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勘違いの果て  作者: SSiNN
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39.噓から出た実1

 お久しぶりです

~雨田隆一~


 ゴールデンウィークの宿題も終わり、華麗達とも遊んだ翌日だった。

 暇つぶしで家にある適当な本を開いては読み開いては読みを繰り返していた。

 何冊か手元に積み上げた頃、昔の頃の写真が挟まっていた本を見つけた。

 中学の頃に仲が良かった女友達と二人で取り渡された写真だった。

 そしてそいつとの思い出は、あまり思い出したくない苦い記憶だった。


 ゴールデンウィークが終わり、俺は飛菜子と一緒に学校へ出発した。

「学校、面倒だなぁ。」

「…そう?」

 たった数日でも休みに慣れ切った体に鞭打って無理やり学校に登校するのは気が滅入る。

「俺は面倒くさい。」

「…五月病だね。」

「そうだな。」

 五月病とは春の連休明けに仕事に行きたくなくなるという病?症状である。

「飛菜子はだるくないか?」

「んー。私は全然だよ。むしろ学校の方が楽しいと思うよ。雨田にも会えるわけだし。」

「…久々にそんなことを言う奴を見たな。」

 しかも中学時代にいた友人と一語一句同じ言葉だった。

「どんな人だった?」

「…根はまじめだったけど、よく俺と授業をサボってた奴。」

「それってまじめなの?」

「真面目ではないよな。」

「というか、雨田って中学の時授業サボってたの?」

「あぁ、サボってたよ。」

 そう、悪びれもせずに言った。

 別にだからと言って後悔はしていない。後悔があるとすればそいつとの別れの時だけだ。

「…授業をさぼるってどれくらいサボるの?」

「一日にある授業全部。」

「…それって学校行く意味ある?」

「ない。」

「そうだよね。」

「ただ、そいつは中二の夏にいなくなったんだよ。それからはサボってない。」

「なんでいなくなったの?」

「親の事情の引っ越しだな。ありきたりな理由だけど。」

「…。」

 多分、俺はとても悲しい顔をしているのだと思う。

 そんな俺を見てか飛菜子が、

「雨田。」

「ん?」

「何かあったの?」

「ちょっとさっきの奴のこと思い出してただけだよ。」

「もしも、雨田がいいなら聞かせて。その話。」

「別にいいけど、多分つまらない話だと思うぞ。」

「うん。」


=========


 今更中学の頃の記憶を引っ張り出してきてまず思うのは俺の中学時代は嫌な記憶が多い気がすることだった。

 その一つは、俺は一度、春という女に告白されたことがあるという事。

 放課後に、俺たちがデマで流した告白が成功するという場所で。

 そして、その時、俺は嘘をついて振った。『華麗が好きだと。』

 正直、今になって驚いてしまう。

 噓から出た実とはこのことだったのかと思うほどだ。


 中学1,2年の頃の俺は決して真面目という奴ではなかった。むしろ不真面目と言った方が正しかった。

 気が向けば授業に出て適当に内容を聞き流していることなく机に突っ伏して寝ていた。

 先生は時々怒ることもあるけど、時が経つにつれて何も言わなくなった。

 当時、いくら授業態度が悪かろうと定期試験で満点を取ってしまったため先生も何も言えなくなったのかもしれない。

 そして、何も言わなくなったことをいいことに俺は中学では自由に過ごすようになった。

 そして一日を授業には一切参加せずに一人になれる場所で過ごしていた。

 当時の俺は一人きりの場所でサボるのが好きだった。

 一人きりになれば俺を嫌っている奴らとのかかわりがなくなり気が楽に本を読むことができる。

 そんな俺は一か所、誰にも見つからない、普段誰も来ない場所を見つけた。

 当時の中学校の屋上は鍵がかかっているらしかったが壊れて誰も立ち入らなかった。

 昔、というほど昔ではないかもしれないけれど昔は屋上は開放されていたのか一つだけ部室があった。

 だから、俺はいくつかの私物を持ち込んで俺のテリトリーにしていた。

 お湯を沸かしてコーヒーを入れて飲んだり、あまりしなかったが適当にため込んだ菓子類を食べていたりしていた。

 そんな、自由すぎる俺のテリトリーに顔を出した奴が一ヶ月たって現れた。


=========


 急に扉の向こうから音がして隠れてみると扉が開き中からは先生ではなく知らない女子生徒が顔を出した。

 髪が長く、骨盤まであるのではないだろうかと思ったのが第一印象だった。

 その彼女は誰かを探しに来たわけではないのか周りを見渡し人を探す素振りもなく、ただ疲れたような目をしていた。

「ふぅ。」

 彼女はため息をつき、そして、近くにあったベンチに腰掛けた。

 どうやら、本当に俺を探しに来たわけではないらしかった。

「…おい。」

「え?」

 俺は野生の動物みたいに縄張りに入ったからと言って怒るような野蛮人じゃない。

 だから、俺は暴力ではなく言葉で意思疎通を図ってみた。

「ここに何しに来た?」

「…びっくりした。こんなところにまで人がいるなんて…」

 物陰から声を掛けたのが悪かったのかもしれない。

 女子は驚いてベンチから落ちてしまった。

「…雨田君?」

「ん?」

「へぇ。いつもこんなところでサボってるんだ。いい場所じゃん。」

「…ばらすなよ?」

「ばらすも何も私もサボりに来てるんだからばらせないよ。」

「確かに。」

 女子が来ている制服を見てみると俺と同じ学年の色の刺繡があった。

「(ということは同い年か。)」

「ねぇ、暇だしなんか話さない?」

「…いいけど、俺お前の名前知らんぞ?」

「…そっか、まともにクラスメイトと話してないから分からないか。」

「そんな憐みの目をするなら会話はしないぞ。」

「はいはい。」

「…雨田隆一だ。」

 とりあえず相手は知っていそうだったけれど、俺は今も昔も変わらないこの名前を名乗った。

「私は、春蔵。呼びにくかったら春って呼んでいいよ。」

「解った。」

 そう言うと春蔵は『呼んでみて』と言ってきたのでとりあえず、春と返した。

 今の行動にどんな意味があったのか分からないけれど、目の前にいる春はとりあえず納得したという表情を浮かべていた。

「…。」

「じゃあ、次は雨田がサボってる理由でも聞きたいな。」

「…そんなの聞いてどうするんだ?」

「興味あります。」

「授業を受けても意味がないと思ったから。」

「…おっと、予想外の言葉が返ってきましたな。」

「そうか?」

「普通は私みたいに『めんどくさいから』って言うと思うよ?」

「あんな学者を育てるための授業を受けても意味ないのは解るだろ?」

「…ごめん言ってる意味が分かんない。」

「…数学の話で例えてみようか。」

「うん。」

「先生たちは公式に当てはめれば解ける問題をわざわざ教科書の証明を黒板に写して授業をするだろ?」

「…うん。」

「先生たちの言い分はこの証明を理解できていれば公式を忘れたときに思い出せるということだ。」

「まぁ、そうだね。」

「でも、実際は公式を覚えた方が早い。」

「うん。」

「わざわざ、証明から授業して約45分かけていくつかの公式を教えるのがこの中学の授業方式だ。」

「うん。」

「でも、学者以外でそんな証明使わないだろ?」

「…確かに。」

「だから、俺はこの学校の授業を受ける意味はないと思ってる。」

「はっきり言うね。」

「一度数学の先生に言ったらキレられたからな。」

「…。」

 後から華麗と大野にも怒られたな。『あなたのやっていることは無駄です』と言っているのと同じだったわけだし。

「じゃあ、俺も聞いていいか?春がサボった理由。」

「私?」

「あぁ。」

「私は…、めんどくさくなったから。」

 そう言って春は座っていたベンチにもたれかかってくつろぎ始めた。

「…やっぱりか。」

「正直、私も授業を受けずに自習した方が早いと思う時もあるよ。」

「そうだな。」

「授業の内容がみんなに合わせて進んでいく、みんなは予習をしないで私だけが予習をする。そのせいでその場で理解できる私とできない周りの人では壁が出来てしまう。」

「その周りの人で春と同じようなレベルの奴はいるか?」

「いない。雨田君を含めないのであれば。」

「俺を含めれば?」

「私以上に点数を取ってる人が言う事?」

「まぁ、聞いてみただけだ。」

 確か、前回の中間テストは全部満点で学年一位だった。

 だから、俺より上の順位の人間はいない。

 ただ、慢心はしてない。上には上がいるだろうし。なんかニュースで学力テストで化け物じみた得点をたたき出した奴が一つ下にいるらしい、しかも地元がここだし。

「話を続けるけど、私が思ってることを言っても先生には百点満点を取ってから言ってくれって言われた。」

「あぁ、俺も言われた。」

「…。」

 確か、授業を理解していて受けたくないならテストですべて満点を取ってから言えと言ってきた先生がいた。

 しかし、逆に言えば、満点さえ取っていれば先生はサボってもいいと言っているのと同義だ。だからかもしれないけど、俺はあの後からその先生を見ていない気がする。

「…だから、雨田君がここにいても怒られないのか。」

「まぁ、そんなところだ。」

「でも、雨田君ってずっとサボってる気がするんだけど?どうやって勉強してるの?」

「本を読めば内容とか文章はすべて覚えるだけだ。」

「…つまり、記憶力がいいってこと?」

「そう言う事だ。」

「…勝てる気がしないよ。」

「ごめんな。」

「いいよ。というかむしろ手加減されて負けたら腹たてて怒ってたよ。」

 次からは少しだけ手を抜いてやろうかと思った矢先それを否定する一言が出されたのでやめた。

「ねぇ、雨田君。」

「ん?」

「雨田君は、私がどうすればいいと思う?」

 多分、俺に聞くべきではない質問だった。

 これは春が考えて実行して最後にそれがよかったと決めるのは春だからだ。俺がよくても春がいいとも限らない。少なくとも俺の中の言いは多分世間的にはずれているし、参考にならないだろう。

「さぼりたいときにはサボればいい。相手になってやる。」

 だから、具体的な答えを出さないように俺は答えた。

「…じゃあもしも、ここで勉強したいって言ったら付き合ってくれる?」

「!?、…あぁ、なんでも言え、それが不可能でないなら付き合ってやる。」

「約束だよ?」

「あぁ。」

 俺はそう言って軽々しくも約束をしてしまった。


=========


 あれから、ほぼ毎日のようにまじめだったはずの春は俺のサボり場の屋上に顔を見せるようになった。

 ただ、俺とは違ってちゃんと勉強道具を持ってきて謎の部室の中で勉強をしていた。

 俺はというと、一人でコーヒーをすすって本を読み、時々春と話すか勉強を教えていた。そして、優等生をサボり魔にしてしまったことの罪悪感とともに過ごしていた。


「雨田君。」

「ん?」

「約束通り勉強教えて。」

「…。」

 そう言えば、そんな約束をしてしまったのだった。

「言ってないけど、俺は教えるのは苦手なんだ。」

「うん。」

「だから、分からないことは別の奴に頼んだ方がいい。」

「大丈夫だよ。雨田君は先生よりも頭いいし。」

「先生が可愛そうだ。」

「それを雨田くんが言う?」

「…確かに。」

「ね?」

 そう言って春は持ち込んだ勉強道具を広げて俺を見た。

 要するに早く教えろということだろうか。

「…約束してしまった以上は付き合うことにするか。…まず、何が分からない?」

 今まで春を見てきて大体の基礎は出来上がっていた。

 そんな春に俺が何を教えればいいんだろうか。

「…確かにそれは解らない。」

「じゃあ、今から適当に問題を作るから待ってろ。」

 そう言って俺はコピー用紙に適当にテスト問題を作ってみることにした。

「教科書見ないの?」

「覚えてるからいらない。」

 正直、一度読んだ本の内容を暗記できる特技なんて勉強を頑張っている人間からすれば喉から手が出るほど欲しい特技だろう。

 それを説明したことがある人の中で俺を嫌うことがなかった奴は限りなく少ない。

 ただ、春も欲しいと思っているのかもしれないが別に俺を嫌ってはいなかった。そんな春だから、俺は協力した。

 この作品を面白いと思った方は下の方にある星を好きな数だけ押してください。

 なお、誤字脱字などがありましたら教えてください。

 また、コメントなどは好きに書いてください。

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