髏の騎士は頭部を失っても健在で、デスライダーは次の一撃で決めようとしているのか、距離を取り始める。


 どうする…逃げる? どこに? まじかる☆スターライトを当てる? 早くて無理……死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬしぬしぬしぬ……。


 思考が死で埋まる。

 

 私の魔法少女はここで終わりなの……?


「ほのりん! 諦めるな! まじかる☆アタッチメントを使うのだ!」


 ルル様? 

 ……そうか…あの、まじかる☆アタッチメントを使えば…………。


「まじかる☆アタッチメント!【アメイジングコスモ】オン!」


 まじかる☆スキルブックから、虹色に光る宝石を取り出し、オタマトーンの口に入れる。


『オタマトーンが形態変化します』


 オタマトーンの形が綺麗な弓へと変わる。

 その弓はまるで月のように美しく、星の結晶が集まったように輝いている。


 そして、弦を強く引くと光の矢が形成され、その矢からは力強いエネルギーを感じる。


「ほのりん。相手をよく見て感じるのだ。後は矢が敵を射抜いてくれる」

「うん…」


 デスライダーが方向転換し、私に向って駆けて来る。

 みるみるとデスライダーの姿が大きくなり、後数秒もすれば、鋭い槍で私を貫くだろう。


 息を止め、光輝く鏃に意識を集中する――





「銀河を駆け抜けろ! アストラルシューティング……スターーーっ!」


 矢を放つ。


 まじかる☆スターライトほどの派手さは無いが、加速した馬の頭部と髑髏の騎士の胸に、一筋の光か貫く。

 最後の悪足掻きなのか、デスライダーの右手から伸ばされた槍が私の頭部を正確に貫く瞬間、デスライダーと槍諸共、光の粒子になって霧散していく。


「……やった……」


 ギリギリの精神状態で戦ったせいか、私の緊張の糸が切れると、膝から崩れ落ち意識が暗転していく。



「今は眠るがいい……」


 ▽


「――しかし、この程度で苦戦するなんて…肉体がオーブの性能を出し切れてないんじゃない? 他に候補はいなかったの?――」


「――肉体の変えは効くが、この娘から得られるエネルギーは想定以上だ。【ナヴァラトナ】の覚醒も近いと我は感じる。それ故、我はこのまま進めたいと思う――」


「――そうなると、さらなる試練が必要だよ――」


「――なに、少し煽って情報をくれてやれば、勝手に動くだろう――」


「――いいよいいよ。フフフ、楽しくなってきたね――」







読んでいただき、ありがとうございます。


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