日輪の力を借りて……!
うぐいす色のドラゴンに跨がり、竜をモチーフとした鎧に長い槍を持った園田さんとアリアちゃんが、窮地を救ってくれた。
「何だか俺たち物語の主人公みたいだな!」
園田さんとアリアちゃんに助けてもらったのは2回目だ。本当に物語の主人公みたいだが……。
「ちょっと馬鹿タケミチ、どこ触っているのよ!」
「え〜と、うなじ?」
「嫌ー! ゾクゾクする!」
うぐいす色のドラゴンは空中で暴れまわり、園田さんは笑いながら振り落とされないようにしがみついている。
「グッ……成リ立テノ竜王ノ分際デ……クソッ! 体ノ自由ガ効カン!!」
「馬鹿タケミチ! 悪魔を亡ぼすわよ!」
「おう! 行くぜ! 日輪の力を借りて、今必殺のサ◯アタッーーーク!!」
アリアちゃんの背後の大きな光の輪がさらに強く輝きを放ち回転する。
あれは竜王レティアの日輪の輪と同じ力……。そうか、アリアちゃんは竜王代理になったからレティアと同じ力を使えるのか……。
「グアアアア!! コ、コンナ所デェェ! コレデ勝ッタト思ウナヨ! 既ニ賽ハ投ゲラレタノダ!!」
日輪の光を受け、悪魔の体が沸騰し蒸発する。
流石神の武器、魔を滅する力……。
悪魔に対してこれほどまでに力を発揮するなら私達が直接相手をしなくても良さそうだ。
「にしても酷い技名ですね」
「う〜ん、何処かで聞いた事あるんだよな〜」
はて? どこで聞いたのやら。
地上に降り立ち、アリアちゃんと園田さんと合流した。
「代表から話を聞いて飛んで来て正解だったぜ……っておわっ!」
アリアちゃんはドラゴンの姿から人の姿になると、園田さんは尻餅をついてお尻を擦っている。
「悪魔がこの世界にいるって事はかなりヤバいわよ。今はレティア様はいないし、もしユグドラシルの門が開き、悪魔達の世界と繋がったら悪魔達が攻めてくるかも」
「……この状況からして、悪魔が攻めてくる可能性は?」
アリアちゃんは小首を傾げながら、視線を上に上げ考え込む。
「可能性はあるけど、限りなくゼロに近いと思うわ。そもそも、この世界のユグドラシルの門は閉じているし開ける為には膨大なエネルギーが必要よ。……そうね、そこの守人の胸にあるナヴァラトナを全て使うくらいにね」
ルル様の目的は本人から聞いたので知っている。ルル様は元の世界に戻る為に私達を利用した事を自白した。
彼のおこないは褒められたものでは無いし、実際に人が死んでいる。そんなルル様の手伝いをする私達も同罪なのかもしれない。
「我はセントゥーリアへの門を開くつもりだ。決して魔界への門を開くつもりは無い」
「当然よ、もし開けるつもりなら今ここで貴方を殺しているわ!」
アリアちゃんの目は本気だ。竜の瞳で睨まれたルル様はブルっと体を震わせると、私の背後に隠れてしまった。
「アリアさん、安心して下さい。もしルル様が裏切るようでしたら私が責任をもってルル様を倒します」
「頼んだわよ」
奈々子ちゃんは恋人を殺されたのでルル様には思う所もある筈だ。もしルル様が裏切ったら私はルル様を倒せるのだろうか? できればそんな事はしたく無いと思う。
「ところで、園田さん達は何故ここに?」
「ああ忘れてた。レムナント化した人や暴徒化した人達はアリアの力で無力化出来る事が分かったから、これから日本全国を周る予定なんだ」
「そうよ、悪魔ベリフェゴールも倒したし、これ以上レムナントが生まれないと思うけど、ままだ私の力が必要なの」
園田さんとアリアちゃんに任せておけば、私達は心置きなく神峰を追う事が出来る。これは有り難い。
「ならここは任せても良いですか? 神峰達の企みも、まだ分からないし早く止めないといけないので」
「おう、そっちは頼んだぜ!」
「100層まで頑張ってね!」
アリアちゃんはうぐいす色のドラゴンの姿に戻ると、その背中に園田さんを乗せて夜の大空へと飛び立つ。
後は81層へと向った神峰達を追いかけて、ナヴァラトナの宝石である、ケートゥのキャッツアイを奪い返してもらおう。
私達はアリアちゃん達を見送った後、まじかる☆ゲートを開き、ユグドラシルの塔80層へと向った。
ユグドラシルの塔80層の門は開いている。ルル様の言葉が正しければ、EXクラス保持者が2人必要だった筈だ。
私の疑問を悟ったのか、奈々子ちゃんは絞り出すように小声で語りだす。
「私がここに連れて来られた時、この門が開きました。恐らくですが、神峰側にEXクラス保持者がひとりいたと思います」
「EXクラス……奈々子ちゃんの魔法少女と、あと何だろう」
私が知っているEXクラス保持者は南本りぼんだけだ。彼女はアイドル業をしており、ユグドラシルの塔にこれる程の実力は無い。
そうなると、誰かが新たなEXクラスを取得した可能性がある。
「2人とも来たか。DTubeに富士の工場での出来事、不二木達の自供を投稿して来た。直に人々に知れ渡るだろう」
「ルル様ありがとう。神峰の会社やお父さんの会社は大変な事になると思うけど、責任をとってもらわないとね」
人を操る魔道具、そして人をモンスター化させるなど非人道的な研究をし、それを一般人にまで広めるなんてやってはならない事だと思う。
神峰の目的は未だに分からないし、真実を問い正す為に一刻も早く神峰に追い付かないと。
「ルル様、神峰達はどの辺りまで攻略してる?」
「うむ、先程から探っておるのだが……白い靄が掛かっていて何も見えん」
ルル様でも見えない……上で何が起こっているのだろうか? 私は苺ポケットから血で汚れたラーフのヘソナイトガーネットを取り出す。私が殺意で染まった時に胸から出て来た物で、奈々子ちゃんの宝石と合わせると、これが最後のナヴァラトナだ。
「ルル様、これを使って」
「ラーフのヘソナイトガーネットか……確かに受け取った」
ルル様の胸に吸い込まれるよう入り、ルル様の胸には8つの宝石が力強く輝いている。
あとひとつ、奈々子ちゃんから無理矢理奪ったケートゥのキャッツアイを奪い返せば、ルル様の目的は達成する。
しかし、ルル様が宝石を吸収し、力をさらに発揮すると、ルル様の様子が突然おかしくなる。
「……なんだと、神峰達は既に100層へと辿り着いている……しかし、これは……悪魔? 神峰は悪魔を召喚していたのか!?」
ルル様は酷く困惑している。それも、ここまで酷く困惑している姿を見たのは初めてだ。
「ルル様大丈夫?」
「……私としたことが……早く奴を止めなければ……しかし、我の力では悪魔に太刀打ちできん」
「ルル様」
「む?」
私はルル様を優しく抱く。
「神峰は私達の敵だよ、その敵が悪魔を召喚しているなら倒すよ」
「そうです、私は神峰に借りを返さなくてはなりません。ルル様が元の世界に帰るとかはどうでもいいですが、神峰は放ってはおけません」
奈々子ちゃんはさり気なく棘を混ぜるが、ルル様は感動したのかポロポロと涙を流す。
「お主達……あんなに酷い事をした我の為に、ここまでしてくれるとは……、我がセントゥーリアの門が開いた暁には、セントゥーリアに招待しよう」
セントゥーリアって異世界よね? そんな所に行って帰って来れるのかしら? それはさておき、目の前の門を潜らないと神峰達がいる100層まで行けない。
私達は準備を済ませユグドラシルの塔81層へと足を向けた。
ダイターン3。私、原作知らないのよね。