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新たな竜王と新たなドレス

 城の壁を駆け降りるように私達は地上に降り立つと、そこには満身創痍のメンバー達が地面に座り込んでいた。


 末留さんは鎧がボロボロだし大剣は根元で折れており、激戦が繰り広げられていたの様子が容易に想像出来る。


 その中でも、萬田さん重症を負っており、両腕が無かった。


 話を聞くと、単身でドラゴン10匹相手に挑んだらしい。そして「竿は残ってるから大丈夫よ♡」と、言っていた。ちょっと理解できない。

 今は柳瀬さんと油目さんの懸命な治療のお陰か、失った腕が徐々に再生されており、このまま治療を続ければ完全に再生出来るそうだ。


 相変わらず萬田さんは滅茶苦茶な人だなと思うけど、ATLANTISのメンバーは全員少し変わった人が多いのも事実。


 末留さんは元から変わっているけど、今私の目の前にいる園田さんは人型になっている竜族とイチャついている……。園田さんが一方的にデレデレしてるのに対し、うぐいす色の可愛らしい竜族の女の子は気が強いのか、ベタベタとくっついて来る園田さんを罵っていた。


 その竜族の女の子の名前はアリアーナリア、通称アリアちゃん。園田さんがテイムしたドラゴンだそうで、あんな可愛い子が園田さんの……なんていうか、少し歪んだ愛情を受けているのが可愛そうだ。


 あくまで私の客観的な印象なので、アリアちゃんがどう思っているのか分からない。でも、顔を赤くして照れているのを見ると、最近絶滅したツンデレキャラなのかもしれない。これはとても貴重だ。


 そんなアリアちゃんが私と目が合うと、園田さんを殴り飛ばし、こちらに駆け寄って来る。


「ちょっとアンタ! 少し時間貰っていいかしら?」

「あ、え? はい」


 私より背が低いアリアちゃんはうぐいす色の綺麗な髪色に、透き通った赤い目が美しい。

 そんなアリアちゃんが急に威圧的に話し掛けて来たので、その勢いにたじろぐ。


「貴女がレティア様を倒したそうね」

「うん。ななちゃんと一緒にだけど」

「……レティア様から受け取った力を無駄にしないでね」

「もちろん」


 ただ、このスキルは使わない事が前提らしいけどね……。


「まあ、レティア様が復活するのに100年は掛かるから、暫くは私が竜王代理ね! ほら、私に【竜王】が付いたわ」


 アリアちゃんの言葉に反応し、ルル様が私の肩から前のめりに頭を出す。


「たしかに、お主に【竜王】がついたな。レティアが復活するまで大変だろうが、代理を全うするのだ」

「守人に言われなくてもやるわよ!」


 イマイチ2人の上下関係が分からないが、それよりもレティアが復活する? なにそれ。


「竜王レティアって復活するの?」

「そうよ、アークバハムートは何度でも復活するわ! 神の使いであり、悪魔を殲滅する為の武器でもあるもの。今回だって死なずに魔石を半分差し出すだけで良かったのに、貴女達が殺しちゃうんだもん! 本当に呆れたわ!」

「えええ! そうなの?」

「様子がおかしい竜王を確実に倒す為には、殺すしかなかったのだ」


 やたら大きい魔石だと思ったら、アレって半分個になるんだ。まとめて吸収しちゃったよ。


 私達は竜族の王様を殺しちゃったし、アリアちゃん以外の竜族も殺しちゃっし、きっとアリアちゃんは私達の事を恨んでるんだろうな。


「別にレティア様を殺しても良いわ。私達、神に選ばれた者達は、戦って死ぬ事はとても光栄な事なの。だから気に悩む事は無いわ」


 ふ~む、竜族とは謎な生き物だ。人に近い形になったり、ドラゴンになったり。人間に近い話し方をすると思ったら、考え方が斜め上を行くし。もしかしたら、以前攻略した女郎蜘蛛もそんな思考だったのだろうか? それとも、人を襲う事だけを考えているモンスターなのか? 今となっては分からない。


 アリアちゃんと別れ、中村さんと周防院さんに視線を向ける。


 中村さん達は地面に落ちているアイテムを回収中だ。ドラゴンの魔石は他の魔石とは比べ物にならないくらい大きく、また様々な色があり中村さんと周防院さんがとても喜んでいた。

 きっとこれらの魔石やドラゴンの素材も、人類の為に研究開発されるのであろう。


 そして、Chrome Tempestに視線を向けると、ケルビンさんはビール瓶を片手にスマホで自撮りをしていた。


 地面には空瓶が数本転がっており、ドラゴン達を倒した祝杯でも上げていたのだろうか? このあとも打ち上げするのに気が早いよ。


 メアリーさんはマイクさんの怪我を治療していた。背中には痛々しい爪の跡が大きく3本首から腰まで伸びていた。


「マイクさん大丈夫ですか?」

「ああ、見ての通り大丈夫だ」


 全然大丈夫に見えないのですが……。


「竜王は強かったか?」

「それはもうとても」


 正直もう戦いたくないレベルで強かった。


 魔法少女を限界までランクを上げ挑んだが、想像を遥かに超える攻撃力と防御力に、勝てるビジョンが浮かばなかったほどだ。


 長期戦になれば負けていたし、園田さんの援護が無ければ、今頃は塵一つ残さず消えていただろう。


 私もメアリーさんと一緒にマイクさんの治療に参加する。私の魔法を掛けると、傷跡も残さずに綺麗に治った。


「ありがとう」

「どういたしまして」

「もう、2人で良い雰囲気出しちゃって、妬けるじゃない」


 流石に人前では自重していたが、ついついマイクさんと見つめ合ってしまった。急に恥ずかしくなり暑くなる。【火炎耐性】は発動していないようだ。


 手で自分の顔を煽ると、視界の片隅にウィンドウがポップアップした。



『魔法少女専用クエスト【他のハンター達と協力しレイドをクリアする】をクリアしました』


【まじかる☆ドレスアップが進化しました】



 私の魔法少女の衣装が輝き、美しいドレスが現れる。


 くるりと回り、新しい衣装を見てみると、全体的にデザインが凝った物になっている。

 スカートのフリルが追加され、苺の刺繍も増えた。キラキラした金糸も見える。この銀色の糸は……ミスリルだろうか? 腰には大きなリボン、背中の天使の羽根も少し大きくなり相変わらず勝手にパタパタと羽ばたいている。


「ほのりんさん、その衣装とても可愛いです。あとそのティアラ凄い宝石が散りばめられてますよ」

「え? ティアラ?」


 まじかる☆ボックスから手鏡を取り出して確認すると、大小様々な宝石が散りばめられていたティアラが頭部に飾られていた。


 中央にある1番大きい宝石はダイアモンドだろうか? 世の女性が一度は着けてみたい超豪華アクセサリーのひとつだろう。これを買ったら数億円はしそうなティアラに、急に怖くなる。


「戦闘で壊れないよね……?」

「それはどうでしょうか?」


 奈々子ちゃんの言葉に恐怖が湧いてくる。


 めっちゃ怖いじゃん! 壊れたらどうしよう? こんなの被ってモンスターと戦えないよ。


 次第に私の周りには女性陣が集まり、私の新しい衣装に興味津々だ。代わり番こでティアラを被せスマホで写真撮影大会になった。腕が生え揃った萬田さんも装着し、1枚写真を撮ったが妙に似合っていたのが印象的だった。


 男性陣は遠巻きこちらを観察している。


 こういった女性の会話に男性が入って来ると針のむしろになる事を知っているのかもしれない。

 私は特にきにしないけどね。好きな人には見てもらいたいし。


「マイクさん、新しい魔法少女の衣装はどうですか?」


 突然話を振られたせいか、マイクさんの目がまんまるになったのを見て、可愛く思えてしまった。これがキュン死とか言うやつだろうか? 


 じっくりと私を上から下まで見ると、優しく微笑み、


「とても似合っていると思う」


 イケメンが言うと破壊力あるな〜。


 女性陣の黄色い声が上がる。若干名、ドスの効いた声が聞こえるが気にしたら負けだ。


 そんな姦しい中、宝箱の中身を回収しダンジョンゲートを潜り、私達のアライアンスパーティーの活動は、最後の仕上げと打ち上げを残し終了した。



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