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大衆居酒屋にて

 【取得経験値増・小】の効果が付いた王冠、入れた液体が何でもハイポーションになる瓶、食べると1センチ身長が伸びるビスケットが宝箱に入っていた。

 相変わらずダンジョンで手に入るアイテムは効果は謎がおおい。

 まるで人の欲望が具現化したものが報酬として生成されるような不思議な物が詰まっている。

 勿論、この宝箱に入っているアイテムは私には、不必要な物なのだけどね。


 宝箱の中身を回収し終えると、ルル様は私に向かって真剣な眼差しを向ける。

 そのただならぬ雰囲気に私は身構える。


「ほのりんよ」

「はい」

「明日はレイド・竜王討伐戦だ」

「うん」

「気を抜けば、誰もが命を落とす激しい戦いになる。今は、十分に英気を養うのだ」

「分かった」


 魔法少女専用クエストクリアの為に、この1戦は避けては通れない戦いだ。

 なんとか皆が生存し、クリアするのが目標金額だ。


 ルル様の言葉を深く噛み締めながら頷くと、次にマイクさんに向き直る。


「マイクよ」

「なんだ?」

「穂華は生娘だ、優しく扱うように」

「む……」

「ちょっ!!?? ルル様ぁぁああ!?」

「ふははは、後は若者同士よろしくやるのだ! それでは明日また会おう! さらば!!」


 あ、待て! 言い逃げ!? くっそーー! ルル様、何で去り際に爆弾発言して逃げるのよ! もう最悪っ! 


 ちらりとマイクさんを見ると、私に何て話し掛けて良いか迷っている感じがする。

 その表情を見ると、急に恥ずかしくなり、私の顔が熱を帯びてくるが分かる。


 私とマイクさんの視線が重なり、この先の展開を想像すると、心臓が胸から飛び出てきそうになる程ドクンドクンと高鳴る。

 私の呼吸が乱れ始め、マイクさんが私の手を取る。

 背後でダンジョンゲートが開いた音が鳴っているが、私はマイクさんの手から伝わる体温で頭パンクしそうだ


 ルル様は気を使って2人っきりにしてくれたと思うけど、それでもこの状況は色々と問題がある。

 まず祭壇の前なので、時間の経過と共に再度ボスが出現することがあるので、出来れば速やかにこのエリアから離脱する必要があるのだ。

 

「マジカルガール、場所を変えよう。もう少し落ち着いた場所で食事でもしながら……な」

「……はい……」


 思考を読んだのか、この状況を理解しているのか場所を変えようと提案してくれるマイクさんに、私は素直に受け入れるしかなかった。




 ダンジョンゲートから出ると、辺りはすっかり暗くなり、渋谷の街並みから照らされる明かりで夜でも昼間のように輝いている。


 私達が揃って渋谷に現れると当然のように人集りが出来るけど、マイクさんが本来使い道が間違っている【神域】を展開させると、半径10m程度の空間が広がる。

 私達は【神域】で人避けすると、お腹が空いたので食事の為に場所を移す事にした。


「マジカルガール、何か食べたい物はあるか?」

「あ、私少し考えていたんですけど、マイクさんて大衆居酒屋とか行った事ありますか?」

「横須賀にいた時は外で飲む事は無かったからな。基地内で飲む程度だった」


 ふむふむなるほどなるほど〜〜。

 居酒屋には詳しくないけど、大学時代に友達と行った大衆居酒屋は楽しかった。

 陽気なおっさんが絡んでくるのがアレだったけど、それはそれで楽しかった記憶がある。

 渋谷にも道玄坂あたりには大衆居酒屋があるし、ラブホも沢山ある。

 後は近場となると五反田や高田馬場周辺かな? あー、いざ何処に行こうか考える迷う! いつも友達主導で行っていたから、中々決められない!

 こうなったらマイクさんに何を食べたいか聞くのも手だ。なら早速聞いてみよう。


「マイクさんは刺身もいけますよね? 日本食で食べた事が無い物ってあります?」

「……むしろ日本食は、寿司天ぷら意外に何がある? 唐揚げ?」


 え? 日本カルチャーが好きって聞いていたけど、日本食全然知らないなんてあり得る? いや……海外からすれば日本食のイメージはそんなモノなのかも? ならば、色んな物を食べさせたいぞ!



 と、言う訳で新宿にやって来ました。

 移動はタクシーで。最近はスマホで呼んで、スマホで決済したり電子マネーで決済したりめっちゃ楽だね。移動は電車ばっかり使っていたし、基本ダンジョンでの移動しか無かったので初めて知ったよ。


 新宿といっても歌舞伎町にある大衆居酒屋は治安は……悪い。

 しかし、ゴールデン街や2丁目から萬田さんの知りあいが多数自警団として見回りをしているのでいざと言う時は安心だ。

 まぁ、私とマイクさんを襲う輩なんて、いるとはおもえないけど。


 予め電話で座席を確保したら、電話口でも受付の人から驚かれ、大変驚かれた。

 そして、店に来たら再度驚かれ、私達はって有名なんだなって再認識。

 2ヶ月前の私ならこんなにも落ち着いていなかった筈だよね。

 それでも、こうやって平然を装えるのなら、私の心は強くなったのかもしれない。主にルル様のせいだけど……。


「こちらのカウンター席にどうぞー」


 マイクさんはかなり困惑している。

 普段は個室や、人と人との距離が空いている空間で食事をしているせいか、隣に知らない人が大声で笑いながらハイボール片手に呑んでいるのが不思議で慣れないのだろう。

 そんなマイクさんを見て少し可愛く見えてしまう。

 普段は、冷徹で無口でクールな片翼堕天使系イケメンなのに、今ではスーツを着たサラリーマンとニッカポッカを着た人達に囲まれている。

 そのギャップを見て、ついついスマホで横顔を撮る。


「日本のバーは随分と賑やかなだな」

「あ〜、ここは特別だと思うよ」


 ここの店は店内は兎も角、外にある椅子と木箱は、どこからか拾って来たか分からない物で代用されていた。

 客達は自由に座り酒を注文し、くっちゃべっている。

 になみに、外で飲食する人は前払い制である。


「マイクさん、お好み焼きって食べた事あります?」

「? いやないな、どういったものなんだ?」

「小麦粉にダシを入れて、色んな具材を入れた物を焼くんですよ。関東や、関西、広島で呼び名や具材が違ったりします」

「なら、それを食べよう」


 私は店員を呼び、豚玉とビール2杯を頼む。

 スキルのせいで酔わないけど、空気は読むのだ。

 さらに、串物盛り合わせに、アジのなめろうと枝豆、肉豆腐など追加で色々と注文する。


 先に出て来た、お通しにマイクさんは困惑していたが、日本の文化なので軽く説明してあげる。

 納得していなかったけど、先払いのチップだと無理やり納得してもらった。

 私は、お通しはあった方が良い派なのだが、逆にアメリカのチップ文化が理解できない。


 注文した、アサルビールがやってくる。


「明日の健闘を祈って」

「「カンパーイ」」


 グラスが当たり、泡が弾ける。


 ビールをごくごくと喉に流すと、身体の疲労が一気に抜けていく感覚が襲う。


「「プハーーっ!!」」


 お互い良い飲みっぷりだ。

 マイクさんの口元に白い泡が残っているのが妙に愛らしい。……おっといけない。


 私の視界の端に『アルコールを無効化しました』のウィンドウが表示される。

 落ち着け、私。酒を呑んでもシラフだぞ!


「……酔えないのは不便だな」

「そうですね。こんなに酔いたい気分って初めで……」


 ……あ、ちょっと待って。

 何か私からマイクさんを誘っているみたいじゃない。はしたない……よね?


「……マジカルガール、どうして君はダンジョンアタックをするのだ?」


 マイクさんの唐突な質問に一瞬固まる。


 稀に思うけど、直ぐにどうでもよくなる疑問。


「えーと、ダンジョン100層を目指して、魔法少女専用クエスト消化して、ナヴァラトナを集める事ですね」

「それは必要な事なのか? 100層の先は人類も探求している事だが、魔法少女専用クエストとは何だ? ナヴァラトナとは一体なんだ? ルルはマジカルガールに何をさせようとしている?」


 え? 魔法少女専用クエストは……私の魔法少女の強化の為だし……あれ? もう私の魔法少女の成長は限界に達したよね? ナヴァラトナはルル様が必要で…………。


 あれ? 何で私はナヴァラトナを集めているんだっけ? ……確か、魔法少女になってから、ルル様と今後の目標を決めるとか何とかで、ナヴァラトナなる物を集める話になった。

 

 気がつけば、何も疑問も持たずにナヴァラトナを集めていたような気がする。

 ナヴァラトナってそもそも何だっけ?

 たしか、集めると願いが叶うのだっけ? ルル様が、ひとつ願いを叶えさてあげると言っていた記憶はある。

 ただ、ナヴァラトナはとても大事な物で、ルル様に捧げないといけない物だと認識している。その考えは今も変わらない。

 

「大丈夫か?」

「あ、大丈夫です、少し考え事を……」

「そうか」


 私達の会話が途切れた所で、近くにいたサラリーマンが私とマイクさんの間に割り込んでくる。


「そこのお2人さん〜、楽しんでる〜?」

「え、あはい。」

「ああ楽しんでいる」

「……あれ? たんたら何処かで見た事があるような……?」


 隣の席やカウンター内に居る店員達は、私達の事を知っていても絡んで来なかったが、物珍しさか、ベロンベロンに酔っ払ったサラリーマンは私達の所にやってくると、まじまじとマイクさんと私の顔を覗き込む。


「何処にでもあるような顔ですよ」

「いや〜、でもお嬢さん可愛いね、おじさんとどう?」

「いや結構です。彼氏がいるので……」


 咄嗟の事だったので、マイクさんの事を彼氏呼ばわりしてしまった。


「あ〜ん、彼氏ぃ? このあんちゃん……が……?」


 酔っ払ったサラリーマンが顔を見上げるとマイクさんと目が合う。

 マイクさんがサラリーマンの肩に手を置くと、サラリーマンの肩に手がめり込む。


「あたっ、あたたた……。ちょっ、お兄さん、冗談だよ冗談……、ってお兄さんイケメンだね、テレビでよく見る、えーっとエバンスって人に似ているね、特にその白い髪が……」


 サラリーマンは滝のように汗を流し、赤くなっていた顔は真っ青になった後に白くなり、ガタガタと震えだす。


「俺と呑むか?」

「あ……いえ、すんませんでした……勘弁して下さいーーー!!」


 すっかり酔が覚めたサリーマンは、逃げるように居酒屋から出て行く。


 そんな光景を目のあたりにした他の客達は、私達に声を掛けたら、あのサラリーマンの二の舞になると悟ったのか、私達から目を背けると何も無かったように酒を呑み始める。


「豚玉と焼鳥盛り合わせでーす」


 この手の騒ぎは慣れているのか、顔色を変えずに店員さんが注文した品を持って来てくれる。


「……取り敢えず食べましょうか」

「そうだな」


 その後、大衆居酒屋で様々なツマミを堪能し、美味しいお酒を沢山呑んだ私達。

 酔ってしまったマイクさんは、他の客達と会話をし、楽しい時間を堪能していた。


 そして、酔いつぶれてしまったマイクさんを抱え、タクシーでマイクさんが泊まっているホテルへと向かった。

 

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