5.明日は土曜日(前)
-都留家-
「今日急に関西の方に行かなければいけないことになった。」
「え?」
「だから、家に帰ってくるのは明日の昼頃になる。」
「その間私は留守番?」
「そうだ、いきなりで悪いが…」
「いいんだけど、昨日言ったけど明日の昼頃にクラスの人たちと遊びに行くって」
「あぁ、出発する時間に間に合わないかもしれない。」
「分かった、戸締りをちゃんとしておく」
「くれぐれも気を付けるんだよ…」
「気を付ける」
「何かあったら雨田くんに頼むんだよ」
「…」
「どうした?」
「なんでもない」
そういって目をそらしてしまった。
昨日から雨田のことが気になる…
「まぁ、今日の晩はどこかで食べてもいいから、」
「分かった…(どうせなら雨田を誘って一緒に食べよう、その方が楽しいし…)」
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-丸山&大野-
学校に行く途中、華麗がまた聞いてきた。
「大野、リューと飛菜子のことどう思う?」
「分からない、推測を言うなら今は華麗より都留さんの方が仲がいい気がする。」
「私嫌われるようなことした?」
「それは知らん、けどもし嫌われたなら華麗を避けると思うけど?(実際華麗が言ったことは雨田にとっては失恋したと思わせるには十分だし、その時に都留さんと会って仲良くなったのなら距離が近くなるのは簡単に予想がつくのにな…)」
「今日か明日にでもリューに直接聞いてみるか…」
「(それは…雨田が何かしらの理由をつけて逃げる気がするけど?)」
「大野?」
「…まぁ、聞いてみるのもいいんじゃないか?」
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-雨田隆一-
教室に入ると飛菜子がこっちに気付いて近づいてきた。
「雨田、今日の晩開いてる?」
「予定はないけど?」
「よかったら、私の家でご飯食べない?」
「いいの?」
「今日両親が仕事でいなくて、寂しくなりそうだから…」
「(寂しがりの性格が逆にいじめられたときに傷つきやすいのか…)」
「まぁ、別に理由がなくても呼んでくれていいからな」
「家に友達を呼ぶのが久しぶりだから、親が過剰反応すると思う(父親が)」
「まぁ、娘を心配する親ってそんなもんなんじゃない?」
「…そうなのかな…」
そうだと思う。実際に都留父に話しかけられたときに警戒されていた気がしたし…
「雨田、昨日の作文終わった?」
「適当に文字を埋めただけでいいなら終わってる…」
実際には、映画の内容には触れずに原作の小説の感想が大半を占めた…
今日からはしっかりと授業を受けよう、昨日のようなことにならないように…
「今日は寝ないようにね。」
「頑張るか…」
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午前の授業は終わり、学食で大野と華麗、飛菜子で昼食をとっている。
「リュー、明日は何時に店だっけ?」
「1時前開始で一人500円で6時までフリー」
「雨田って記憶力いいの?」
「雨田は本を読むと周りが見えない時があるんだけど、実力テスト前日に本を読んでいたら気づいたら当日だったって言いてたことがあった。」
「よくもそんな昔のことを覚えてるな。」
「え?それってどうしたの?」
「まぁ、ほとんど勉強してなかったみたい。そしたら徹夜で教科書を読んで来て順位が二桁だった。」
「非現実的だね」
「リューは、いつも勉強しないだけでやればもっと上にいるんじゃないかな。」
「勉強するより本読みたい…飛菜子だってそうだろ?」
「私も本読みたい…」
「飛菜子もリューと同じで本が好きだもんね」
「じゃあ、本の貸し借りもしてるの?」
「俺が一方的に借りてる」
「今はまだ買い貯めた本を消費してませんから…」
「今はってことは借りたい本でもあった(雨田の家に入った?)」
「はい、興味深い本がいろいろと…」
「(いろいろとってことは、家に入ってる可能性が高いな)いつから本が好きなの?」
「中学に入った頃です。」
「飛菜子は、どのジャンルが好きなの?」
「(確か、『題名が面白そうなものを選んでる。』って言ってたけど本人が好きなジャンルは聞いたことがなかったな)」
「題名が面白そうな本を選んでる。ジャンルは特に考えてない…あえて言うと、恋愛系かな…」
「じゃあ、大野と気が合うんじゃない?大野、最近は恋愛系の本読んでるから。」
「あれは、たまたまだ」
「どうした?」
「大野君大丈夫?」
「大野の家に行ったときに本棚に10冊くらいの恋愛小説があってーそれ以外に小説はなくてー漫画がいっぱいあった。それもラブコメが大半だった。」
「(おい!!華麗!!大野のプライバシーを考えてやれよ、大野のことが好きなんだろ!!)」
「(華麗がいきなり恋愛相談だって言ってくるから勉強のために買ったのに…しかもやけに面白くてはまってしまったなんて言えるか!!)別にいいだろ、人の趣味を勝手にばらすな。」
「はーい、分かりました。」
「(華麗ちゃんと大野君は、結構仲がいいみたい…この三人は幼馴染なんだよね?)」
「華麗、反省の色が見えないぞ」
「ごめんなさい」
この二人いつもこんな感じだな。大野は慣れてるし、いい雰囲気だな。
こんなことを考えていたら、感情がこみ上げてくる。
抑えないと…いけないな。
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6限の授業が終わり、ロングホームルームというなんの時間か分からない時間が始まった。ホームルームの長いようなもので来週の連絡事項を説明され聞くだけだと思っていたら
「えーっと、まだ学級委員を決めていなかったな。誰かやりたい奴はいないか?」
「(本を読む時間が減る。)」
「誰かいないの~」
「佐藤、やってみろよ」
「いやだよ、お前がやれ」
クラスの中で委員の擦り付け合いが始まった…これは誰か手を挙げるまで終わらないなぁ。
「はい、私学級委員やりたいです。」
「えーっと、井上か、じゃあ前に出て学級委員になってやりたいことを発表してくれ、そのあとでクラスの奴に反対意見があったら却下、なかったらそのまま学級委員になってもらう。」
「はい、私は学級委員になってクラスをまとめてみたいと思いました。うまくできるかわかりませんが、頑張って見せます。よろしくお願いします。」
谷川がその後意見を集めることなく満場一致で井上という女子に決定された。
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それからしばらく委員を決め、全て決め終わったのでホームルームは終わった。
飛菜子は人気がなかった図書委員に自分から立候補し、あと一枠に俺を指名してきた。
『雨田は本が好きなんでしょ?ほかの委員は本が読めないって断っていたけどこれは断れないんじゃない?』
「(確かに断れない…)」
そんなことがあって俺は図書委員になった。俺は本を買うこともあるけど、多くは図書館に借りた本を読んでいる。ある程度読んだことがない本があればいいけど…
「雨田、帰ろう」
「分かった」
「リュー、バイバーイ」
「また、明日な、」
「ああ、また明日。」
「さようなら」
そういって、華麗と大野と別れて帰った。