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悪魔ベリフェゴール

 富士の工場には僅か10分程で到着した。

 急制動が効かず、工場に突っ込んでしまったが、不思議と警報装置は発動していなかった。


「ななちゃん、怪我は無い?」

「はい、大丈夫です」


 妙に静かな工場は警備のハンターの気配も無い。不気味な程に静かだった。


 工場内は電源が通ってないのか真っ暗で、私の【暗視】が無ければ先に進むのも一苦労だけど、奈々子ちゃんも【暗視】のスキルは私と共有しているらしく、この暗闇の中でも進む事ができた。


 エレベーター前に行くと、スイッチが反応しない。無理やりドアをこじ開け、地下へと降下して行く。


 1番下の階層にエレベーターは止まっており、上部のハッチから侵入し、内部の研究施設へと潜入する。


「悪魔の気配がする。悪魔ベリフェゴールはまだいるようね」

「ほのりんさん分かるのですか?」

「うん。何か臭う」


 リリスは逃げたのかいないようだ。人を操るベリフェゴールの魔玉と呼ばれる魔石は、悪魔ベリフェゴールが直接操っている可能性がある。


 この混乱を治める為にはまずは悪魔ベリフェゴールの討伐が最優先になる。


 奥の倉庫らしき場所、私が潜入した場所に戻ると悪魔ベリフェゴールが大きな水晶玉に何やら黒い靄を流し込んでいたのが見える。


「ン? 白イ魔法少女と……黒イ魔法少女? 黒イ魔法少女ハ死ンダト聞イタガ」


 ベリフェゴールは奈々子ちゃんを見て、驚いていたが、直ぐに落ち着きを取り戻し立ち上がる。


「ベリフェゴール、外で操られている人を開放しなさい」

「ン〜拒否スルゥ〜」


 ピキッ


 本当にイライラする。喋り方もそうだけど、あの顔、分かってて人を挑発しているに決まっている。


 ならさっさと倒して、この混乱を止めるだけよ。


「まじかる☆エタニティ!」


 無数の星が流星となってベリフェゴールに向かって飛んで行く。


「フンッ!」


 ベリフェゴールの前に黒い空間が生まれ、その中にまじかる☆エタニティが吸い込まれ消えてしまった。


「まじかる☆ファイナリティ!」


 奈々子ちゃんが放った魔法は私に似た流星を放ったが、明確に私と違うのは色だろうか? 私のまじかる☆エタニティは白く輝くのに対して、奈々子ちゃんのまじかる☆ファイナリティは黒く輝いていた。


 ベリフェゴールは再度、黒い空間を出現させて奈々子ちゃんの魔法を無力化させようとするが、私は間髪入れずにまじかる☆グリッターネイルを放つ。


「グアアアア目ガアアア!!」


 奈々子ちゃんのまじかる☆ファイナリティは、黒い空間に半分は吸い込まれたものの、残り半分はベリフェゴールの腹部に当たると、当たった場所を大きく削り取る。


「ギャアアア! クッソ! 仮面ノ魔法少女ニ受ケタ傷ヲ折角治シタノニ!! オ前達、時間ヲ稼ゲ!!」


 ベリフェゴールは黒い靄になると、今いる部屋のさらに奥の部屋に逃げて行く。


「待て!」


 私達が後を追いかけよとした時、人の姿をしたモンスターが10体以上現れた。

 その姿は元ハンターだろうか? その人が身に着けていたであろう装備を身に着けている。


「レムナント化してる!」

「まじかる☆スキルで浄化する必要がありますね!」


 まだ試した事はないが、まじかる☆エタニティでもレムナントを人に戻す事が出来るか実験をする必要がある。


 被験者には大変申し訳無いが、今は時間が惜しい。魔道具が壊れるか、体内の魔石を破壊するしかない。


 レムナント達がもの凄い速さで迫り来る中、死なない程度に格闘で吹き飛ばし、まじかる☆エタニティを撃ち込む。


「ギャアアアああぁぁ……」


 筋肉が膨張しレムナント化した元ハンターは身体の表面が光の粒子に変わると、元の人の身体になった。

 その様子を見ていた奈々子ちゃんは、迷わずレムナントにまじかる☆ファイナリティを撃ち込んでいく。


 私達なら簡単にレムナントを倒す事が出来るが、一般のハンターはレムナントを倒すのは難しいだろう。


 魔石を破壊するのはほぼ不可能だし、魔道具を狙うにしても、どんなタイプのアクセサリーか分からない。膨張した筋肉に埋もれていたら最悪だ。


 そんな事を考えながら最後のレムナントを倒すと、私達は悪魔ベリフェゴールを追う為に奥の部屋に向かう。



 奥の部屋に何かの儀式を行うのか、床に大規模な魔法陣が描かれていた。


「来タカ! 我ラ悪魔ノ真ノ力ヲ見セテヤロウ!」


 床の赤い魔法陣が赤黒く輝き出し、悪魔ベリフェゴールの肉体からリリスを越える黒いオーラが噴き出す。


「フゥゥ……。ユグドラシルノ門ガ開キ魔界ト繋ガレバ、コンナ手間暇ヲ掛ケル必要ガ無イノニナ」


 目の前の悪魔ベリフェゴールの肉体はガリガリだったのに、今は鍛え抜かれた身体になっている。ただ……目の前にぶら下がっている物が気になる。


「ドウダ、我ノ肉体美!!」


 サイドチェストのポーズを決めるベリフェゴール……。


 何か目のやり場に困る。奈々子ちゃんを見ると、心底軽蔑しているかのような眼差しでベリフェゴールを見ている。

 

 ……完全に男嫌になったよね。後で奈々子ちゃんにはカウンセリングが必要だ。


「肉体美は分かったので、前の物を仕舞ってくれませんか?」

「ン〜駄目♪」


 人をおちょくる顔をしながら、下のモノを器用に動かしている。


 こいつ、即座に殺そう。もう我慢ならん!


 隣にいる奈々子ちゃんからも殺気がひしひしと伝わってくる。


「死ね! 【発火】!」


 爆炎がベリフェゴールの真上で爆発を起こすと天井が崩れる。砂煙が舞う中、崩れた天井から光が射し込む。


「ココハ狭イ、外ニ出ヨウカ」


 ベリフェゴールは背中から翼を生やすと、颯爽と飛び立つ。


 私達も後を追うように、ベリフェゴールの後を追うと、月明かりに照らされた富士山が顔を見せる。


「サァ思ウ存分楽シモウカ!!」


 黒い槍が奈々子ちゃんを狙うが、私は息を吐くように奈々子ちゃんの前にまじかる☆シールドを張る。奈々子ちゃんはチラッと私を見ると、すぐさま攻撃に転じ、まじかる☆ファイナリティを連続で放つ。

 

 私と違って奈々子ちゃんはアタッカータイプで、まじかる☆スキルは全て高威力の魔法だ。


「まじかる☆ブラッディホロウ!」


 赤黒く血のような波が押し寄せる。


 ベリフェゴールは危険と察知したのか、回避行動に移るが、私は退路を断つ為にまじかる☆アクアプリズンを発動させる。


 まじかる☆アクアプリズンは水の牢獄で拘束させる事も可能だけど、他に使い道がある。それは……


「グオオオ!!」


 水流を直接ぶつけダメージを与える事も可能なのだ。火山エリアでは結構重宝した技で、溶岩を冷やして道を作ったり、川を作ったり、お風呂を作ったり……。


 まぁ、自由に操作が効くまじかる☆プリズンは応用が効くのだ。


 ベリフェゴールは油断していたのか、鉄砲水を受けたベリフェゴールの動きが止まり、ベリフェゴールはまじかる☆ブラッディホロウを受けると、下半身がドロドロに溶け出す。


「止め! まじかる☆ローズハリケーン!」


 マラカスから生み出され薔薇がベリフェゴールを襲う。


「何故ダ、我ハ悪魔ダゾ……人族如キニ遅レヲ取ルナド……マサカ……アリエン……コウナッタラ、同胞達ノ為、全テヲ捧ゲル!!」


 ベリフェゴールの頭上に黒い輪が浮かび上がる。天使の輪に似た黒い輪だ。


「滅ビヨ魔法少女……我ノ命ト引キ換エダ……」


 何だか悪い予感がする。

 すぐにでもベリフェゴールを倒す必要がある。


「ななちゃん! アメイジングコスモを!」

「はい!」

「死ネ!」


 まじかる☆スキルブックから、アメイジングコスモを取り出した瞬間、ベリフェゴールは即座に生成された槍を私に投げつける。


 !? まじかる☆シールド! 


 まじかる☆シールドが展開するよりも早く、私の胸に黒い槍が突き刺さ……らない。その代わりに真夜中なのに太陽が登っている。


「グ……コノ光ハ……日輪ノ輝キ……!!」


 黒い槍は消滅し、私の身体から大量の汗が噴き出す。あの一撃を受けていたら致命傷だった。それ程までに濃縮された一撃だった。

 

 その一撃を止めた光、逆光で見え難いが、その光には見覚えがある。


「真打ちの登場だぜ!」 



読んでいただき、ありがとうございます。

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