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相棒との別れ本当の敵

 ユグドラシルの門に描かれている1本の木に9つ赤い実が輝き出し、白い門が青白く輝く。


 その光から溢れる力、それともエネルギーと言えばよいのか、言葉では表せないような物を肌にヒシヒシと伝わり鳥肌が立つ。


「ぐ……やめろアルファミリア……!」


 ルル様の言葉はアルファミリアに届かず、ユグドラシルの門から出る大気を震わす音にかき消される。


 ただそれよりも私はルル様の体に起こっている異変に言葉を失っていた。


「……ル、ルル様の……体が……」

「そんな……ルル様!」


 ルル様の体が半透明になり、下半身は既に消えていたのだ。


「ほのりん、ななちゃん、りぼんよ……我の話を聞くのだ……」


 私達はルル様の側に駆け寄り、私は優しく優しくそっとルル様を抱き上げる。


「あの様子だと、アルファミリアはこの世界……地球を中心に全ての世界の扉を繋げるだろう……そして、この世界は混沌の世に落ちる筈だ」


 ルル様は消え行く中で必死に言葉を紡ぐ。


「最初に悪魔達の世界を繋げられたら魔法少女の力なら兎も角、他のハンター達や一般人では対象できん。何としてもアルファミリアにユグドラシルの門を開けさせるのを思い留ませるのだ……」

「ルル様は消えちゃうの? なんとかならないの?」


 ルル様の瞳が優しく笑うように見えた。


「我はとんだ阿呆だ。最初から仕組まれていた事に気づかずお主ら巻き込んだ……本当にすまないと思っている」

「ルル様……」


 ルル様の体が……消えていく……。


「まじかるを……解き放つのだ。さすれば……また会おう……魔法少女達よ……」


 ルル様はただ、そこに存在しなかったように何も残らず消えてしまった。


「ルル様ーーー!!」


 涙が溢れる。


 ルル様が死んじゃった。こんなのあんまりじゃないか。私はルル様を元の世界に返して上げたい一心でここまで頑張ってきた。

 ナヴァラトナを集めるように意識を反らす細工をされていたらしいけど、これは私の本心でやってきた事だ。


 そらなのに……ルル様に集めさせて最後に横から全てを掻っ攫うなんて……許せない!


「アルファミリア! ルル様に何でこんな酷い事をしたの?」


 私の声が聞こえたのか、アルファミリアが私達を小馬鹿にした表情で見下ろしてくる。


「ああ、ルルは逝ったのか。最後まで僕の目的の為に頑張ってくれた友人だったよ」


 アルファミリアはとても悲しそうな表情をしている。目尻には薄っすらと涙を浮かべ、友人との別れを悲しんでいるように見えるが。


「ルル様消えちゃったんだよ! 何とも思わないの!?」


 私の手の中消えていったルル様は、最後まで私達に謝罪しかしなかった。ただ、アルファミリアを止めてくれと……。


 私なら裏切った相手に激怒していた。しかし、ルル様は「アルファミリアにユグドラシルの門を開けさせるのを思い留ませるのだ」と言っていた。


 ルル様は最後までアルファミリアを友人だと思っていたのかもしれない。


「ほら、見てみなよ。ユグドラシルの門がプルガトリウムに通じる道を開こうとしている。一度開いてしまえばこの世界は地獄と化すだろう」


 ユグドラシルの門の隙間から真っ赤な光が漏れていくる。門の内側から獣のような唸り声が聞こえ、ダンジョンで出て来た“彷徨う者”の気配を感じる。あの門を絶対に開けてはならない。


「ほのりんさん、止めましょう!」

「りぼんも協力するよ!」


 2人の力強い想いに私の背中を押される。


「アルファミリア! その門は開けさせはしない! まじかる☆エタニティ!」


 オタマトーンから放たれた、星々はアルファミリアの手前で弾かれる。


「魔法少女……ルルが作ったクラスは何故ここまで強くなったのか結局分からなかったな。まぁ、プルガトリウムへの門が開くまで時間があるし、少し遊んでいくか」


 アルファミリアは幾何学模様の魔法陣をいくつも生み出し、空から雨のように光弾を降らせる。


「まじかる☆シールド!」


 光弾が頭上から降り注ぎ、まじかる☆シールドを上に張り攻撃を防ぐ。


「このままではなぶり殺しですね」

「時間も無いと思うの。りぼんが歌を歌うから、2人はそのうちに攻めて!」


 りぼんがそう言うと、マイク型のまじかる☆ウエポンを握り歌い出す。


「元気もりもり☆パワーソング♪【ビートソニック】!!」


 りぼんちゃんの歌声は周囲に降らしていた光弾を弾き飛ばし、幾何学模様の魔法陣もかき消した。


「今です!」

「とおーーりゃーー!」


 一気にアルファミリアに近づき、近接戦闘に持ち込む。


「ていや!」

「おっと危ないな」


 私の攻撃を払い除けるように受け流す。


「くらいなさい! 【ダンシングエッジ】!」


 奈々子ちゃんはアルファミリアの隙を見計らいスキルを発動させる。


「おおお、このスキルを受けたのは初めてだけど、初見で回避するのは難しいね」


 アルファミリアは四方八方から襲うマラカスを全て受け流してしまった。


「なんて人……!」

「僕は人じゃないよ、これでも神の端くれなんだ」


 アルファミリアは指をパチンの鳴らすと奈々子ちゃんの腹部に強烈な一撃が入り、動きが止まる。


「こうやるのかな?」


 アルファミリアは奈々子ちゃんのスキル【ダンシングエッジ】を見様見真似で放つ。


 高速で放たれた手刀は奈々子ちゃんの全身を襲いダメージを与えていく。


「がはっ」

「ななちゃん! こんのー! ほのりん【怪力】パーンチ!」


 私のほのりんパンチが炸裂しようとしだ、片手で受け止められてしまった。どんなモンスターでも【怪力】で強化されたパンチで倒せないモンスターは居なかった。まさか片手で止められるとは。


「よっと」


 受け止められた手を捕まれ投げ飛ばされると、奈々子ちゃんと衝突し、地上へと落下した。


「あいたたたた……ななちゃん大丈夫?」

「ええ、なんとか。しかし、まじかる☆プリンセスドレスの耐久値が7割を切りました」


 不完全なスキルだったけど、元のポテンシャルが高いせいか威力が高い。まともに受けたらすぐに変身が解けてしまいそうだ。


「ここからが本番だよ! ライブオンステージ!」


 りぼんが【歌姫】と【魔法少女】の複合スキルを発動させると、ステージが現れ音楽が鳴り始める。


「りぼんがサポートするから負けないで!」


 うん、負けられない。ルル様に言われた通り、アルファミリアを止めないと。


 りぼんちゃんの歌が始まると全身に不思議な力が湧いてくる。これは……?


「これが本来のりぼんちゃんの能力なのでしょう。バフ系スキルの上位互換ってところでしょうか」


 敵にしたら厄介だけど、味方にするとこれほど頼もしいとは。りぼんちゃんの魔法少女スキル凄すぎる!


 私と奈々子ちゃんは【飛行】でアルファミリアの元へ再度立ち塞がる。


「女3人も集まれば姦しいとはよく言ったものだよ」


 りぼんの歌と踊りで強化された私達はアルファミリア攻撃を仕掛ける。先程と違うのは僅かにアルファミリアを押していることだ


「……やはり魔法少女は厄介だな。こいつを受けてみな」


 突然私の前に魔法陣が浮き出し、ゼロ距離から光の槍が飛び出してくる。


「がはっ!!」


『まじかる☆プリンセスドレスの耐久値が60%に減少しました。ダメージ軽減率が大幅に減少しました』

 

 私は槍が刺さった腹部を擦る。


 ……大丈夫、穴は空いていない。


 まじかる☆ヒーリングシャワーを掛けて私は再度飛び立つ。



 ▽



「黒い魔法少女……須藤奈々子」


 穂華が攻撃を受け吹き飛ばされてすぐ、須藤とで戦闘を行っていたアルファミリアが突如須藤に話し掛けてきた。


「なんでしょうか?」

「君がデスボールと遭遇した時、ルルが君の恋人を殺したって聞いた?」


 ルル様の告白で聞いた内容だった。もしかしたらアルファミリアは須藤の動揺を誘ったかもしれないが、


「存じております。ですが、今するような話しですか?」


 須藤は攻撃の手は緩めない。


 須藤は攻撃が最大の防御だと自負している。現に須藤のまじかる☆スキルは攻撃スキルしかない、一部を除けば絡み手もあるが副次的効果でしかない。


 そんな手数の多い攻撃にアルファミリアは嫌ったと思った須藤は攻撃のペースを上げる。


「あのデスボールをルルが操っているように見せかけて、僕が君と神峰以外を皆殺しにしたと言ったら?」

「……聞き捨てなりませんねっ!! まじかる☆ファイナリティ!!」


 三日月と黒く光る粒子がアルファミリアを包み込む。


「おしい。この程度じゃ僕を倒せないよ」


 まじかる☆ファイナリティを吹き飛ばし、無傷のアルファミリアが空中で佇むと、ほのりんが戦線を復帰して来た。


「ななちゃん大丈夫?」

「私は大丈夫です、私達の真の敵はアルファミリアですね」


 ギリッと歯を食いしばり、須藤はアルファミリアを睨みつけた。


 


 

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