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レッドドラゴン

 魔法少女ほのりんからの通信から数分、半壊した城の上階層が突如爆発を起こし、瓦礫が落下してくる。


 慌てて中村とケルビンがスキルを発動し、落下してくる瓦礫を防ぎ、パーティーメンバー全員を守った。


「ちっ! 何が起きたんだ?」


 粉塵が舞い視界が限りなく悪くなるが、そんな中で黒い影が突如とし迫って来た。


「――っ!?」


 視界の悪い中、瓦礫と粉塵の中を突っ込んで来た巨体は、中村とケルビンの防御系スキルを突破し、アライアンスパーティーの前に降り立つ。


「ギャオオオオオンンンッッッッ!!!」


 突然現れたそのモンスターの姿に、息を呑む。

 赤い鱗に立派な2本の角。

 金の瞳に、鋭い牙。

 4足で大地を踏みしめ、しなやかな尾は太く、今まで戦って来たどのモンスターよりも強く、王者の風格を感じさせる佇まいだった。


 その赤いドラゴンの名前はレッドドラゴン。ドラゴンの中でも巨体な個体が多く、もっとも好戦的な種である。炎を操り、巨体からは想像できない程の速さを持っている凶悪なドラゴンである。


「お前達! 目の前のドラゴンだけじゃないぞ! 気をつけろ!!!」


 中村の警告でハッとなる面々。


 辺りを見渡すと、先程までその巨体の影すら無かったのに、空に何匹……いや、数百匹のドラゴンの姿が大空を舞っていたのだ。


「キタキタキター! ドラゴンがこんな沢山いるなら、1匹は確実にゲットするぜ!」

「園田さんー! それよりもこの状況を何とかするのが先っすよー!」


 園田は【竜騎士】のクラスに就いているが、相棒のドラゴンはいない。

 地面を高速で走るタイプのランドサウルスやサラマンダーなどのトカゲタイプのモンスターも使役する事は可能だったが、園田のプライドがそれを許さなかった。

 ワイバーンも進められたが、園田はドラゴンじゃないと嫌だと言い、妥協する事は絶対にしなかった。

 そして目の前には待ちに待った本物()()のドラゴンだ。

 園田は我先にとドラゴンの群れに突っ込んで行く。


「あっ! 園田さん!」

「やめなさい末留ちゃん♡男の子はああでなくちゃ♡」


 萬田がそう言うと、末留はそれ以上何もいえない。それよりも今は目の前の問題を解決する方が先決だ。


「柳瀬! 油目! ここに陣を敷け!」

「「はい!!」」

「【結界陣】」

「【ファイアサークル】!!【ハイプロテクション】!!」


 城の正面は開けた場所になっているが、かといって有利な場所ではなかった。


 正面には巨大なレッドドラゴン。陣を囲むように縦横無尽に飛び回るドラゴンの群れ。


 気を抜いたら、狩る側のハンター達が逆に狩られる立場になってしまう、そんな緊張感が戦場の空気を支配していた。


 正面のレッドドラゴンは盾を構えた2人を見下ろし、まるで下等生物を蔑むような視線を向ける。


「人族よ悪い事は言わん、大人しく我等に命を捧げよ。さすれば我等の血肉として永遠の命を得られよう」


 目の前のレッドドラゴンが突然喋りだしたと思ったら、命を捧げよと言う。


 だからといって大人しく従う者は存在しない。ケルビンもそのひとりだ。


「ヘイ! フ◯キントカゲ野郎! ちぃーっとばかり図体がでけえからって図に乗るんじゃねえ! こちらとお前らをぶち殺しに来てんだ! 前回のレイドの借りを返してやるぜ!」

「ふん。人族こどきが我等竜族に楯突くとは片腹痛い。良かろう、楽に死ねるとは思うなよ」

「望むところだ!! 一撃必殺【ライジングソード】!!」

 

 ケルビンの持つ、白い剣が陽炎のように揺らめく。

 上段から振り下ろされた斬撃は超高温のレーザーのように伸び、真っ直ぐにレッドドラゴンを襲う。


「人間如きの技が我に効くとでも思ったか」


 レッドドラゴンは大きな口を開くと、幾何学模様の魔法陣が展開され、炎の塊が丸く形成され、赤色からオレンジ色、そして白へと変わる。


 色が変わったと言う事は、ドラゴンが放とうとしている火球は、凡そ6,500℃以上の超高温の火球だ。それがケルビンの放ったスキルに向って放たれた。


 超高温の斬撃と超高温の火球が衝突し、周囲の温度が急激に上昇し、空気が揺らめき大地から湯気が立つ。


 普通の人間がこの場にいたら、一瞬で蒸発してしまうが、ハンターは人智を超えた謎のバリアが発動していると言われている。


 それは魔力と呼ばれたりオーラと呼ばれている。


 その力は単純な計算では計れない力を生み、科学では証明できない部分が多くあった。


 ハンターのレベルは対峙したモンスターによって複雑な計算が行われ、謎の力場が発生すると言われている。


 今現在、超高温に曝されたパーティー達は既に死んでもおかしくない状況だが、個々のレベルやスキルでダメージは軽減されている。


 無傷では無いにせよ死ぬ事はない、パワーレベリングで、人類の常識を覆す程の強さになっていた事をケルビンを含め、他のメンバー達は今の段階では気づく者はいなかった。


「うぉぉらぁぁ!! メアリー! 力を貸せぇぇ!」

「まかせて! あのトカゲ野郎に一泡吹かせな! 【フォースアップ】!!【ファイアエレメンタル】!!!」


 メアリーの魔法が発動しケルビンのステータスが上がり火炎属性も向上した。

 それに伴い、ケルビンの【ライジングソード】の斬撃がオレンジ色から白へ、そして僅かに青く輝いてくる。


「な、何だと!? 我の炎をより火力を出せるのか? 下等生物如きがっ! 死ね!」


 さらにレッドドラゴンは火球を放ちケルビンを狙うが、修復された大きな盾が火球を弾き飛ばし、他のドラゴンに命中し爆散する。


「お前ばっかり格好つけさせる訳にはいかん。うちの隊員に示しがつかないんでね」

「へっ、ナイスタイミングだぜ、ナカムラ!」


 【ライジングソード】が、レッドドラゴンの火球を両断し、真っ直ぐにドラゴンを通過する。


「ご……ぐぺ?」


 レッドドラゴンは左右に綺麗に割れ崩れ落ちると、空を飛んでいたドラゴン達に動揺が走るのが分かる。


 リーダー各のドラゴンが死んだ事によって動揺したのかは分からないが、それでも流れがこちらに変わったのが誰しも理解できた。


「よーし、次のドラゴン狩りと行こうぜ!」


 次々とドラゴン達が空中から火球を放ち始めるが、柳瀬と油目が敷く陣は頑丈で誰ひとり欠員を欠く事は無かった。


 痺れを切らしたドラゴンが数匹降りて来ると、ここぞとばかりに萬田が飛び付き、地面に引き摺り降ろす。


 萬田の太い腕がドラゴンの首に巻き付くと、骨が砕ける音が鳴り、ドラゴンは白目を向き舌をだらしなく垂らしながら息絶える。


 ドラゴンの群れがケルビン達とは反対の方から迫る。


 後方を警戒していた周防院がいち早くそれに気が付き、【雷歩らいほ】と呼ばれるスキルで瞬時に上空に駆け上がり、魔法を詠唱する。


「はああぁぁっ! 【チェインライトニング】!!」


 周防院が放った雷は、ドラゴンからドラゴンへ伝い、強力な電撃が襲う。


 近くにいたドラゴン同士は【チェインライトニング】の餌食となり落下し硬い地面に叩き付かれ、肉塊に変えていく。


 ドラゴンのように、どんな強力な力をもってしても、無防備な状況で地面に叩き付かれれば、所詮は生物、簡単に命を落とす事になる。


 手応えを感じた周防院は、マナポーションを飲み終えると【雷歩】で自由に空を歩き回る。


 自身が極度の高所恐怖症なのを忘れて――。




 



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