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それぞれの道

最終話です。

ユグドラシルの門が開かれようとした事件から約1年後。


 残暑が残る東京渋谷で、私は渋谷ダンジョンゲートの前に立っていた。


 今年の夏も残暑が厳しく、9月に入っても35度を超える気温が都内に住む人々を苦しめていた。



 そんなコンクリートダンジョンの渋谷にいても【熱無効】のスキルの影響で平気な私は奈々子ちゃんが来るのを待っていた。


「穂華さん、お待たせしました」

「お疲れ様〜。今日で渋谷ダンジョンセンターに来るのも減るね」

「そうですね」


 奈々子ちゃんは昨日付でjHA渋谷ダンジョンセンターを退職した。理由はいろいろあるが、私と行動を共にする為だ。


「流石に昨日は飲み過ぎましたね」

「奈々子ちゃんは酔えて良いね、私は全く……」


 【毒無効】スキルのせいで酔えない。お酒の美味しさは酔って初めて美味しく感じるのに、楽しみが半減した


「でも皆さんの近状報告とか聞けて楽しかったですよね」

「うん、私も頑張ろうって思ったよ」


 JDSTの中村さんはこの1年でさらに出世したらしく、今は内勤ばかりで実戦に参加できないらしく嘆いていた。それでも後任は順調に育っているらしく、新生JDST渋谷チームが渋谷ダンジョンを攻略中なのだとか。


 周防院さんは渋谷JDSTからエジプトのJDSTチームに3年間の任期てを移動した。エジプトのスフィンクスダンジョンの攻略に勤しんでいるようで、昨日の飲み会には参加できなかったが、オンラインで顔を出してくれた。


 柳瀬さんと油目さんはあの事件の半年後に結婚し柳瀬さんは寿退社した。お腹には新しい命がけ宿っているらしく、昨日の飲み会で油目さんは良いお父さんになる宣言をしていた。柳瀬さんは子供を生んだらいつでも現役時代復帰出来るようにJDSTの予備隊員として登録しているらしく、有事の際にはいつでも戦えるようにしているだとか。


 ATLANTISの萬田さんは現役を引退。今は新宿2丁目でいくつものお店を経営をしつつ、姓の悩みを持った男女に手を差し伸べている。最近はテレビにも出るようになり、毒舌を吐きながらお茶の間を賑やかにしている。


 末留さんはATLANTISの副代表に登り詰めていた。ATLANTIS入社1年でこのポジションは快挙と言っても良いだろう。しかし本人曰く「身体を動かしている方が合っている」と言い、ATLANTIS本社から抜け出しては渋谷ダンジョンに潜っているそうだ。


 園田さんはアリアちゃんと地球上を飛び回っている。飲み会には参加していなかったが、スマホのメッセージには2人のツーショットが送られてきており、背後には綺麗なオーロラが写っていた。園田さんとアリアちゃんは世界中に残ったベリフェゴールの残滓を探し回っているようで、あと少しでベリフェゴールを追い詰める所まで来ているらしい。


 Chrome Tempestのメアリーさんはアメリカ大統領選挙に出馬中で対抗する人とテレビで舌戦を繰り広げていた。私もその映像を見ていたけど、アメリカ初の女性大統領はメアリーさんになりそうだと感じた。全大統領は操られていたとはいえ、それ以前に汚職や女性関係のスキャンダルで支持率は低下していたのだ。メアリーさんならより良い国を作り上げていくだろう。


 ケルビンさんはChrome Tempestのリーダーとしてアメリカロサンゼルスにあるグリフィスダンジョンを攻略中だ。マイクさんが脱退したあとは、ケルビンさんがクランを運営し、カナリアさんと共にトップハンタークランの名にはじぬ働きをしている。


 で、マイクさんは今この世界にはいない。修行すると言って異世界に旅立ってしまった。そんなマイクさんに思うところはあるけど、マイクさんらしいと思うのは私だけだろうか? 後で迎えに行くからお説教は確定で。


 性転換薬を渡した館林さんは晴れて男になれたらしい? 私はその話を聞いて理解に苦しんだ。館林さんは実は女性で、性別を偽って男装をしていたらしい。 私はその話を聞いて雷に撃たれるような衝撃を受けた。元々イケメンだったのに、中身は女性だったなんて……今でも信じられない。そして、とある女優さんと真剣に交際しているらしく、近々結婚の話も出てきているそうだ。


 私の命を狙った帅 宁宁は、IDAの調査の結果、帅 宁宁の弟は中国の小さな村で保護されたそうだ。それを知った帅 宁宁はすぐに中国に帰り、弟を引き取ったあとはアメリカに亡命したようだ。連絡はとっていないが、時々私の前に現れてはアメリカ政府からの依頼を持ち掛けてくる。もちろん断ってるいけど。


 りぼんちゃんは魔法少女になったあとは世界デビューを果たした。今では私のDTubeのチャンネル登録数より多く、世界を駆け巡り歌声を人々に届けて入る。りぼんちゃんは戦う事よりも唄って踊る事が楽しいらしく、あの事件以来ダンジョンに潜る事は一度も無かった。


 喫茶しぐれにいる咲さんと寿史さん、そしてまひるちゃんは相変わらず元気だ。私達のせいで喫茶しぐれは毎日が大繁盛。バイトを何人も入れて経営している。まひるちゃんは今年から小学一年生でランドセルがとても似合っており可愛かった。そのランドセルの横についたキーホールダーにはルル様の人形がぶら下がっている。そのキーホールダーは私がUFOキャッチャーで取った景品で、まひるちゃんはとても喜んでくれていた。


 あぁ、あと常連客の鈴木さん。あの人は連日のようにモーニングの時間帯に朝食をとりにくる。本当に神なのか疑いたくもなるが本物の神様らしく、何故か日本人と結婚しており、子供までいる事に驚いた。子供の話は嘘だと思っていたけど、スマホに保存されていた画像を見て信じるしかなかった。




 少し想い出に耽っていると、渋谷ダンジョンに入る順番が回ってきた。


「はい、次の人〜って魔法少女のおふた方じゃないですか、関係者の列から入って下さいよ」

「いや〜、今日は初心に戻ろうかと思って」

「はぁ」


 彼は私が初めてダンジョンから瀕死で帰ってきた時に介抱してくれた渋谷ダンジョンセンターの職員だった。彼の案内で澁谷ダンジョンゲートに案内され、ユグドラシル門前を選択し潜ると、大きな木が描かれた白い門が見えた。その気には9つの赤い実がなっており、その1つが赤く輝いていた。


「遅いぞ我をいつまで待たせる気だ」

「お待たせルル様」


 私達がユグドラシルの門前に立つとルル様がやって来た。ナヴァラトナを奪われ消えてしまったルル様が何故ここにいるかと言うと、鈴木さん……この世界の神様の提案をというなの仕事を条件を受けてルル様を再生してくれたのだ。


「神の仕事を受けた以上、神の仕事としてきっちり働かないといかんぞ」

「え? でも自由にしていいって言ってたよ」

「……まぁ神がそう言うなら構わんが」



 神からの提案。



 それはルル様と共にセントゥーリアに行き、暴れまわっている悪魔達を見つけ出し駆除する事だ。もちろん私は考える間もなく二つ返事でその提案を受け入れた。


 理由はルル様が復活するのと、この世界ではロハスな生活が送れない事などが理由だ。


 この世界では私は有名になり過ぎた。

 DTubeでのLIVE配信がアルファミリアとの戦いを映し出し、ギリギリまで配信されていたのだ。

 私達の息の合った必殺技のセリフは、流行語大賞に選ばれたりして大変で連日テレビでも放映されていた。

 そして、私達の活躍を元にした魔法少女のアニメが放映されるらしく、来年の春からスタート予定らしい。


 そんな訳で有名になり過ぎた私は、恥ずかし過ぎて死にそうな思いをし、逃げるようにこの世界を旅立とうとしているのだ。



「ところで穂華さんのご両親とは最後の挨拶を済ませたのですか?」

「ああ、実はね……」


 母は渡しが魔法少女だと知って失神したらしい。後日とても怒られた。でも強く抱き締められ、どれほど心配をかけたのか初めて知って私は心から反省をした。


 父はあの事件の後、憑き物が落ちたように大人しくなり、会社の社長の座も責任を取る形で辞任した。


 私と再開した父は只管謝るだけで小さくなってしまった。父ってこんなに弱い人だったかな? と困惑したのを覚えている。


「とりあえず仲直りはしたし、たまにはこっちに帰ってくるつもりだし、暫くは異世界で楽しもうよ」

「そうですね。ルル様話では耳の生えた獣人や妖精なども住んでいるらしいですよ」

「お〜、アニメやラノベの話しみたい」


 私と奈々子ちゃんがワイワイ話しているルル様が咳払いをする。


「穂華よ、【魔法少女は願う】が使われた今、この世界には悪魔ベリフェゴールに操られた人々は救われた」

「そうだね。でも肝心の悪魔ベリフェゴールは逃げ回っているんだよね。本当にしぶといなぁ……」


 【怪力】ほのりんパンチを直撃を受けて倒せなかったのは本当に驚きだ。


「そうだ、園田と竜王アリアーナリアが追いかけ回しているから時間の問題だろう」


 私と神の提案を受けた時に【魔法少女は願う】を使い、世界中に散らばった悪魔ベリフェゴールの魔玉が組み込まれた魔道具を全て無力化した。


 これにより、世界中で起きていた暴動や権力者による暴走、核戦争の危機は過ぎ去り平和な時間を取りも戻したのだ。


 




「さて、先に行っているマイクを探しだし、セントゥーリアの国々を周り、ダンジョンアタックをして悪魔を探すか」

「なんだかやる事が沢山ありますね」

「私楽しみだな〜異世界料理を堪能して、ロハスな生活を今度こそ送るぞー!」


 ルル様が小さな手掲げるとユグドラシルの門がゆっくりと開く。


 白く輝くその先は希望と新たな冒険が待っている。


「よし、しゅっぱーつ!」



 私と奈々子ちゃんとルル様はユグドラシルの門を潜り、異世界セントゥーリアへと旅立つ。そして新たな魔法少女の物語が始まる――。





 終わり。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

拙い文章でまだまだ勉強が足りない事を痛感させられました。

次回作もより良い作品を作る為に頑張りたいと思いますので、よろしくお願いします!


最後によろしければ、ブクマや感想、レビューをいただけると嬉しいです。

評価も★一つでも結構なので是非宜しくお願いします。

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