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ユグドラシル100層へ

ラストまで突っ走りましょう!

 私達が今居る場所はユグドラシル81層。


 ユグドラシルの塔はユグドラシルに通じる道であり、ここからが本番である。


 私達の足元には地球が見える。ここは宇宙なのか心配したけど、ルル様の説明では宇宙では無いらしい。


 ユグドラシルは9つの世界と繋がっており、今歩いている場所はユグドラシルの記憶の回廊と呼ばれる場所らしい。


 足元の地球が消え、見た事も無い景色が次々と流れる。まるで地球の歴史、あるいは他の世界の記憶をスライドショーのように永遠と流れている。


 そんなユグドラシルは少し様子がおかしいらしい。本来、ユグドラシルを守る為にモンスターが配置されているらしいが、今はモンスターの気配すらなく、白く輝く道を淡々と走っていた。


「おかしい……」

「ルル様?」

「詳しい事は分からんが神峰が100層にいる気配がする」

「悪魔を召喚出来るならごり押しで攻略したのかな?」

「ふむ。その線もあるが、100層へはそう簡単には辿り着けん。何故ならこのエリアは守護者が防衛している。生半可な覚悟では倒す事は不可能だ」


 となると神峰は強力な悪魔を使役している可能性が出てきた。


 私達も強くなったとはいえ、悪魔ベリフェゴールのように強い悪魔がゴロゴロ出て来たら苦戦する事間違いなしだ。


 ユグドラシルを走っていると、黒いダンジョンゲートが見える。祭壇の間は無いようだ。


「やはり変だ、何故ゲートが開いている?」

「神峰達が開けたのではないでしょうか?」


 私も奈々子ちゃんと同意見だ。


「既に閉じる時間は経過している。……これは罠かもしれん」

「罠?」

「……信じたくは無いが……守人が手引している可能性がある」

「それってルル様と同じって事よね?」

「そうだ、こちら側の世界の守人ならダンジョンゲートを自由に操作出来る筈だ」

「そんな事をしてメリットなんてあるの?」

「無いな、だから理解できぬ。あやつ……アルファミリアはそんな事をするような奴ではない……しかし……」


 ルル様の歯切れが悪い。アルファミリアと呼ばれる守人とはどんな人物なのだろうか? ルル様と見た目が似た謎生物なのだろうか?


 私達はダンジョンゲートの前に立ち、ダンジョンゲートに触れるとウィンドウが開き、行き先を選べる項目が出てくる。


「え?」


 私は目を疑った。


 ウィンドウに表示されていた行き先の1つに、ユグドラシルの門前と表示されていたのだ。私はこの事をルル様に伝えると、目を大きく広げ言葉を失っていた。


「……やはりアルファミリアがダンジョンゲートを操作して、神峰達を100層に到達させたのだろう……アルファミリアは何を考えておる? やはりアルファミリアに聞かなくては何も分からぬか……?」

「兎に角先に進んでみる? この先に神峰達がいるのよね?」

「恐らくそうですね、すぐにでも戦闘が始まると予想されます」


 少し緊張してきた。どちらかと言うと不安が勝っているが、ここで足踏みをしても解決しない。


 今も地上ではレムナントや操られた人が人を襲い街を破壊している。一刻も早く神峰の野望を止めなければならない。


「じゃあ行くよ!」

「はい!」

「ゆくぞ!」


 ウィンドウに表示されているユグドラシルの門前を選択しダンジョンゲートを潜ると、眩しい光に目が眩む。



 光に慣れ、辺りを見渡してみると空は満天の星空が広がり、天の川がはっきりと見える。そして床は白く輝き光の粒子がふわふわと浮き上がっては消えていく。


 私達の正面のさらに奥、巨大な扉があり、大きな木が描かれている。それは9つ枝に別れた先には赤い果実が成った彫刻が描かれていた。


 そんな巨大な扉を口を開けながら呆けていると、私達に声を掛ける者がいた。


「やっと来たかい十条穂華と……あ、有り得ない……何故、奈々子が生きているんだ!? 確かにダンジョンに食われたのを見届けたのに!!」


 神峰奏司は奈々子ちゃんを見て、まるでお化けを見たかのように恐怖で顔を引きつかせる。


 そんな神峰を見た奈々子ちゃんは視線は怒りを通り越して笑っていた。隣にいる私が怖いくらいだ。


「神峰……。不二木達に暴行されている時の貴方ったら……とても楽しそうだったわね。悔しくて苦しくて、この怨みを晴らす為に地獄から戻って来たわ」

「う、嘘だ! 確かに死んだんだ!」

「そうよ私は死んだわ……さて、問題です。貴方の前にいる須藤奈々子は生きているでしょうか? それとも死んでいるでしょうか?」


 もちろん生きているのは知っている。ただ神峰は私がまじかる☆リヴァイブを持っている事を知らなかったようだ。やはり奥の手は隠すに限るね。


「死んでいるに決まっているだろ!!」

「残念不正解です。私から奪ったナヴァラトナの宝石、ケートゥのキャッツアイと魔法少女のクラスチェンジオーブを返しなさい。それは私の物よ」


 神峰は胸を押さえながら後退りをすると同時に、神峰の影から数体の悪魔と思しき者が現れた。その悪魔は一部を除いて見た事が悪魔だった。


「……リリス、生きていたのね」

「流石にあれでは死なないわ」


 半身を【発火】の爆炎で吹き飛ばしたのに、今のリリスは吹き飛んだ筈の半身が綺麗に治っており、その生命力に私は驚きを隠せなかった。


「だけど、黒い魔法少女には本当に驚いたわ……ダンジョンに還って戻って来るなんてどんなマジックを使ったの? ほのりんの力よね? もう一度見せてくれない?」

「お断りします」


 使う予定も無いし2度と使えない。やはりリリスも悪魔だ。見た目や喋り方ひとつひとつ人を拐かす力を持っている。油断ならない相手だと感じる。


 そんな一触即発の事態に終止符を打つように、高笑いが聞こえる。その声の主を見ると、ただならぬ雰囲気を纏った神峰がいた。


「ふふふ……あははは! よし、ようやく身体に馴染んできたぞ。これで僕は……いや私はこの世界の神になれる!!」


 突然神峰から凄まじい力の奔流が私達を襲う。


「「きゃっ!?」」

「こ、これは……神峰め……ケートゥのキャッツアイを取り込んだな? 人の身でなんて真似を……!」


 神峰の目の色が黒からルル様そっくりの金色に代わり、神峰の身体がゆっくりと浮かぶ。


「ルル様、本当に神峰は神になったの?」

「……ナヴァラトナは感情をエネルギーに変え圧縮した物だ。決して神になれる代物ではない」

「ですが、この力……あの竜王アークバハムートと遜色ない力を持っていそうですよ」

「……これは……!? なんだこれは!?」


 ルル様の神・鑑定眼で神峰を見たのだろうか? ルル様は驚愕の表情を浮かべる。


「あり得ん……あり得んぞコレは……」

「どうしたの!? 教えてルル様!」

「やつの中に、クラスが2つも存在している」


 クラスが2つ? クラスは本来ひとつまでしか就けない。2つ目を使うと今まで就いていたクラスを上書きしてしまうからだ。


 ルル様が見たのなら、それは真実だと思うが私でも信じられない。そもそも神峰のクラスは何があるのか? それが気になる。


「神峰のクラスは【召喚士】と【英雄】だ。非常に不味い」

「召喚士と英雄? 召喚士は最近増えましたが、英雄は初耳ですね」


 奈々子ちゃんも知らないクラスとなると、新規クラスか未発表クラスかのどちらかだろう。


 未発表クラスは萬田さんの【レスラー】のようにIDAに報告をしていないクラスの事だ。ただし、ダンジョンデータベースには載るので、毎日チェックしてれば気づく人もいる。


「英雄ってどんなクラスなの?」

「英雄は上位に進化するクラスで、ある条件下で【勇者】になる」

「その条件は?」 

「自分より強い敵と戦い、瀕死になりながらも悪を倒す事が条件だ」


 神峰より私達の方が強い……と思う。ただ、条件が簡単そうに見えてかなり難易度が高い。


 まず瀕死。これは死の一歩手前の事で、リザレクション必須である。一歩間違えればリザレクションが間に合わなくなり、確実に死んでしまう。


 さらに条件が難しいのは悪を倒すだ。瀕死になりつつ敵を倒さないといけないのは無理があり過ぎる。そして、私達から見れば神峰は悪だが、神峰から見た私達はどうなのだろうか? 倒される気もないので検証する事もないと思うが。


「どうやったらクラスを2つも就けるのか疑問だが、神峰を止めなければならぬ。準備はいいか?」

「「はい!!」」


 私達は神峰率いる悪魔達に向かって走り出した。




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