表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/140

十条穂華帰省する

 翌朝、頭がボーッとする中、私は洗面所で顔を洗い眠気を覚ますと、身支度を済ませる。

 今日はバイトがある日だけど、咲さんに事情を話したら快く休みをくれた。

 何だかんだ休みたいと言えば休ませてくれるけど、私はちゃんと理由を言わないとモヤモヤするタイプなので、嘘はつかずに休む理由は伝えるようにしている。


 軽く朝食を取り、お化粧もして準備万端。

 さらにフェニックス戦で【熱耐性】から【火炎無効】に強化されたので、その効果で暑さも感じなくなり日焼けもしなくなった。

 【火炎無効】の効果は、自身にダメージを負うような熱を無効化するので、火傷と同じ日焼けを防止するとものだと思う。

 【熱耐性】も3割軽減なのでそれなりの効果があり、特にアライアンスパーティー参加者である女性陣にも人気で、この夏の猛暑を耐えられるのは素晴らしいスキルだった。


 そんな暑さ対策もバッチリ済ませてあるけど、アイスコーヒーは美味しい。

 咲さんの作ったアイスコーヒーは冷蔵庫にあるので飲み放題だ。

 アイスコーヒーを飲んで、迎えの時間が来るのを待っていると、咲さんの旦那さんである梶田寿史かじたひさしさんがやって来た。


「今日は実家に帰るのか? ならこれを持って行くといい」


 紙袋を受け取ると、持った瞬間分かった。これは珈琲豆だ。


「恋華さんに宜しく伝えておいてくれ」

「分かりました」


 私の母には大変お世話になったらしく、こうやってコーヒー豆を贈ったりしているそうだ。

 最近は忙しくて会う時間がないので、宅配便で送っているそうで、今回は私が代わりに持って行く事になった。


 約束の時間になると、咲さんに呼ばれる声が聞こえ、一階のお店の入口に行くと黒いハイアーが1台停まっていた。


「で、ルルデミアも来るの?」

「我はパートナーだからな」

「静かにしててよね」

「勿論だとも」


 信用できない。絶対に何かしら騒ぎを起こすに決まっている。

 ルル様は私からエネルギーを集める為に、何かしらのアクションをとる筈である。

 ナヴァラトナも残すこと、あと3つ。

 体感だと、そろそろナヴァラトナの宝石が出てもおかしくない頃なので、ルル様はそれを見越して私の側から離れないのかもしれない。


 ハイアーに2人で乗り込むと、首都高に乗り横浜方面へ向かう。

 平日の午前中なので首都高の交通量は多いけど、それでも週末よりかは遥かに空いている。

 車の流れに乗るように、私達が乗るハイアーは暫く走ると、横浜にある実家へと辿り着く。

 車はそのまま門を潜り、玄関前に車を駐車した。

 久々に帰って来た実家は特に変わった様子はなく、運転手が扉を開けてくれたので、車から降りようと、ルルデミアが手を差し出してくれた。

 ちょっと恥ずかしいが、ルルデミアの紳士的な対応を断る訳にもいかず、その手を取ると、ゆっくりと車から降りた。


 ルルデミアにエスコートされる形で実家の玄関前に立ち、私が玄関の扉を開けようとすると、扉の奥から人の気配がする。

 そして、私が玄関の扉を開ける前に扉を開け、出迎えてくれる人物がいた。


「おかえりなさい穂華」

「ただいまお母さん」


 挨拶したけど、会話が続かない。

 母は私と会うのは約3ヶ月ぶりだけど、私はルル様主催のレイド・竜王討伐戦作戦会議に魔法少女ほのりんとして参加していたので、会うのは1ヶ月ぶりくらいだ。


「そちらの方は……ルルデミアさん? でしたよね。穂華のパートナーと聞いていますよ」

「これはこれは、奥方様、私の事をご存知でしたか。我の名はルルデミア=ロー=ゲーデルバイセル。穂華のパートナーです、以後お見知りおきを」


 誰この人? ルル様がいつもり紳士してる!! まぁルル様はルルデミアの姿になっている時は、人間社会に溶け込む為に色々勉強したらしい。

 今ではルルデミアひとりで駅前に行って、ICカードにチャージする事も可能だ。

 ICカードに多額のお金が入っているので、そのお金でコンビニで二本満足やコンビニスィーツを買い漁っているも知っている。

 まぁそのお金はルル様の物なので私がとやかく言うつもりはないけど、何故コソコソするのかが分からない。私が横取りするとでも思っているのだろうか?


 閑話休題。


 母が立ち話もなんだからと、家の中に案内してくれた。

 玄関も廊下も掃除は行き届いており、3ヶ月前と変わらないように見える。

 そして、居間に案内された応接室に案内された私は、椅子に座ると軽く溜息を吐く。

 久々の我が家だけど、居間じゃなくて応接室っていうのがね。何だか私達が客人って感じでならない。

 応接室の扉からノックの音が聞こえ、入って来たの家政婦さんだ。

 家政婦さんは紅茶が入ったカップを3人分用意し、私達の前に置いてくれた。

 この家政婦さんも、ここで働いて20年以上なので、私の小さい頃もよく遊んでくれた記憶がある。

 私の顔を見た家政婦さんは、ニッコリと笑うと、挨拶もそこそこに応接室から出ていった。


「穂華」

「はい」

「元気そうで何よりだわ」

「お母さんも元気そうですね」

「そうね、最近忙しくて家にも中々帰れないわ」


 母が忙しいのは主に私達の活動のせいだろう。

 ATLANTISは萬田さんと園田さん、そして末留さんをレイドダンジョン攻略の為に、アライアンスパーティーに入れた。

 この事は各メディアは大きく取り上げ、連日ニュースで取り上げられている程だ。

 毎日飽きずにニュースになるのは、色々理由がある。

 まず、渋谷ダンジョン攻略の新記録が連日達成している件だ。

 Chrome TempestやJDSTは記者会見を滅多にしないので情報があまり出ない、しかしATLANTISの3人は、ほぼ毎日メディアに出て報告しているので、記者達は挙ってATLANTISの会見に行くのだが……、まぁ萬田さんのキャラが濃すぎて、放送ギリギリのラインを毎回攻めているらしい。

 私も見た事があるけど、普通に下ネタが飛び交っているので面白いけど、地上波での生放送は流石に流す事はできないみたいだ。

 ちなみにネットでは無加工で生放送を中継していたりする。


「ねぇ、穂華は魔法少女ほのりんの正体を知っているのでしょ? 彼女をATLANTISに引き込めないかしら?」


 この話をされるだろうと警戒はしていたけど、そうなるよね。

 母は根っからのビジネスマンだ。

 父と結婚してからハンターマスタアドバイザーの資格を取り、妊娠出産を得て、ハンター系クラン企業を設立、僅か1年で大手のクラン系企業になり、父の会社と共同事業を行うことであらゆる製品を作り、日本の発展に貢献してきた。

 この20年で落ち目だった日本の経済力は立て直され、世界2位まで盛り返した。

 あと10年、いや数年で1位になれるかもしれない。

 その功績は十条グループの力と言っても過言では無かった。

 魔法少女ほのりんをATLANTISに入れれば、未知のアイテムや話題性など、さらに金が動くのは確かだ。

 目の前の私がほのりんですよ、何てことは口が滑っても言えないし、バレたらバレたで面倒なので、今しばらく私の正体を隠す必要がありそうだね。


「彼女の正体をバラすつもりは無いし、久し振りに帰った私に、その話題は今必要なくない?」

「そうねごめんね、私が悪かったわ」

「……別にいいけど、お父さんは仕事?」

「ええ、お昼に1度帰ってくるみたいだから、昼食を一緒に食べましょう」


 父は帰ってくるのか……。


 父との仲は良くはない。

 父は何をするにしても突然だ。

 旅行に出掛ける時も、急に行き先を変更したり、中止にしたり……。

 他にも私の進学先も勝手に決められ女子校に入れられてしまったり、終いには謎の男を紹介し結婚させようとするなど、振り回されてばかりだ。


 そんな父は私にとって、よく分からない存在だ。

 家出して以来、手紙も無視しているので父が私の事をどう思っているのか分からないし、また振り回されるのもゴメンだ。

 今回、父に会う理由のひとつとして、人をレムナント化させる魔道具を、神峰奏司と共同で作った物なのかを問いたださなくてはならなかった。


 父が来るまで時間があったので、私と母は近状報告を済ませる。

 私は咲さんの喫茶店でバイトをしながらコーヒーの勉強をする生活は、とても充実している事を伝えた。

 母は私がポーターをしている事を心配しているが、ルルデミアが側にいるので安心してほしいと説得した。

 ルルデミアも私の話に合わせてくれるので助かった。

 


 しばらく母の苦労話を聞いていると、家の外で車が止まる音が聞こえた。

 そして、我が家の玄関から直接この部屋に入ってくる人物を母が出迎える。


「帰って来たか穂華」


 それは私の苦手な父、十条倫成じゅうじょうみちなりであった。



両親そろって魔法少女を自社に取り込もうとしましたね。穂華の両親は一般家庭とは少し違うようですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ