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悪の元凶

「ねぇルル、あの悪魔ベリフェゴール? って奴が言っていた事の説明と、ナヴァラトナについて教えてくれる? まぁ、マジカルガールの胸から出る宝石の事だと思うけど、隠し事されると信用問題になるわ」


 メアリーさん……そちらのカナリアさんも黒なんで、問題を棚に上げるのはどうかと思うけどね……でも私達も今後の事を考えると、ルル様の説明は必要だろう。

 私はルルを胸に抱き、軽く頭を撫でる。


「……良かろう。ほのりんも心して聞くがよい。おぬしにも話していない事を話そう」


 そして、ルル様はゆっくりと、分かりやすく話してくれた。


 まず、ナヴァラトナとはEXクラス【魔法少女】しか生み出せない特殊なエネルギー結晶体である事、そして、その集められたエネルギーは100層にあるユグドラシルの門を開く為の鍵になる。

 ユグドラシルの門の先には9つの世界が広がり、ルル様こと、ルルデミア=ロー=ゲーデルバイセルはセントゥーリアと呼ばれる世界に帰る為に、私を利用している事を明かしてくれた。

 また、先程の悪魔は、ユグドラシルの門の先にある悪魔が住む世界にも繋がっているらしく、何故、悪魔ベリフェゴールがこの世界にいるのか知らなかったそうだ。


「我はセントゥーリア側の守人だ。誤ってこの世界に来てしまったが、帰る方法がほのりんを利用するしか無かった。本当にすまないと思っている」

「……ううん。逆に私は感謝してるよ。あの時、クラスチェンジオーブが無ければ死んでいたし」


 41層に来た時、魔法少女に成れなかったら、デスボールに殺されていただろう。


「しかし、ほのりんがあの場所に来たのは偶然ではない」

「え?」

「デスボールを操り、41層に送り届け、魔法少女に成るよう仕向けたのは、何を隠そう我なのだ」


 頭が真っ白になる。

 ルル様が何を言っているか分からない。


「大丈夫ですか? ほのりんさん」

「駄目、ちょっと胃が痛くなってきた」


 マジで吐きそう……。


「それが本当なら何故、私だったの?」

「生き残る可能性とナヴァラトナの宝石を集める為の感受性、そして願いの強さに賭けるしかなかったのだ。そして、須藤よ、お主にも謝らなくてはならん」

「え?」

「数年前にデスボールを仕掛けて、襲わせたのは我だ」

「そ、そんな……何で……?」

「須藤、お主もEXクラスチェンジオーブの適正者だった。パーティーを襲わせ、須藤を拉致して済む筈が、パーティーを全滅させるだけで、須藤を逃してしまったからな。それ以来ダンジョンに来る事も無くなったし、候補から外れたのだ」


 衝撃の真実に空気が重くなる。


 奈々子ちゃんに至っては泣き崩れてしまった。

 

 奈々子ちゃんの恋人は、デスボールに殺された事を本人から聞いた事がある。まさか、その裏にルル様が関わっていたなんて信じられない。

 

 沸々と私の中で怒りが湧いてくる。


「レイドってやる必要があるの?」


 私は正直、この状況でレイドなんかできないと思う。何を信じてい良いか分からないし、奈々子ちゃんとケルビンさんも、こんな状況だし。


「レイドのクリア報酬は、ほのりんの保険だ。使わない事に越した事は無いが、有った方が良い」

「それって、何なの?」

「竜王アークバハムートの魔石には、EXまじかる☆スキル、【魔法少女は■■】を取得する事が出来る。先程言ったが、これはあくまで保険だ。これを取得しておけば、何かあった時の保険になるのだ」


 む? 一部聞き取れなかっぞ? 急にノイズが走り、何を言っているか分からなかった。

 しかも保険って何よ……保険が必要になる事態なんて早々起こる訳ないじゃない……このスキルはそんなに重要な物なのかしら?


「それと……」

「まだあるの?」

「ほのりんが、ナヴァラトナを集めるように心を操作していた」


 あぁ……何となく違和感を感じてたいけど、そう言う事だったのか……、何だか頭が痛くなって来たよ……。

 もぅ無理〜。布団に包まって1日寝ていたいよ〜。


「おい、ルル。結局、お前は俺達の味方なのか敵なのか?」


 マイクさん刀を握り殺気を向けるが、ルル様を抱えている私にまで殺気がモロに当たって、脂汗が吹き出すし、息が苦しくなるし勘弁して欲しい……。


「……我を信じてくれている限り、ほのりんの味方である。我は魔法少女の相棒だからな」

「「……」」


 私()()の味方ではいてくれるのね。

 取り敢えず、私達も頭を冷やし気持ちを整理する必要があるし、ケルビンさんの容体も見なくてはならない。

 さらに、カナリアさんも悪魔ベリフェゴールに操られている可能性があるなら、早急に対処する必要がある。

 一旦レイドは延期にし、今一度、アライアンスパーティーを集めて話し合いが必要だ。


「ななちゃん……立てる?」

「……はい」

「今日のレイドは中止にしよう」


 奈々子ちゃんを支え起こすと、奈々子ちゃんの目元が腫れ、赤くなっている。白く綺麗な肌なので、目立ってしまう。後でまじかる☆ヒーリングシャワーを掛けてあげよう。


「メアリー、カナリアは何処にいるか分かるか?」

「渋谷ダンジョンセンターよ」

「なら、ケルビンを病院に搬送し終えたらカナリアを止めるぞ」

「分かったわ」


 私達はケルビンさんを抱えると、ダンジョンゲートに潜り、渋谷の街へと出る。

 ケルビンさんを担架に乗せ医療班に任せると、その足で渋谷ダンジョンセンターに向かった。

 そして、Chrome Tempestが借りている部屋に入ると、カナリアさんは何かを悟ったのか、突然暴れ出すが、ハンターではないカナリアさんは速やかに拘束された。


「指輪ね」


 カナリアさんの右手薬指に嵌った指輪には、赤い小さな魔石ガ嵌っており、その指輪を抜き取り破壊すると、黒い靄が吹き出して消えた。

 今回は悪魔ベリフェゴールは出て来なかったけど、悪魔ベリフェゴールの視線のような物を一瞬感じた。

 後遺症があるかもしれないので、カナリアさんも医療班に頼み、病院へと搬送してもらい、なんだかんだで夕刻の時刻になってしまった。




「で、ルル様が言った事は真実なのか?」


 渋谷ダンジョンセンター会議室。

 ケルビンさんは不在だが、レイド・竜王討伐戦の参加者が全員揃っていた。

 レイドに参加する為に気合を入れた人が多いが、今回は事情を説明して延期する事になったのだ。

 レイドをするにもタンクが1名不在なのは致命的であり、いざという時に総崩れを起こす危険があったからだ。


「ほのりんさんは利用さていても、ルル様を信じるの?」


 周防院さんの質問に胸がキュッと締まる。

 正直、信じるか信じないかと言われれば、信じたい。ルル様には何度も助けられたし、彼がいなければ、ここまでダンジョン奥深くに行ける事は難しかっただろう。

 そして、ルル様はこの世界に迷子になった存在だ。出来れば元の世界に返してあげたい。


「いろいろあったけど、ルル様と100層を目指したいと思うの。そして、嫌かもしれないけど、ななちゃんには80層までは来て欲しいの」

「……」


 80層の先に行くにはEXクラス保持者が2人必要で、ルル様に思う事はある筈だけど、どうしても奈々子ちゃんの協力が必要だ。

 もし、駄目なら別の方法を考える必要がある。


「私はほのりんさん……いえ、穂華ちゃんに協力します。ルル様は……信用できないけど、私は穂華ちゃんを信じているので」

「奈々子ちゃん……」


 奈々子ちゃんの恋人を殺したのはルル様だ。

 私も同じように殺されかけた事を考えると、ルル様を信用しきれないのは確かだ。

 まるでアニメで出て来る悪の元凶が、魔法少女に付き添うマスコットだったりするが、実際に経験すると洒落にならないと思った。

 


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