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相談してみる事にした

 喫茶しぐれのオープン前に、奈々子ちゃんが来店してくれた。

 私が電話を掛けたら直ぐに出たので理由を聞くと、元々朝イチに喫茶しぐれでモーニングを済ませるつもりだったらしい。


「穂華さん、重要な話があるって聞いたのですが……」

「取り敢えず座って、珈琲を淹れるから」


 カウンター席に奈々子ちゃんを通すと、私は珈琲を淹れる。

 奈々子ちゃんはブラックは飲めないので、カフェオレを作った。


「実はね……私は、そのマイクさんと昨夜は一緒だったの」

「おめでとうございます。2人が中々くっつかないのでモヤモヤしておりました」


 意外に驚かないな……、告白するのにかなりの体力を使ったのに。


「穂華さんは以前からエバンスさんの事ばっかり話していましたし、エバンスさんは穂華さんの事を気になっていた様子でしたし」

「どうやって告白するとか男性とどうやって付き合うか分からなかったから、取り敢えず食事に誘ってお酒呑ませようかなって思ったの」

「悪くないやり方ですね。酔わせて押し倒したんですね」

「いや、それがね……」


 酔い潰れたマイクさんを介抱する為に、泊まっているホテルの部屋に来たのは良いが、マイクさんが強引に私をベットに引きずり込んだ事を説明した。

 何だか説明してて恥ずかしくなってきた……勿論行為については伏せてある。


「なるほど、ドラマみたいな展開でその続きが気になりますね」

「あはは……それはちょっと……」


 学生時代は同じクラスの子が、彼氏が出来たとかキスした、あんな事やこんな事をしたと生々しい会話をしているのをよく聞いたけど、流石に私はペラペラとそんな恥ずかしい事を人前で話す事はできない。

 本当に相談したい事があったら奈々子ちゃんに言うかもしれないが、まだ抵抗がある。


 それよりも! だ。奈々子ちゃんとルル様に聞いて欲しい事があるのだ。

 肝心のルル様は開店時間近くにならないと来ないので、奈々子ちゃんには先に話してしまおう。


「本題なんだけどさ……」


 マイクさんの部屋からスキルを使い、こっそりと抜け出すと、USHA所属Chrome Tempest専属サポーターであるカナリア=フレーマーさんを、ホテルの外で見かけた事を話した。

 そして、謎の女性と話し込んでいる内容を奈々子ちゃんに教えると、複雑な表情を浮かべ、徐にスマホを操作すると私に1枚の写真を見せてきた。


「金髪で赤眼の女性とは、この人ではありませんか?」


 黒いスーツを着て胸元が開けている色気ムンムンの写真は、カナリアさんと話をしていた女性とそっくりだった。


「同一人物かもしれない」

「……この人……いえ、穂華さんの話が本当なら、このモンスターは神峰奏司かみねそうしの秘書をしている人物です」


 神峰奏司!? 何故ここでその人の名前が?

 いったいカナリアさんとどういう関係があるの? 何にか嫌な予感がして胸がザワザワする。


「非常にマズい展開になりましたね」

「と、いうと?」

「Chrome Tempestが私達と合流してから、神峰奏司側に情報が流出していると思っていいでしょう」

「なら、奈々子ちゃんの事も?」

「既に知られている可能性がありますが、それよりも、今日はレイド・竜王討伐戦です。こんな事を言いたくはありませんが……Chrome Tempestが裏切る可能性が出てきました」

「え!? 裏切る?」


 なんで? ……そっか、カナリアさんが私とケルビンさんをくっつけようと企んでいたような事を言っていたしね。

 それは失敗したようだけど、もし、マイクさんが神峰奏司の思惑で動いていたのなら、私の気持ちを裏切る行為だ。それは許せない。


「まだ確証はありませんが、カナリアさんは要注意です。Chrome Tempestに背後から撃たれないようにしないといけませんね」


 そんな恐ろしい事を言わないでよ……。

 あの3人は本当に強いんだから、まとめて相手にするには骨が折れるよ。

 後12時間後にはレイドだし対策のしようが無い……不安を抱えたままで強敵に立ち向かうなんてできないよ。


「ルル様に相談する必要がありますね」

「もう店の前にいると思うよ」


 開店5分前だ。予めモーニングの準備は終わらせているので、いつお客さんが来ても大丈夫なようにしているけど、ルル様に限っては10分前には店の前に待機しているのだ。

 常連客用に席は用意してあるのだが、ルル様は1番珈琲を飲みたいらしく、必ず最初に入店して珈琲を飲むのが日課になっていた。


 喫茶しぐれは朝6時オープンなので、どの喫茶店よりも早くモーニングを堪能出来る。

 早速、人バージョンのルル様や鈴木さんが入店し、「いつもの」を頼む。

 予め準備を終えているので、最速10秒で提供する。


「須藤か、開店前からいるとはツウだな」

「ちょっと良くわかりませんが、ルルデミアさん、少しお話があります」


 奈々子ちゃんがそう言うと、ルルデミアが座ったテーブルへと移動した。

 生憎、私はバイトなので会話には参加できないけど、今朝の出来事を奈々子ちゃんからルルデミアに伝えられる筈だ。


 はぁ、折角マイクさんとお付き合いできたと思った矢先の裏切り……いや、まだ裏切れたと決まった訳じゃない。

 もし、私を襲おうとしたのなら、いつでもチャンスはあったし、この宝石も奪えた筈だよね。


 私のポケットの中にはナヴァラトナの宝石のひとつ、月のパールが入っている。

 何故、私が月のパールを持っているかと言うと、昨夜マイクさんと一緒にいる時に出たのだ。

 出た状況はご想像にお任せするけど、マイクさんの前でナヴァラトナの宝石を出すのは2回目だ。


 うん、やっぱり神峰奏司はナヴァラトナを狙っているのは確かだ。

 マイクさんと繋がっているなら、月のパールを奪えた筈なのに奪わなかった。

 その理由は? 奪う必要がない? それとも、私の考え過ぎでマイクさんは関係ない? 何かを企んでいるのはカナリアさんとケルビンさん? 


 頭がぐるぐる思考の迷路にハマっていると、背後から肩を叩かれた。


「穂華大丈夫? サイフォンの中身、それもう駄目だよ」

「ああっ!! ごめんなさい!!」

「忙しいのは分かるけど、根を詰めないようにね」

「……はい……」


 珈琲粉が入ったサイフォンが、抽出時間を遥かにオーバーしてしまった。これではお客さんに提供できない。


 あ〜、何やってんだろ私。

 このままじゃレイドに集中できないよ……。


 そんなモヤモヤの中、カランカランと入口からお客さんが入店してくる音がなった。


「おはようホノカ」

「Good morningホノカ」

「ホノカー、モーニングセット6人前頼むぜー」


 ズカズカとケルビンさんが先頭を歩き、空いてるテーブル席へと着席する。カナリアさんは来ていないようだ。


 マイクさんの視線を感じるが、目を合わせるのが怖い。

 正直、誰を信用して良いか分からない。

 レイド前に自分の気持ちを整理させる為にやった行いが、最悪の形で帰って来るなんて想像ができただろうか?

 いくら後悔しても時既に遅し。マイクさんと関係を結んでしまった以上、出来る事は少ないけど真実を解き明かし、マイクさん達の疑惑をハッキリさせる必要がある。


 深呼吸をし心を落ち着かせると、サンドイッチと珈琲をマイクさん達が座るテーブル席へと持って行く。


「いつものです」

「このエッグサンドは具沢山だし美味いよな! 毎日食べても飽きないぜ!」

「ケルビン、貴方は食べれれば何でもいいんでしょ?」

「そんなことねぇーよ。こう見えて美食家だぜ?」


 特にメアリーさんとケルビンさんは、いつもと変わらない雰囲気に違和感は感じない。

 どうやって3人に聞き出そうかと迷っていると、ルルデミアがマイクさんの席の前にやって来た。


「お主達3人に話がある。ホノカのバイトが終わったら場所を移すぞ」


 普段のルルデミアでは無く、怒気を含めたその有無を言わさない圧に、いつもの軽い口調のケルビンさんまで黙り込んだ。




読んでいただき、ありがとうございます。

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